メカちゃん4 あなた運がいいのよ(2)
おばあさんの歩きかたは無目的な散歩のようにふわふわしたペース。
しかしついにおばあさん念願のローソンにたどり着いた。
「何を買うんですか」
メカちゃんが訊くも、おばあさんの発言は要領を得ない。
「お刺身とか、食べるものをね、でもいいの、もう大丈夫。
ここまで来たらもう帰れるわ。ご親切にどうもありがとう」
おばあさんが言って、ふかぶかと頭を下げて手を合わせる。
そうですか、わかりましたとメカちゃんは言って、おばあさんとコンビニの駐車場で別れて帰路につく。遠回りして帰る夜の月もきれいだ。
知っている道なので、目的あるどんどん歩きでなじみの公園のわきを通り過ぎた。
もうすぐ19時になろうとする小さい公園は街灯が2つ。暗い。そして誰もいない。
メカちゃんは立ち止まる。踵をかえして今来た道をもどる。
歩きスマホで「寄り道するからおそくなる」とラインを打ちスマホをコートのポケットにしまう。
5分後、果たしておばあさんはまだローソン店内にいた。
おばあさんに見つからないように陳列棚に隠れてしばらく観察していると、おばあさんは部屋着っぽい格好の女性に声をかけて何かをたずね、お酒コーナーを案内してもらい、ニコニコお礼を言って手を合わせている。
女性もにこにこぺこぺこ頭を下げている。さすがだ。おばあさんは陳列棚に腕を伸ばす。ついにレジに向かうだろうか。引き続きおばあさんを観察する。
目的のものを見つけたはずのおばあさんの買い物カゴに、黒霧島1リットルの紙パックが出たり・入ったりを繰り返し始めた。
2分眺めてから、おばあさんに声をかけた。
「何を買うんですか」
メカちゃんに声をかけられたおばあさんの買い物カゴは再びカラになっていた。
「ああ」
おばあさんは少し困った顔で私を見上げた。
おばあさんの傍に立つと、おばあさんに緊張感と集中力がもどったのか、何度も出し入れしていた黒霧島1リットルをカゴにいれると決断した。
それから冷蔵陳列棚に移動して、ハムときゅうりのサンドイッチを1つカゴに入れた。
「他にほしいものはありますか?」
「ええ、もう、いい」
おばあさんはレジに並んだ。
おばあさんの後ろに別の客が並び、おばあさんは次の行動をロックされて今度は財布を探しはじめた。
その様子をレジ待ち列から離れたところでメカちゃんが見守る。
メカちゃんがいなかったらあとどれくらいいたのだろう。