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AI時代にライターの役割はどう変わるのか?

AI時代の「文章を書く職業」の役割とは?

ChatGPTを用いたなかなか面白い実験についての記事を読んだ。

筆者が文中で指摘しているように、こだわりを持つAIは遠からず出てくるだろうし、人間がAIにこだわりを持つように指示もできるようになるだろう。

そうなると、今後はいわゆる「文章を書く職業」ではAIに負けない文章を書ける人以上にAIをうまく利用できる人が求められることになる。

これは長距離走の世界記録保持者よりも自動車免許の保持者の方が流通業で有利になるのと似た話だ。今はもう飛脚の時代ではない。

人間が自分の頭と手で書くのではなく、AIに書かせる時代が数年以内、下手をすれば数か月以内にやってくる。

人間の役割はAIがほぼ完成品にまで作り上げた原稿を精査し、微調整し、納品されるアウトプットに責任を持つことになると感じている。

大友克洋の「武器よさらば」では、人間の兵士は自律式無人兵器(ゴンク)に殺されるためだけの存在なのかという問いかけがあったが、実際にAI時代の人間に求められる役割は似たようなものになるという予感がある。

刎ねられるべき首、切られるべき詰め腹であることこそがAIには不可能な、人間だけが担い得る役割になるだろう

リンク先の実験が当たり前の光景になった世界では、人間の最後の役割は「私がこの作品にゴーサインを出しました」と認めることだ。

AIはどこに向かい、その時人間は何をするのか

現在、AIの発達は月単位ですらなく、週単位というスケールで起こっている。

AIのめまぐるしい発達を見れば、まだまだAIの将来的な活用方法を確定的に語ることはできない。

1年前の時点ではまだMidjourneyすら登場していなかった。AIが人間の代わりに創作や開発を行うなんてまだしばらく先の未来だと多くの人が考えていた。

しかし画像作成AIのMidjourneyが登場した後すぐにStable Diffusionが続き、手やラーメンの描写のおかしさがネタとして取り上げられたもののあっという間にAIはそれらの問題を解決していった。

ChatGPTやBing AIが現在指摘されているような問題を解決するまでにどれくらいの月日が必要なのか。おそらくほとんどの人の予想よりも短いだろう。

正直なところ、AIの発展のスピードに「人間のAI時代の制度設計」が追いつけるとは思っていない。

はんこやFAXが現役であるのと同じように、人間の仕事は人間社会の制度設計のスピードに依存しながらゆっくり変化していくと考えている。

少なくとも日本は数週間単位の急激な発展に即座に対応できるタイプの社会ではない。いくつもの会議や稟議を経て、関係各所のはんこを紙に押印し、後期高齢者の経営トップの了承を経るまでにどれだけの時間が掛かるのか、そのカフカ的地獄に馴染みのある人は多いだろう。

またAIがどれだけ美麗で正確な文章を書こうとも、「あの人の文章が読みたい」と思わせる人間はなくならないと考える。

それはどれだけAIが人間に想像できない将棋を指そうと、藤井聡太の将棋を見たいファンが大勢いるのと一緒だ。

人間が(例えば棋士藤井聡太という)人間の生き様に惹かれるのは人間だからかもしれない。だがそれこそが、AI時代の人間のあり方を決定すると感じている。

AIに書けない文章というのは、特定の人間が書いた文章だ。

AIに「○○の文体で『カップ焼きそばの作り方』を書いて」と指示することができるが、それはオリジナルがあればこそのパロディだ。

しかしそうしたパロディが成立するには、パロディにしたくなるような魅力的なオリジナルがなければならない。

人間にできるのはそのようなオリジナルであり続けることだろう。逆に言うと、そうしたオリジナルとして魅力を発揮できない書き手にとっては厳しい時代になるだろう。

文章はこれまで以上に属人的なものになる可能性がある。

レガシーとしての人間

人間臭さ、手づくりの味わい、もしかしたらそれはアナログレコードや紙の古本のようなレガシーを愛する懐古趣味なのかもしれない。

人間という存在自体がAIに対するレガシーになっていくのかもしれない。

ただしアウトプットの享受者(消費者といってもいい)が人間である以上、そうした付加価値は滅びることはないだろう。

しかしAIがアウトプットを評価し、取捨選択する時代が訪れた時、AIの価値判断の基準は人間とはまったく違ったものになることは想像に難くない。

AIはAIとしての独自判断を下し、それを元にブラッシュアップしていくことになる。

それが起こる時代を人間はシンギュラリティと呼ぶことになるのではないだろうか。

そうした世界で人間という存在自体にAIがどのような判断を下すのか、正直なところ楽観はできないような気がしている。

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