【怖い話】ばあちゃんのお経
一年前くらいにじいちゃん死んだんだけどさ、ばあちゃんが結構塞ぎ込んじゃって。
毎日朝のお経を欠かさないんだけど、未だに肩震わしてるのよ。
良い関係の夫婦だったんだな、とか思って。
俺もばあちゃんが生きてる間に嫁見つけて、あわよくばひ孫の顔くらい見せてやりたいよなとか考えちゃうんだよね。
ある日の朝もお経唱えてるのが聞こえてきて、ばあちゃん朝飯食おうよって声かけようと仏間に行ったらさ、
「観自在菩薩行深般若波っ、羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異っ、空空不異色色っ、即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減」
ってなんか言葉に詰まったお経が耳に入ってくるんだよ。
じいちゃん、もう亡くなって一年も経つのにこんなに思われて幸せ者だなって。
邪魔しちゃ悪いかと思って気付かれないように襖をそっと開けて、見てたらさ。
「不生不滅っうふっうふふっ、不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無限耳鼻舌身意無色声香味っふ触触法無眼界乃至無意識界無無明亦無無っくくっ、明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅っふふ、道無智亦無得以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罣礙無っいひひ罣礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏」
こみ上げる笑いを堪えて、お経唱えてたんだよ。
涙堪えて肩震わしてたんじゃなくて、笑いを抑えるために震わしてたんだよ。
なんでかなあ。
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