第28節 マンチェスター・Cvsマンチェスター・U ユナイテッドの遠い道のり
最初に
今シーズン二度目のマンチェスター・ダービー。勝ち点66ptの首位シティと勝ち点47ptの5位のユナイテッドの対戦がシティのホーム「エティハド・スタジアム」で行われました。シティからすればリヴァプールの足音が背後から聞こえてくる状況で優勝の為には落としたくない。ユナイテッドはなんとかCL圏内の4位に入るために負けていい試合は1つも無い。何よりマンチェスター・ダービーでどちらも負けて良いはずがありません。
前回のダービーではシティの「2 - 0」のスコアでの勝利という結果になりました。実はユナイテッド上層部が前スールシャール監督の解任を決断した試合でもあります。
前回のスターティングイレブン及びシステムは(特に説明がない限り左から順に書いていきます)、
ユナイテッドが
GK:デ・ヘア
DF:リンデロフ バイリー マグワイア
MF:ショー フレッジ マクトミネー フェルナンデス ワンビサカ
FW:ロナウド グリーンウッド
の[3-5-2]
シティが
GK:エデルソン
DF:カンセロ ディアス ストーンズ ウォーカー
MF:ギュンドアン ロドリ デ・ブライネ
FW:フォーデン シウバ ジェズス
[4-3-3]
でした。
ところで、ペップは試合前に毎回長い時間を割いてミーティングを行います。
その前回のダービーの試合前ミーティングでペップは、「ユナイテッドは何をしてくるか分からん。以上解散。」で終わりにしてしまったそうです。
さて今回はクリスティアーノ・ロナウドは臀部の故障で招集外、ヴァランも引き続き故障でこれも同様です。
GK:デ・ヘア
DF:テレス マグワイア リンデロフ ワンビサカ
MF:フレッジ マクトミネー サンチョ ポグバ エランガ
FW:フェルナンデス
の[4-2-3-1]でブルーノ・フェルナンデスの0トップ。
対してシティは
GK:エデルソン
DF:カンセロ ラポルト ストーンズ ウォーカー
MF:シウバ ロドリ デ・ブライネ
FW:グリーリッシュ フォーデン マフレズ
の[4-3-3]です。
シティはいつもどおりのシステムですがディアスが故障でいないので守備が少し不安があります。また、ストーンズはブランクがあり実戦の感覚があるのか。
特にシティにとって最も避けたいカウンターの対処に不安があります(アンカーがロドリというのもありますが)。
ユナイテッドは相手のやり方は知っているので対策を練って臨んでくる。ならば、選手たちが最後の1秒までそれを貫き通せるか。
あとはロナウドがいない影響が良くも悪くもどう出るか。
つまり、サンチョ&フェルナンデス&エランガがシティのDFラインを攻撃できるか?むしろロナウドがいないことで逆にシティのDFラインを上手く混乱させることができるのか?という部分がポイントになります。
前半
シティ先制点 彼らの強み
試合開始から5分で試合が動きます。
シティは後ろからゆっくりとビルドアップしていき、最後のゴールに繋げる3つのパスは人もボールも素早く動かし、デ・ブライネが得点。
シティお得意の全体のプレーの緩急でいい位置にフリーの選手を作るプレーでした。
ただ緩急をつけようというのならどこのクラブでもできるでしょう。
シティの場合は「ゆっくりと」後ろでビルドアップしているときにユナイテッドのそれぞれの選手のプレスの動きを見極めていました。
ユナイテッドが距離を詰めてプレスを仕掛ければどこかスペースが空くはずだ、それを観察しようという訳です。
それが目的だからまずは「ゆっくりと」運ぶ。
意図した通りにスペースが空いたら「相手が気付いても遅い」というスピードで仕掛ける。
シティのそれぞれの選手が「技術・視野・観察眼」を兼ね備えているからこその得点でした。
これぞマンチェスター・ダービー
シティの先制点は「じっくり」と観察して得た先制点ですが、ユナイテッドの同点のゴールは「刹那」のクオリティで得た得点でした。
ブルーノ・フェルナンデスがワンタッチで巧みにロドリをかわしてポグバへパスを出すと、ポグバは2CBの間を縫うようにサンチョへ。
ウォーカーがサンチョとマッチアップする状況になりますが、B・フェルナンデスがその横をスルスル走るとウォーカーはそっちに気を取られてしまい、マークが外れたサンチョがカットインしてファーにシュート。
GKエデルソンはほぼノーチャンスでした。
B・フェルナンデスにアンカーのロドリが簡単にかわされてしまったのと、あとはB・フェルナンデスのフリーランニングでマークを外させるそのサッカーIQの高さが光りました。上手すぎですよ。
焦らなかったシティ
同点にされた後もシティのやり方は全く変わりませんでした。プレスを仕掛けてくる相手を揺さぶるようにパス交換をし、スペースが空いたらそこを一気に攻める。
前半27分。自陣の右サイドを押し込まれていたユナイテッドはエランガが一旦はクリアしますが、そのクリアボールがシティの選手に当たって跳ね返ってしまい逆にピンチに。
ボールを拾ったフォーデンがマグワイアをアッサリとかわすてそのままシュート、デ・ヘアがなんとか跳ね返しますが最後はデ・ブライネに押し込まれてゴール。またもホームの1点リード。
ちなみに、ユナイテッドの同点弾の起点となったB・フェルナンデスのワンタッチパスもそうですが、このフォーデンがマグワイアを抜くシーンもかなり技ありなので是非ハイライトで見て欲しいです。
前半の総括
シティは同点にされるまではユナイテッドのプレスに戸惑っていたのかな?という感じですが前半30分以降は特に難なくやっていました。
ガンガンプレスをかけられても、むしろ相手を引き付けてからパスを出したりと、ユナイテッドのハードワークを余裕をもって無効化していました。
ユナイテッドは前半走らされたので、何かしらやり方を変えないとこのままでは体力が切れていってズルズル行くな、という印象でした。
グアルディオラはシティの選手の技術も考えて、「ハードプレスをかけてくるなら走らせて相手を消耗させれば良いんじゃね?」という考えだったと試合後の会見で言っています。左WGにスターリングではなくボールキープ出来るグリーリッシュを起用したのも、マフレズに大外に張らせていたのもその考えがあるからでしょう。
後半
トドメをさすマフレズの3点目
試合を決定づけるシティの3点目は後半23分でした。コーナーキックをデ・ブライネがボックス外にいるマフレズを狙って蹴ると、マフレズがダイレクトでゴールに突き刺しました。
そもそもこの3点目が決まる前から「いつものシティのサッカー」をユナイテッドはやらされていました。CKを獲得したのだってそうです。ずっとシティがボールを保持して押し込む展開が続いていました。
そしてユナイテッドはこの3失点目以降、いよいよガス欠という感じになってきます。
シティ4点目・試合全体の総括
後半90分のマフレズの得点(シティの4点目)は特に説明は必要無いかと思います。3失点目以降のユナイテッドをロイ・キーンは
「選手達は途中で試合を放棄した。ダービーでそれは絶対許されない。負けるにしたって負け方がある。ボールを追わないしタックルもしないなんてのは論外だ。今回ピッチに立った選手のうち数名はもうユナイテッドの選手としてプレーする資格は無い。(意訳)」
と切り捨てました。
試合全体を通して、ユナイテッドは奪った後簡単にボールを失うのが気になりました。
例えばクロップ監督のリヴァプールはパス本数はシティに次ぐ2番目ですし、記憶が確かならボール支配率も同様に2番目です。
実はちゃんとボール保持できているんです。
理由はやっぱり奪い方の型というものがまだ出来ていないんだと思います。闇雲にプレスかけて奪ったとしても、そこでパスが出せなかったらただの体力の無駄遣いです。
ラングニック"暫定"監督がここからどれだけユナイテッドを変えることが出来るのか?は正直疑問です。監督として来シーズン以降もやるっていうなら選手達も付いていこうと思うでしょうけど、暫定で次の監督が誰かも決まっていないという状況ではラングニック"イズム"がどこまでチームに行き渡るか…。分からないですね。
終わりに
グアルディオラ監督は試合後の会見で、「後半開始1分で試合を完全に掌握できたと感じた。」「前半で相手をたくさん走らせて、後半では枠内にシュートを打たせなかった。」とほぼ思惑通りに試合を運べた旨のことを言ってました。
グアルディオラvsラングニックという両監督の勝負も拍子抜けするほど簡単に勝負が決まってしまいました。
いくらゲーゲンプレスの生みの親のラングニックとはいえ、クリスティアーノ・ロナウド然り、ハリー・マグワイア然り、それに合った選手がいない中でうまくハマっていないのは分かります。だからこそ、ラングニック"暫定"監督というのはどういうもんかな、と思います。来シーズンの補強にせよ何にせよ実現したいサッカーに合った選手の補強プランもラングニックに一任するべきじゃないかと思います。次期監督は勿論ラングニックと考え方が近い監督を選ぶとは思いますが、選手に対する接し方など人が変われば選手も苦労するのでは?
もう決まったことではあるので、ユナイテッドがこれからどうなるか見守りたいと思います。