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シナリオ 「キミノナ」


人 物
青山充希(20)大学生
山田祐也(32)会社員
山田早紀子(30)花屋店員
ウェイトレス(29)


○喫茶店・店内・カウンター席(夜)

青山充希(20)がふてくされた様子でカウンター席に座り窓の外を眺めている。
カウンターに置かれたスマホが光る。
画面に『とーさん』父親からのライン着信のポップアップ。
『今どこにいる』
ラインを無視してスマホ画面を伏せる。

充希「はぁ〜・・・」

再び震えるスマホ。
父から連続でラインが届きポップアップ表示。
 『大学を辞めるなら説明責任がある』
 『充希が話し合いを避けるほど不r』
 『不利になるだけだ、と書くつもりだった』

充希「うざい。もうホントうざい」

充希がつぶやき、なおも届くラインを無視してスマホをリュックに突っ込む。代わりにリュックからパンフレットを取り出しカウンターに置く。

充希「説明責任とか政治家か」

『世界一周の船旅』と書かれたカラフルなパンフを開き、ため息をつく。


○同・入り口

山田祐也(32)と加持早紀子(30)が入店する。
ウェイトレス(29)がカウンター席の後方にあるソファ席へ二人を案内する。

○同・ソファ席
ウェイトレスがテーブルに水のはいったグラスを置きメニューを渡す。
軽く会釈して受け取る山田。

ウェイトレス「決まりましたらお知らせください」
山田「ソファのほうできつくない?」
早紀子「大丈夫」

ソファ席に座った早紀子が、バッグと切り花をソファに置く。
一口水を飲み、息を長めにつく。

山田「食べれそう?」
早紀子「うん。お腹すいた」
山田「食欲でてきたね」
早紀子「花の匂いも大丈夫になったしね」

二人ほほえみ合いメニューを眺める。

○同・カウンター席

背後の仲睦まじい夫婦の会話に気づく充希。
短く振り返って二人を見やる。

充希「はぁ〜・・・」

二人に聞こえないようため息をつく。


○同・ソファ席

注文を終え、スマホを熱心に操作する山田。
早紀子のスマホが震える。

山田「今、送った」
早紀子「いいの、あった?」

早紀子がスマホを手に、山田の送ったリンクを開く。

山田「『つきみ』つきみちゃん。可愛くない?」
早紀子「なんか風流だね〜。いいね」

早紀子の笑顔に、得意げな山田。

早紀子「つきみって友達、大学の頃にいたなぁ」
山田「・・・! あっ、やっぱダメ」

山田がスマホ画面を早紀子に向ける。
姓名判断サイトの診断結果。

山田「つきみ『裏の顔を持つ』タイプらしい。名字とバランスが凶。やばい」

早紀子が楽しげに笑う。

早紀子「あの子、女子大専門キャバクラでナンバーワンだったらしい。艶っぽかった」

早紀子が膨らみ少ないお腹を撫でる。

山田「だっだっ、ダメッダメダメダメ」
早紀子「いいじゃん。たくましく世渡りしそう」
山田「絶対にオレのこと未読スルーする」

想像して頭を抱える山田。


○同・カウンター席

二人の会話に耳を澄ませる充希が、自分のリュックにチラリと目線を向ける。
無表情で飲み物を一口飲む。


○同・ソファ席

早紀子が口の中で何かつぶやいている。
思考をめぐらせている様子。

早紀子「つきみ。みつき。みつき。みつきは、どう?」
山田「みつき?」
早紀子「そう。ひらがな。響きよくない?」
山田「みつき。山田みつき。いいかも」
早紀子「字画はどう?」

スマホ姓名判断サイトで調べる山田。

山田「すげ、大吉。16画。『器が大きく成功する人生を送る』」
早紀子「はははは、大物の予感〜」

楽しげな二人のテーブルへ、ウェイトレスが料理を運んでくる。


○同・カウンター席

固まっている充希。リュックからそろそろとスマホを取り出し、自分の名前を姓名判断サイトで調べる。「大吉」。

充希「ひょ、マジか」

笑いがこみ上げる充希。
ラインを開いて母親にラインを送る。

『ねー、私の名付け親っておとーさん?』

すぐに既読。

『そうだよ』返信が届く。







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