【イベントレポート】品川スタイル研究所 第3回Session「”品川港南”で育む〜まちが次世代のためにできること〜」
「品川港南」エリアは、日本有数のオフィス街として多くの企業が拠点を置くだけでなく、2万を超える人々が暮らし、小学校・中学校・大学等の教育機関が存在する次世代を担う子どもたちのふるさとでもある。
そんな品川港南のまちが、特長を活かし、より繋がり、子どもたちのためにできることはなにかをともに考え、意見を出し合い、そのために一緒にできることはなにか?ヒントを探るべく、2回の連続イベントを実施しました。
品川スタイル研究所の紹介・公開企画会議のおさらい
品川スタイル研究所は、どのように街が変わっていくのか、その変化の過程をオープンにしながら、品川港南エリアの未来の姿を捉えるために2021年2月に立ち上がったプロジェクトです。港南をより良くするための第一歩を探していくことを目標に、3つのテーマ「働く」「景色」「育む」を掲げ、活動をしています。
前回の公開企画会議では、3つ目のテーマ「育む」について、港南エリアで次世代育成に携わるみなさんにお越しいただき、下記のアイデアをもとに、どのように繋がりを持ち、何ができるかディスカッションを行いました。
・ 学校の先生方との定期的な懇談の場
・子どものキャリア(生き方)支援、キャリア教育の活性化
・ 集える場所。希薄にならない工夫
・ 雨風を凌げるイベントエリア、階段が椅子の役割を兼ねたリアルに人と触れ合える場所、電気、水道、トイレを完備した災害時に存在を発揮出来る場所。炊き出しも定期的に出来るのが理想
・ 寺田倉庫がやってそうなアートイベントで近所の人同士で出会えるようなもの、緑水公園でピクニック大会、地域運動会
・ 公開授業
・ 運河の水を綺麗にするための体系的な活動
・子供が各企業の活動を体験できる企画
・ 世代を超えた連携(核家族が多い地区かと思うので、おじいちゃんおばあちゃん世代がいい意味でお節介を焼ける取組み)
・ 自らの考えやアイデアが地域に反映されることでより愛着が増すような取り組み
前回の公開企画会議をふまえ、今回は互いの共通する想いや実際にできそうなアクションのアイデア「”品川港南”で育む〜まちが次世代のためにできること〜」と題してSessionを行います。
スピーカー紹介
古屋 公啓 氏
港南振興会事務局長 港区観光大使
伊丹 桂 氏
ワールドシティタワーズ自治会 会長
船木 亮作 氏
港区立港南小学校 校長
また、モデレーターは、登壇者としても参加する港南小学校PTA会長 中嶋 信行 氏と品川シーズンテラスエリアマネジメント事務局/株式会社花咲爺さんズ 代表取締役 加藤 友教が務めました。
現地観覧者/コメンテーター紹介
また当日は、前回の公開企画会議に登壇された方々を中心に、教育に携わる方々が現地観覧者/コメンテーターとして参加されました。
伊東 寛 氏
港区立港南子ども中高生プラザ館長
一般財団法人本所賀川記念館理事
佐々木 希久子 氏
港区立港南中学校 校長
篠田 徹也 氏
株式会社スリー 代表取締役社長
関島 章江 氏
株式会社電通国際情報サービス オープンイノベーションラボ
宮澤 紀菜
品川シーズンテラス
①港南中学校の防災教育について
中嶋 信行 氏(以下、中嶋):中学校の体育館や施設は港南一丁目〜五丁目の唯一の避難所です。もし、平日の昼間に災害が起きたとすると、中学生が授業をしていますよね。災害拠点にいる中学生が避難所として防災の運営をする筋肉をもっているべしという正論をもとに10年以上総合防災訓練を続けています。
まずは大人がプレ防災時に配置や流れを説明し、防災訓練当日は中学生だけで対応できるように訓練を行っています。
佐々木 希久子 氏(以下、佐々木):他校では、生徒会だけや一部の生徒だけが参加するケースが多いなか、港南中学校では全員が当日の総合防災訓練に参加をしています。いきなりの訓練ではなく、自分たちの街は自分たちで守る、地域にいる人達を助ける立場になるという意識を持ってもらえるプログラムのもとで防災訓練を行っています。
伊丹 桂 氏(以下、伊丹):当事者性を街を舞台にして持てる仕掛けとして興味深いです。街の大人を知るという点でも良いですよね。彼らの記憶にも根付きますね。中学生たちがさまざまな防災の知識をパネルを使って参加している住民に説明をする活動が始まりました。中学生が教えることで学べるという点も大きな変化かなと感じました。
古屋 公啓 氏(以下、古屋):総合防災訓練は、実践して自分たちで考えて行動するという点で素晴らしいプログラムですね。もっと我々もお手伝いしながら作り込んでいけたらと思います。
中嶋:企業とも連携できたらいいですよね。
ようこそ最高の未来へ
ーー「ようこそ最高の未来へ」とは、地域の企業に参加いただき港南小学校で行っているキャリア教育です。企業が、自分たちが何を行っているか・どのような世界をつくりたいのか、ビジョンをベースに生徒・児童に授業を行い、未来の希望を持ってもらうプロジェクトです。
船木 亮作 氏(以下、船木):はじめは、企業の一方的なプレゼンを子どもたちが聞く形だったんです。ですが、それだと子どもたちが「参加をしている」と主体的に考えることがありませんでした。そこで、大人では考えつかないような提案をさせてみてはどうかと。
すると、自分たちならこうできるんじゃないか、と企業のなかで考えもつかなかったことを提案してくれ、コミュニケーションを取りました。子どもたちの意見に対して、企業から答えを返します。お互いに気づきがあり、双方向によかったと思います。子どもたちが真剣に考えて、それを実行しようと行動できました。
古屋:児童のもつ発想や感覚は、大人では考えられないことが多いですよね。与えられたものを使いこなすだけではなく、使い方から考えるという点は、これからの製造業含めた企業のヒントになりそうですね。組織のなかでボールを投げ合うのは大事にしなくてはいけないと気づかされました。
伊丹:日本の子どもの自己肯定感の低さも外国と差がついています。将来なれそうなものになるという考えの子どもたちが増えているので「なりたいものについてどれだけ知るか」という機会は貴重ですね。港南には大企業も多いので、他にない強みとして双方の繋がりは活かせたらと思います。
職業体験
ーー地域を中心に企業に通って就業体験をするプログラムです。より充実したプログラムにするためにどのようなことができそうでしょうか。例えば、学校側はweb上で職業体験の事例を挙げると企業も参加しやすくなりそうかなと思いました。
佐々木:教員が体験先を見に行き、許可があれば動画を撮影しています。もちろん生徒の顔が分からないように加工して出し、他にも制作物等をアップすることは可能かなと思います。
船木:港南小学校ではTwitterを活用して発信しています。また、いまの子どもは起業したいという子たちもたくさんいるので、就業体験について篠田さんにもお話伺えればと思います。
篠田 徹也 氏:企業のなかでも、バックオフィスやフロントオフィスなどさまざまな仕事があります。それぞれどのようなミッションをもって臨んでいるかをきちんと伝えて共感してもらった上で職業体験してもらえると、大きな学びになるのかなと思います。
実態としては、個人ワークも多く在宅の機会も増えています。今の時代という点ではオンラインミーティングでアイデアを出したり、新しいカタチで行っても面白いかなと思いました。
ーーオンラインが増えるなかで企業と学校がどのようなプロセスで行うのがいいか一緒に考えられたらいいですよね。
伊丹:子どもたちにはバックヤード業務が人気なんですよ。「このお店はこうやって商品を出していたんだ」というように、裏側がわかるのが面白いようです。
見えなくて何をやっているのかわからない部分がわかるようになる、という点がスタートかなと思います。
港南クラブ・特別支援学級
船木:特別支援学級の子どもたちは、保護者含め自分が将来どうなっていくのか不安を抱えています。子どもたちにこんな職業があるよ、ということを企業と連携しながら授業をたくさん行い、体験してもらっています。
船木:また、港南クラブでは、夏休みにワークショップを開いています。実際の専門家に来てもらい子どもたちに体験してもらっています。
ーー特別支援学級や港南クラブの活動で、抱えている課題はありますか?
船木:教員は普段授業をしているので、以前は担当教員は授業後に企業とオペレーションをしなければいけないという課題がありました。いまは地域コーディネーターという方たちにも繋がってもらい活動をしていく予定です。
またお金の管理がしにくいという点にジレンマを感じています。
伊丹:特別支援学級は、福祉の面だけではなく子どもたちが「知ること」が大切ですし、多くの体験をして個性にフィットする機会が知れるといいですよね。
船木:普段できない体験ができるのが、子どもたちにとって嬉しいことです。たとえば「港南クラブの宇宙の授業のあとに、実際に体験に応募し参加した」などの興味が広がった事例があります。
子どもたちが「やってみた」と行動を起こす気持ちを大切にしたいですね。他にも、「ゴミ拾いをしたい」など子どもたちからの提案も増えています。地域とコラボしながら主体性をもって達成することに意義があるなと思います。大人がサポートしつつも「自分が動いてやったことが形になる」ということが子どもたちにとって必要で、力になるのではと思いました。
登壇者の皆様、ありがとうございました。
さらに踏み込んだ内容は、ぜひ動画を御覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=voB3hHXV4B4