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書き手、自己紹介
まずは自己紹介を。
数寄屋大工一家の娘、と言ってもそんなに若くない娘が私です。
自由の「由(ゆう)」。
京都の龍安寺塔頭の大珠院(だいしゅういん)の老師さまにいただいた名前、まさかこんなにも自由な人間になるとは、さすがの老師さまでも予測はできなかったと思う。
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祖父の代から私の兄で3代目。
数寄屋建築を中心に設計施工を手掛ける「匠和心傳庵」の娘。
父と兄は数寄屋大工、母は学部に女子が4人しかいなかった時代の建築学科出身。
義姉は一級建築士でデザイナー。
ちなみに愛犬が2匹いるが、彼らはせっせと作業場に通い「看板犬」としての業務をこなしている。
我が家で建築に携わっていないのは私だけ。
どうしてか?どうしてでしょう。
数学が苦手で空間認識能力が絶望的に低く、定規を使ってもまっすぐ線が引けないほどの不器用さ。
「建築じゃない」ことだけは昔から自覚していた。
今は京都のテキスタイルデザインのブランド「SOU・SOU」で仕事をしている。
SOU・SOUは「新しい日本文化を創造する」をコンセプトに、日本の伝統産業や地場産業を生かした製品をポップでかわいいテキスタイルとともに商品化して販売している。
国内生産の地下足袋や三重県の伝統工芸品、伊勢木綿などが代表的なアイテム。
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SOU・SOUの代表、若林さんの考えに強く惹かれてラッキーなことに入社できた。
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「伝統の続きをデザインする」
日本の伝統や文化を守りたいと思うことは、日本人なら自然なのことかもしれないけれど、実際に何をすればいいのかわからない。
着物で生活している人は身近にはいないし、お饅頭よりシュークリームの方が人気者のような気がする。
知らないだけで、消えていった日本文化や職人は多いはず。
若林さんは、そんな文化・職人・産業をプロデュースして元気にし勇気づけてきた。
アイディアに行動力が伴うことは稀だということは、言うまでもない。
私は家業の切実さを感じていても何もしてこなかったし、実際になにもできていない。
存在することの大切さ、そして存続し続けることは並みのことではできない。
だからこそ若林さんのクリエイティブさは夢のように思えた。
大変なこともあるけれど、長年SOU・SOUにいて自分も日本の伝統文化の当事者になれたような気がしたし、その大義名分がなんとなく私を支えているような気がする。
今から建築の道へ進むことはないとは思うけど、少しでも父や兄の仕事を身近に知ってもらえたらいいな、という想いは強い。