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【怖い話】教えてくれない

俺の母方のばあちゃんの血筋が、所謂霊感のあるタイプらしい。

俺の叔母はばあちゃんの家に住んでるんだけど、この家には絶対座敷童子がいるって昔から言ってる。

よく皿がテーブルの上を滑ったり、とてとてっと足音が聞こえるらしい。

そんなばあちゃん家での話。


血筋を半分受け継いでるからなのか、それとも場所のせいなのか分からないけど俺も二度だけ幽霊らしきものを見たことがある。そう、ばあちゃん家で。

一度目はかなり小さいとき。
クリスマスの集まりか、正月の集まりかは覚えてない。
(余談だけど、母は五人兄妹で親戚がめっちゃ多くてすぐイベントで集まる)

ばあちゃん家の居間は出て左側がトイレ、風呂、二階への階段、玄関につながっていて、右側が物置の扉になってる。

必然的に居間にいる人たちは来客の人影を、左から来てすりガラスの戸の前に止まる、といったように見ることになる。

だけどその時俺が見たのは、左から来た人影がそのまますーっと過ぎ去っていくところ。

あれ?と思った。
同じタイミングで居間が、しーんとなった。

子どもながらに「誰かが物置に行ったのかな」と推測したけど、そのときに家に来てた人は全員居間にいたし、ずっと見ていたけど人影は戻ってこないし、おかしいなって感じ。

「いまだれかとおったよ」と母に伝えても、「見てなかった」というだけ。
見間違いかなとも思ったけど、たぶんこれが一回目だった。


そして二回目。
大学の下宿先から盆に帰ってきたとき。

今度は間違いなかった。新しい来客はないだろう深夜一時すぎ。

またしても、すりガラス越しにすーっと左から右へ人影が動いた。
足音は、なかった。

「なあ、今の見っ…え」
人影を確認次第すぐに母に声をかけ振り向いた瞬間、俺は絶句した。

母が、白目を向いて手印を作っていた。

それを手印と呼んでいいのか分からないが、そのとき母は柔らかく右手を開いて、中指と親指で円を作ってお腹の前に置いていた。デコピンのような感じだったと思う。

絶句した理由はそれだけではない。
母の奇行を目の当たりにして、慌てて辺りを見回すと、

ばあちゃん、伯父さん、叔母さんたちまでもが一同に白目を向いて手印を作っていた。

なんだ…これ。

呆然としていると、
すっと、何事もなかったように元の会話に戻る母達。

「いや…ねえ…今の何なの、何してたの」と聞いても「…何が?」としか返ってこない。
「いやいや、なんか白目向いて変な手の形作ってたじゃん、仏像がやってるやつみたいな」
どれほど言及しても、皆「何言ってるんだ」とでも言いたげにこっちを見て、無視をして会話に戻る。
おい、なんで教えてくれないんだ、なんであからさまにしらばっくれるんだ。脳内を疑問と恐怖がうずまく。幽霊より怖いものを見てしまった気がして、人影が何だったのかなんて最早思考の彼方に吹き飛んでいった。


結局、母達は何のためにあれをしていたのか全く分からなかった。

社会人になった今でも、何も分からないし、誰も教えてくれない。

誰も、教えてくれなかった。



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