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実例:Exitに貢献した「コミュニティ」〜トラクションを促す3要素〜

50%ルール:良いサービスを作れば勝手に売れるということはない。
起業家は、開発に50%、トラクション獲得に50%の時間を割くべき。

【トラクション】スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル

はじめに

2010年より、シリコンバレーや米国西海岸スタートアップ3社の日本市場開発を行いそれぞれをExitに導いてきました。その際に行ったユーザーコミュニティ(以降、単に「コミュニティ」)育成・活性化の過程で共通して意識した3つの要素をまとめました。

対象:スタートアップ創業者・開発者
段階:シード〜アーリーステージ
筆者:LinkedInプロフィール


結論

多忙なスタートアップ経営者・開発者に向け、先に結論を記します。

「トラクションはコミュニティにより促進される」

  1. 創業期の課題
    創業直後の初期段階は資金が乏しい。このためマスマーケティング(広告)費用の拠出やマーケティング専任者を置くことは難しい。創業者の「思い」が先行してしまい「プロダクト・アウト」になりがちで、トラクションの獲得に意識が向かないことが多い。このため「誰も知らない」「誰も使わない」プロダクト開発を続け、資金を溶かしてしまう。

  2. 解決策
    コミュニティの育成と活性化により、先行ユーザーが新たなユーザーを生む「自走」のサイクルを確立する。コミュニティを通じて「アーリーアダプター」の事例コンテンツによるマーケティングを行う。

  3. 期待される結果
    事例があることにより、利害関係者の理解を得られやすくなることで単なるユーザー(例:無償版を用いたテスト・検証レベルのユーザー)から、欲しいユーザー(例:有償版ユーザー、本番環境・実務適用ユーザー)が生まれ、トラクションが促進される。ユーザーが主体となってコミュニティ活動を行うため、スタートアップ企業側の費用負担抑制が可能である。

  4. 結論
    リソースの限られたスタートアップにとって、熱量の高いアーリーアダプターによる自発的なコミュニティはトラクションを促進し、企業とユーザーの関係性を強固なものにする。

トラクションを促す3要素

それでは、実際に手掛けた3つのコミュニティの育成・活性化において共通していた要素を挙げてみます。

1.可視化

スタートアップはその存在自体が「まだ世に無いもの」「まだ知られていないもの」そのものと言えます。そこで重要になるのが可視化(=実体化)です。つまり「まだない」ものを「既にあるもの」として市場に訴えかけていくことが重要です。具体的には以下のような手法が挙げられます。

・SNSでの発信(創業者個人・企業アカウント)
・関連イベントでのPR(ピッチイベント・LT)
・イベント開催時のアーカイブ(写真・映像)
・参加者によるレポート(ブログ)
・自社ブログやオウンドメディア
・メディアによる取材記事

このような可視化つまり「実体化」を意識することで、市場から「見える」スタートアップとして認知されていきます。

2.希少化

この希少化は「アイコン化」「ブランド化」とも言えます。つまり、他のコミュニティとは一線を画すための「味付け」です。先述のとおり、「まだ世に無いもの」「まだ知られていないもの」に対して、どうやって人々の関心をひくか?の工夫です。具体的には以下のような手法が挙げられます。

・創業者や開発者自身による登壇
・海外からの幹部招聘による登壇
・創業者や開発者とユーザーの交流
・熱量の高いユーザーによる実用事例
・「他ではみられない」新しいPR手法
・日本独自で作成するグッズ配布
・適度な「内輪感」「仲間意識」

アーリーアダプターの行動原理は「他よりも早くやっていること」であるため、適度な「内輪感」「仲間意識」の生まれる環境づくりを行うことで次のユーザーによる「自走化」がみられていきます。

3. 自走化

前述の2項目は、スタートアップ企業側が意識すべき留意点ですがコミュニティづくりの視点で欠かせないものが「ユーザー側の視点」です。あくまでユーザーが主体となって活動を行うように企業は「後方支援」しコミュニティが「自走」するように意識を持ち続けることが大切です。過去どのコミュニティづくりにおいても、一貫してこの「自走化」には最大の留意をしました。なぜなら、

コミュニティは企業のものではない

から(と信じているから)です。そもそも「〇〇のもの」とまるで所有権かのような言い方をしていますが正確に表現するならば「企業側がコントロールするものではないから」でしょう。しかしながら、企業が積極的に関与しているコミュニティはいわば「企業ドリブン」であり、「ユーザードリブン」でないことが多いと感じてきました。先述の通り、特にPMF前までや直後の「アーリーアダプター」たちは「言われて動く人たち」ではありません。いつも行動の発端は内発・自発であり、誰よりも早く新しいことにチャレンジする精神性を持っています。そんな貴重なユーザーたちに、企業側の「思い」を一方的に押し付けることは反発を招きます。過度な「お客様扱い」でもなくベンダーとしての「上から目線」でもなく「一緒に開発している仲間」として迎え入れる気持ちが重要です。この「自走化」については、製品・サービスのユーザー特性によって各論(戦術)が異なるため共通の手法と言えるものはありません。唯一言えるとすれば、

主役はユーザーである

という意識のもとにコミュニティを育てていくということでしょう。一方で、Exitを目的としたスタートアップでは完全にユーザーに委ねるだけでは理想的なトラクションの促進を図ることが出来なくなるリスクもあります。ここが、適切なコミュニティ育成の戦略性が求められる所以です。

さいごに(事例)

最後に、私がこれまで手掛けた「コミュニティ」がトラクションを促進しExitに貢献した例をご紹介します。いづれも「コミュニティ」の拡大によって日本でのユーザー数の増加や国内大手企業との事業提携につながりました。

2010〜2011年 Cloud.com (CloudStack)

トヨタ・ハイエースの移動オフィス「雲屋号」

2011年 RightScale

日本法人設立時のインタビューにて

2016年 Rancher Labs

Rancher=牧場主
Exitした創業陣からの評価

事業成長を支援します

「コミュニティ」の育成・活性化によりトラクションを促進し、企業の事業成長を支援します。特にコミュニティイベントの企画・運営ユーザー事例(コンテンツ)引き出し国内大手企業ユーザーの発掘・事業開発に強みを持っています。ご相談は @shindoy (X)DMまで!

ユーザーコミュニティによるトラクション促進

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