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小鳥と新月と日記《12月12日(木)》
12月12日(木)
今日も小鳥書房のお店番の日。
いつものようにお店の近くのファミマに寄って、お茶とおにぎりを買ってイートインスペースで食べる。今日のおにぎりは明太子マヨネーズと昆布。値引シールが貼られていなかったのが残念。
一服して10時15分くらいにお店に着いた。今日も店内の灯りは付いていた。鍵は空いていたので、そのまま扉を開けて中に入る。落合さんと「おはようございます~」「おはよ~」とあいさつを交わして定位置に荷物を置いた。
それからいつものように話しながら、昨日残っていた作業をしたりオープン準備を始める。
11時になったのでインスタに、「オープンしてます」という告知を投稿して一息ついた。そしてお店のドアが開き、インターンのKさんが入ってきた。「おはようございます」とお互いあいさつして、Kさんはソファーに座る。Kさんは今日でインターン4日目、最終日だ。みんなそれぞれ今日することをこなしつつ、たまに会話を挟みながら過ごしていた。
12時くらいだろうか。陽気な「こんにちは~」の声と同時に”自称”もえちゃんの親友、Jさんが小鳥書房に来てくれた。彼はほぼ毎日小鳥書房に顔を出してくれる常連で、今日もバケットハットがお似合いだ。そこから4人で話しながら、古本の棚を整理したり、年末年始の営業日のお知らせをインスタにあげたり、これから小鳥書房で開催するイベントの詳細を決めたりした。
話しているうちに、「だんさんはいつになったら谷保に引っ越してくるのか」という話題になった。前から言われていたことだけど、ここ最近はよく話題にあがる。自分でも、何でまだ谷保に住んでいないのか、と思う。
小鳥書房のお店番を始める前から週2~3日は谷保に出現していたし、お店番始めてからは週4~5日谷保にいる。人混みがあまり得意じゃないからほとんど都心には出ないし、行くとしても学校がある渋谷に週0~2日程度だ。渋谷といっても学校の最寄りは神泉だから、そこまで人は多くない。学校のことはいずれ触れるかもしれないから置いといて、とにかく千歳烏山に住んでいる理由がほとんどない。そして、衝撃の事実が落合さんから知らされた。
なんと、谷保は5万円以内で余裕で住める町なんだそうだ。落合さんは物件探しのプロらしく、条件を伝えたら部屋を探してくれた。見せてくれたサイトには、家賃3万5000円、風呂・トイレ別、クローゼット付き、敷金・礼金0という文字が。思わずKさんと声を合わせて「え!?」と驚いてしまった。安すぎる。こんなに素敵な町なのに、こんなに安くて大丈夫?と心配になるくらいのお値段だ。
千歳烏山から谷保までの交通費払うくらいなら、友人がたくさん集まる谷保に住んだ方が断然いい。うあーーーー、迷う。どうしよう。今は引っ越すお金がない。でも谷保に引っ越せば、今の家より格段に安いところに住めるし小鳥書房に近い。新しい本屋さんをオープンしたときに、いろいろな面から見て負担が少なくて済む。そして何より、終電を気にしなくて済む。流石に真剣に引っ越しを考える時が来たようだ。もちろん物件探しは落合さんにお願いしよう。
話が少し落ち着いてきて、みんなそれぞれの仕事に戻る。しばらく黙々と作業していると、落合さんとKさんは郵便局に荷物を預けに行くそうで「いってらっしゃい」と言ってじんさんと二人で送り出した。「いってらっしゃい」って良い言葉だと思う。帰ってくる場所がある。帰ってきてくれる人がいる。待っていてくれる人がいる。
小鳥書房は2025年1月26日に本屋の看板をしばらくの間下ろすけど、また帰ってきてくれるそうだ。でもそれは、1年後かもしれないし10年後とかになるかもしれないし、まだどうなるか分からない。でも、小鳥書房がどんな形態になっても、わたしは応援したいし、小鳥書房が戻ってくる場所を守りたいと思う。だから、小鳥書房が看板を下ろす日には心からの「いってらっしゃい」を伝えたい。「ありがとう」と「応援してる」の気持ちを込めて。
話し声とドアの開く音が聞こえた。落合さんと、両手にパンを抱えたKさんが戻ってきた。落合さんが、KさんとJさんとわたしに買ってくれたみたいだ。3種類のパンが机の上に並べられる。みんなでいっせーのーせ!で指をさして食べたいパンを選ぶ。わたしとKさんが被った。じゃんけんをしてわたしが勝ったので遠慮なくいただく。美味しい。14時~15時あたりからお腹が空いてくるから、この時間に食べものをもらうとすごく嬉しい。
さて、今日も楽しい1日だった。Kさんは今日が最後のインターンだったので、お店番終わりの煙草は吸わずに一緒に帰った。最終日の最後の方でなんだか少しだけ距離が縮まった気がする。もっと話しかければよかった、と思いながら谷保駅に向かった。ちょっぴり寂しいけど、Kさんとは、なんだかまた会える気がする。
今度は一緒にクナーファ食べに行こうね。
クファーナじゃないよ、クナーファだよ。