三日月ファストパス(2作品目)【毎週ショートショートnote】
三日月は涙を流す。やさしい光の涙を。
その光の涙は草木の影を包み、その草木の影に住む虫たちは月へ向かう。
だが、月にたどり着ける虫たちはほんの一部。
そのほんの一部の虫たちでさえ、月へたどり着けたときには、皆、息絶えていた。
月には何があるのか。なんのために月に行くのか。
それは月に着いてみないとわからない。
わからないからこそ、皆、月を目指しているのだ。
一つだけ言えるのは、月はいつも輝いている。
皆、その光を求め、月を目指す。
その虫たちの中の、特別に選ばれた一匹の虫。
その一匹の虫は、一枚のチケットを受け取った。
そこにはこのように書いてあった。
『三日月ファストパス』
*
月にたどり着くと、そこは暗かった。
闇とまではいかないものの、そこに光は少なかった。
あのまばゆい光はどこから来ているのか。
だが、僕はすぐに考えるのをやめた。
ここからは青く美しい地球を見ることができる。
僕は間違いなく、あの場所にいた。
もうそこには戻れないけれども。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※純文学ショートショートにしました。そんなジャンルがあるのかはわかりませんが、うまいオチがないことの言い訳です
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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