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あなたはいくつ知っている? うつ病の種類について
うつ病にはいろいろな種類がある
現代人にとってなじみ深い「うつ病」ですが、実はうつ病にはさまざまな種類があり、発症する人の傾向や症状、発症タイミングなどによっていくつかに分類されています。
今回はそれぞれのうつ病の違いについて解説していきます。
メランコリー型うつ病
一般的に広く知られているうつ病のタイプは「メランコリー型うつ病」と呼ばれています。「メランコリー型」とは「メランコリー親和型性格」を意味しており、「他者配慮性、几帳面、過度の良心性、責任感の強さ、仕事熱心」な性格の人を指します。
メランコリー型性格の人は様々な場面で手を抜くことができず、仕事や責任を自分一人で抱え込みやすく、その結果キャパオーバーとなりうつ病を発症してしまうため、メランコリー型うつ病と呼ばれるのです。
もちろんメランコリー型性格の人が全員うつ病になるわけではありません。日々の生活にストレスを感じていながらも、運動や趣味で息抜きができていたり、家族や友人との時間が充実していたりとストレスへの対応方法(ストレスコーピング)が確立できている場合はうつ病になりにくいとされています。
非定型うつ病
メランコリー型うつ病とはかなり異なる特徴を持つタイプを「非定型うつ病」と呼び、うつ病患者の約18~36%は非定型うつ病であるといわれています。
メランコリー型うつ病との違いとしては「落ち込み気分の一時的な改善」があげられます。メランコリー型うつ病はポジティブな出来事があってもずっと落ち込んだままですが、非定型うつ病の場合はポジティブな出来事が生じた際には一時的に気分が回復するとされています。その他にも「他人から拒絶されることに過剰反応する」「手足が鉛のように重く感じる」などの症状が現れることもあります。
また、非定型うつ病であってもメランコリー型うつ病のような症状が現れることもあります。
季節性感情障害
秋から冬にかけて気分の落ち込みが見られ、春や夏になると改善するというサイクルを繰り返している場合は季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder )の可能性があります。
季節性感情障害はうつ病の一種であり、症状もうつ病とほとんど同じです。異なる点としてうつ病の症状でみられる不眠や食欲不振より、むしろ過眠、過食がみられる傾向にあります。
原因として冬季の日照時間の短さからのセロトニン(幸せホルモン)分泌量減少が考えられています。そのため気分の落ち込みを感じた際にはできるだけ外に出て日光を浴びるようにする、過食による体重増加を抑えるために適度な運動を習慣化させるなどの対策を行う必要があります。
産後うつ病
女性特有のうつ病として「産後うつ」が挙げられます。発生頻度は10%前後であり、そのほとんどが出産後1~2ヶ月で発症しています。症状としては典型的なうつ病と同様で抑うつ気分や意欲低下がみられますが、出産直後ということもあり体力的・精神的にもつらい状況が数ヶ月にわたって続くこととなります。
また、パートナーや両親からの援助が得られないと「自分がやらなきゃ」「赤ちゃんを守らなきゃ」という重い責任感から自分を追い詰め、ある日突然何もできなくなってしまい、自分自身に重篤な影響があるだけでなく、愛着障害やネグレクトなど生まれたばかりの子どもにも悪影響を及ぼしてしまいます。
その他うつ病
その他にも仮面うつ病や微笑みうつ病などがあります。
仮面うつ病は気分の落ち込みや意欲減少などの精神的な症状よりも、全身の倦怠感や睡眠障害、動悸や息切れなどの身体症状が目立ってしまうため、うつ病だと気づかれず慢性化してしまう可能性が高いうつ病です。
また微笑みうつ病は気分の落ち込みを周囲の人に悟らせず、明るくふるまうことができてしまうため、周囲の人からうつ病であることを気づいてもらえず、症状が進行し、重篤なうつ病へと発展してしまうことが特徴です。
「うつ病かも?」と思ったら
うつ病にはいくつか種類があります。メランコリー型うつ病、非定型うつ病、季節性感情障害、産後うつ病など、症状が似ていても背景や対処法が異なるため、適切な理解と対応が求められます。知らず知らずのうちにうつ病になってしまうこともあるため、自分や周囲の変化に敏感になり、早期に気づくことが重要です。
うつ病が疑われる場合は、医療機関を受診し、専門家の助けを借りることで、適切な治療を受けることができます。代表的な治療方法として抗うつ薬を用いた薬物療法や認知行動療法などの心理療法、頭部に電気を流し神経伝達物質のバランスを変化させ症状の改善を図る電気けいれん療法、脳の特定の部分に磁気を当てることで神経細胞の活動を調節するTMS治療が挙げられます。
自分自身や大切な人の心の健康を守るために、日頃から心のケアを心がけることが大切です。早期の対応が、うつ病の影響を軽減し、より健やかな生活を取り戻す鍵となるのです。
参考文献
● 白川修一郎・大川匡子・内山慎・小栗貢・香坂雅子・三島和夫・井上寛・亀井健二(1993)「日本人の季節による気分および行動の変化」, 『精神保健研究』, 39, 81-93(2024.7.18参照)
● 坂元薫(2005)「2.うつ病の病前性格・心因・状況因」, 『第129回日本医学会シンポジウム記録集:うつ病』, 15-23(2024.7.18参照)
● 林秀樹・武井祐子・藤森旭人・竹内いつ子・保野孝弘(2016)「非定型うつ病に関する研究の動向 : 文献数およびキーワードの推移をふまえて」, 『川崎医療福祉学会誌』, 26(1), 1-11(2024.7.18参照)
● 梅崎みどり・富岡美佳・國方弘子(2012)「我が国の産後うつ病に関する文献の検討」, 『山陽論叢』, 19, 92-97(2024.7.18参照)