北九州のソウルフード「資さんうどん」のマーケティングトレース
仕事の都合で2020年2月より福岡から東京で働くことになりました。
そこで今のうちに福岡でしか食べられないものを食べておこうと思って一番最初に思い浮かべたお店がコチラ、、、
資さんうどん!!
「資」は「すけ」って読みます。
福岡県北九州市を中心に展開するうどんのチェーン店です。
福岡に馴染みがない方は相当なマニアックではない限り、ご存じないとは思いますが、実はこの資さんうどんは超優良企業として知られています。
最近では福岡のうどん文化が全国に広まっている流れもあり、資さんうどんが全国にその名を轟かせるのも時間の問題かもしれません。
特に北九州市ではこの資さんうどんの発祥の地ということもあり熱狂的なファンが多く、いわば北九州のソウルフードと言われています。
進学や就職で北九州を離れた人たちが、帰省する際に食べたいものリストには必ずと言っていいほど入っているそうです。
ではさっそく、この資さんうどんについて、その知られざる人気の秘密をマーケティングトレースしていきます。
まずは会社概要から。
会社概要
来年で40周年を迎えます。
「味良し、価格良し、元気良し」をモットーとしているそうです。
単に商品を売っているのではなく、まさに、お客さんの人生の1ページに刻まれる馴染みの1杯を提供しているように感じます。
続いて同じうどんチェーン店を比較していきます。
福岡では資さんうどん以外にもウエストや牧のうどんといった強力なチェーン店がいるため、全国的に知られている丸亀製麺やはなまるうどんをほとんど見かけないんです。
上記でもわかる通り出店数だけで見ると、資さんうどんやウエストの福岡県内での出店数が丸亀製麺やはなまるうどんを上回ります。
独自のうどん文化を築き上げている福岡では、県外の外様うどん文化が浸透しずらいのかもしれません。
続いて、企業を分析していきます。
企業分析
まずは3C分析から。
ポイントは、「とりあえず資さんに行けば何かある」という点。
例えば、家族で外食する際に、子供の給食がうどんだったり、お父さんのランチがうどんでも資さんに行けば、何か別のメニューがある。
さらに、そのうどん以外のメニューが格別に美味しい。
続いてはPEST分析。
特に気になる点は、今年のニュースで低迷していた丸亀製麺を復活させた伝説のマーケター森岡毅さんの記事。
この成功事例により、うどん業界の成功パターンが構築されつつあります。
さらに自社内でも2018年に投資ファンドのユニゾン・キャピタルが資さんうどんを買収して、第二創業期として全国展開などが期待されています。
経営陣も一部を除いて新たに体制を整えたそうです。
現社長の佐藤崇史氏はソニー、ボストン・コンサルティング・グループ、ファーストリテイリングなどを経て2018年3月に資さんうどんの社長に就任しました。
さらに経営戦略にも力を入れて、大手企業で実績を上げたメンバーが指揮を執って企業改革に打ち出している様子が伺えます。
※ユニゾン・キャピタルとは?
スシロー、ミスターミニット、東ハトなど日本国内だけで33社を買収した実績。2019年はSHIDAXなど合計3社買収に成功した。
ただし、一気に全国展開かと思われていましたが、まずは九州エリアからジワリジワリと攻めていくみたいですね。
上記の記事でもでも記載されているように、昔ながらのこだわりは頑なに貫くとのことなので、投資ファンドに買収されたからと言って、知らない資さんうどんになることはなさそうです。
資さんうどんがその地位を築き上げてきた理由や北九州の地域柄も良くご存じだと僭越ながら感じました。
古来の資さんファンの方は安心して今の経営陣に任せても良いのではと思います。
続いては4P分析を行います。
資うどんの特徴は何といってもメニューの豊富さ。
下記はメニューのほんの一部ですが、丼ものからカレー、さらには朝食まで用意しています。
冒頭で記載ように、例えば家族で食事に行く際に、誰かが最近うどんを食べていても、別のメニューがあり、さらにそれが格別に美味しい。
また、サイドメニューの山菜ジャンボいなりやぼた餅が大人気です。
持ち帰りもできるので、それだけを求めて買いに来る人もいます。
さらにお彼岸シーズンになると、資さんうどんのぼた餅が大人気で予約しないと手に入らないほどだそうです。
しかし、それらサイドメニューが人気なのも、主力であるうどんの美味しさと心地が良い接客などのお店作りがお客さまから認められているから。
プロダクトの基盤が強力だからこそサイドメニューを展開しても、お客さまに喜んでいただけるためには決して手を抜かないから認められる。
1つ1つの商品に魂を感じます。
そこはブラさずに今後の事業展開も期待したいですね。
続いては価格を見ていきます。
うどんは他外食に比べると比較的に安価です。
資さんうどんも安価ですが、他外食チェーンにはない魅力があります。
それは先ほどお伝えした商品の豊富さもそうですが、小さなお子さんをお持ちの家族連れに優しいところが非常に強い。
うどんは消化にも良く、小分けにしても満腹感を得られるため、極論4人家族で小さいお子さん2人いても、うどんは2杯で済みます。
プラスにかしわめしやいなりを頼んでも2,000円もいかないんです。
さらに出店場所を見てみると、その多くが北九州でもロードサイドに展開している且つ、近くに大型のショッピングセンターやディスカウントストアがあるので、買い物帰りでも気軽に立ち寄れます。
ちょっとした高い買い物をした罪悪感から昼は金額を抑えて食事がしたいという顧客心理をうまく汲み取っています。
ただ、美味しいだけではなく、その利用用途によって資さんをいつでも利用できる状態にしておく。
単なるうどん屋ではなく、いつでも足を運んでもいいという安心感もあります。
さらに細かく企業を知るためにSWOT分析を行います。
強みは繰り返しになりますが、北九州を中心とした熱狂的なファン。
さらに様々な利用用途に受け答えできるように、ぼた餅やいなりなど単品だけでも買い求めて来店するような強力なサイドメニューも展開しています。
大手の全国チェーンに比べるとセルフ式ではないので、少々店員さんの数が多いのが気になりました。
店舗の規模や戦略が異なるので、同レイヤーでの比較はできませんが。
さらに、一部では「美味いうどん=コシが強い」というイメージを持たれているうどん好きもいるため、資さんうどんをはじめとする福岡のやわいうどんが受け入れられない人もいます。
近年では、福岡の名物はご存じの豚骨ラーメン、もつ鍋、明太子、焼き鳥、水炊き、これらに並ぶ隠れた名物として餃子やうどんが知られるようになりました。
出汁が効いたやわいうどんのファンが徐々に増えつつあります。
ただし、特にこれから脅威となりそうなのが、全国うどんチェーンの九州展開。
特にここ10年で大きく出店数を伸ばしてきた丸亀製麺やはなまるうどんは常に脅威です。
独自のうどん文化で地元愛が強い福岡県民が総出で、外様のうどんチェーン店から地元を守っているように見えますが、もはや大手の本格的な進出戦略は時間の問題かもしれません。
そこを防ぐために、ウエストや資さんうどんなど福岡県発祥のうどんチェーン店は、「九州のうどん屋」になるべく、まずは九州から出店数を増やしているものだと考えております。
分析も出そろったので、今後の考えられる事業戦略を自分なりに練ってみました。
もしも自分が企業のCMOだったら、、、
【強み×機会】
・コンビニでスーパーで「北九州の老舗うどん屋が作ったぼた餅」「北九州の老舗うどん屋が作ったおいなりさん」「北九州の老舗うどん屋が作ったカツどん」などを販売する
・福岡空港駅、博多駅、天神駅のいずれかに出店して観光客でも気軽に足が運びやすい状態を作り出す
・サイト内に掲載している日めくりカレンダーを店舗にも掲載して、会社と社員とお客さまで資さんうどんを作り上げていくというコンセプトにする
・サイト内に掲載している日めくりカレンダーを販売することで、資さんうどんの原点をお客さまにより知ってもらう
※資さんうどんの日めくりカレンダーとは、
この日めくりカレンダーは、創業者である大西章資氏が「社員のみんながこのようにあってほしい」と思い書かれたものです。
【強み×脅威】
・資さんうどんの思い出をお客さまに投稿してもらい、SNSなどで公開することで店舗側とお客さま側での信頼関係を幅広く認知してもらう
・12月10日(設立日)を「資さんうどんの日」にして、割引や限定商品などのキャンペーンを展開
・12月10日(設立日)を「資さんうどんの日」にして、北九州内の小中学校の学校給食に資さんうどんを提供して、地元ファンをより根強くさせる
・12月10日(設立日)を「資さんうどんの日」にして、北九州内の小中学校にかけうどん無料券を配布する
※イメージは和歌山県のグリーンソフトがやっているこどもの日にアイス無料券を配って根強いファンを獲得する戦略
さらに、ここでもう少し事業戦略を深堀りできないか、企業理念を見ていきましょう。
資さんうどん企業理念
【資さんうどんの企業理念】
・味と品質にこだわり、すべてのお客さまに満足いただける一杯をお届けします。
・気持ちの良い接客と心地よい雰囲気で、いつでもホッと安らげるお店をつくります。
・お互いに尊敬し合い、相手を思いやることで、安心して働ける職場をつくります。
続いて、自社で掲げる資さんうどんの使命感について。
【資さんうどんの使命について】
いつの時代も、どんな場所でも「最高の一杯」をお届けし、一杯を通じて幸せを分かち合います。
【リブランディング展開】
・「いっぱいの幸せ」をキャッチコピーに商品を展開していく
※商品パッケージなどに記載する
・出汁やつゆを販売展開して資さんの味を家庭へ届ける
・ぼた餅やいなりなどサイドメニューの作り方を公開してより身近な存在にする
・ファン同士が交流できるコミュニティを構築し、独自の食べ方や新商品の情報のやり取りができる状態を作り出す
以上、北九州のソウルフード「資さんうどん」をマーケティングトレースしました。
地元に愛される企業だからこそ、その愛される理由がわかります。
そこにはブレない創業当初からの企業理念と地元への恩返しという想いが詰まっています。
企業の組織体制は変わりましたが、お客さまを想い、常に良い形へと進化していく姿は変わらずにあり続けてほしいですね。
今後の資さんうどんに期待します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?