《心情図書》
最近、人と関わることに疲れる。仕事終わりの週末。朝から何もいい事がない。かといって愚痴る相手もいない。恋人なんて…忘れてしまった。仕事の疲れを背負った帰り道、天気はあいにくの雨。なんでこんなにもついてないんだろう…。だんだん悲しくなってくる。心に憂鬱が広がる。…そうだ、あそこに行こう。
カードをかざして開いたドアを潜った。目の前には何億ともなる本が並べられた書架が広がっている。ここの本は全て私の為だけの本。
「ブックサーチ:憂鬱が無くなる本」
合言葉を言って私は近くの個室に入った。椅子は外にもあるのだけれど、この個室は何となく居心地がよくて、いつもここを選んでしまう。しばらくすると机上に十五冊ほど本が並べられた。先程の合言葉でその時の気分に合った本を自動的にセレクトしてくれるのだ。
「五分で読める喜劇の物語か…これにしよ」
私は一冊を手に取り、読み始めた。