男子宝石(2作品目)【毎週ショートショートnote】
綺羅を飾る刺繍で彩られた綾絹の布に包まれた木箱をテーブルに置いた。木箱には古い行書体で『男子宝石』と記してある。それを開けると中には宝石があった。
紫みを帯びた漆のような光沢がありつやがある黒くて丸い形をした宝石。ところどころ青み、赤み、緑み、黄色みがあり、それらが混ざり合って紫みに見える。光の動きによって目もあやなにその表情は変わり続ける。
これは私が父からもらったものだ。父も祖父からもらい、祖父も曾祖父からもらった代々引き継がれた宝石になる。
矯めつ眇めつ眺めた。父からもらったときは、この宝石は近寄りがたい威厳があり、触りがたいように感じていた。
今改めて見ると、そのときとは印象が違っていた。それはまるで自分の分身のようでもあり、自分の父のことを見ているようでもあった。
『男子、三日会わざるば刮目して見よ』という諺もあるが、『男子宝石、三日会わざるば刮目して見よ』ということかな。ははは……
今日それを息子に引き継ぐ。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※なんとなく描写したくなったので。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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