エンブレムに語らせるTwitter - アカウント自体をブランドとして捉えるスポーツのSNS戦略
こんちゃでございます。東京で出世を夢見る23歳のスポーツデザイナー、SHIN🇯🇵です。
Jリーグクラブを退職、東京へ転職してはや半年が経過しました。東京に馴染めないながら必死に日々の仕事に取り組んでいます。
どう馴染めないかというと、調子ぶっこいて都心部に引っ越したので、とにかく家賃とか物価高騰でお金が飛びます。べらぼうにお金が飛びます。
どのくらいお金が飛んだかというと、銀行の貯金残高が10,000円を切りました。
今回は、金もなくてやることないし、しょうがないからnote書くかってことで(無料だし)、JリーグクラブのTwitterを見ていて感じたことをつらつら書いていきます。
広報担当あるある \この記号/ について
JリーグクラブのTwitterを見ていて、昔から僕が一番気になっていたのは、この記号を使う文化です。
メガホンとか吹き出しとか、セリフっぽい文言ををAA(アスキーアート)化するとこうなるんですよね。漫画の大声風の吹き出しをAA化した物もよく見られます。
Jリーグクラブをはじめ普遍的な公式アカウントでよく見る印象があるセリフ記号。ずっとこの記号が気になっていて、そこにJリーグクラブのオウンドメディアの活用のヒントが隠されているのではと思い、執筆に至ります。
アカウントIDから見えるメディアの時代遷移
まず1番にこの記号を見た感想としては「ダサい」「田舎っぽい」「ガラケー?」「チープなカンジ」「センスない」と、まあ性格が悪いので色々と感じてしまう訳ですが、この感覚は間違っていないと仮定して思考を巡らせると「これ誰のセリフなんだ?」という疑問が浮かび上がります。
クラブのエンブレムが喋ってるの?
Twitterを操作している広報担当が喋ってるの?
それとも別の何か?
今回は広報担当のわかりやすい例としてパズドラ公式広報のムラコさんを挙げます。ちょっと古いか?
コンテンツを生む企業:ガンホーがあり、社内の広報担当:ムラコさんはそのコンテンツ:パズドラの魅力を分解し、文章へ落とし込んだのち、オウンドメディアを介して世に発信する形です。この体制を広報媒介型SNS運用と勝手に命名します。
運営会社の人間がクラブの情報をPRするような形式と捉えてください。
※便宜上、クラブというコンテンツ(ブランド)と、それを運営する運営会社をそれぞれ別物と考えて話を進めます。
Jリーグクラブの多くがムラコさんと同じような体制で運用しており、それが表面化するポイントとしてアカウントIDに「_STAFF」「_KOHO」「_PR」などがくっ付いているクラブがいくつか見られます。Twitter公式アカウントを創設した当時一般的だったメディアの捉え方が可視化されたものと見て良いでしょう。オウンドメディアなんて、スマホが登場するまでは存在しなかったのです。
これらのケースで、語り部は紛れもなく人間、パズドラでいうムラコさんであり、Jリーグクラブでいう運営会社の広報担当であることがわかります。つまり企業が自我を持った発信ではなく、人間が企業の意図を汲み取ってPRの体裁をとりつつ発信しているケースと定義できます。
アカウントをブランドとして捉えるSNS運用
パズドラは当時その圧倒的なコンテンツ力から、Twitterをやっていなくてもリアルの口コミで広がっていった時期でした。
なのでムラコさんのSNS運用は、既存のユーザーに対する手厚いサポートを便益として提供しているものと言えます。
一方Jリーグクラブは、セリフ記号を例にあげたように、明らかに人間がPRしている体裁ですが、このままでいいのか?という話になるわけです。そもそもソシャゲとスポーツではビジネスモデルが違えばフェーズも違います。
僕がJリーグクラブにとって必要なのは「運営会社がクラブをPRする旧時代的メディア運用」から脱却し、「アカウントそのものがブランドを体現するオウンドメディア」へ転換することです。
これらの例は明らかに「広報が喋ってる」所謂PRの体裁をとったものではないことが解ります。そしてなんかカッコよく感じます。やはりスポーツはどこまで行ってもカッコよくあるべきですね。
誰が喋ってるのか?という疑問に戻ります。
①クラブのエンブレムが喋ってるの?
②Twitterを操作している広報担当が喋ってるの?
③それ以外?
先の鎌倉・群馬のツイートは、ポジティブな例として①に分類し、ブランド発信型SNS運用とまた勝手に命名します。
喋るというよりも、語るといったニュアンスです。もちろん人の手で生成した発信に違いはないのですが、こちらはクラブという無形の生き物が語っている体裁をとっているのです。
ブランド発信型のツイートは、エンブレムから光が放たれ、その光子ひとつひとつが鮮明な情報として脳内に流れ込んでくるようなイメージです。僕はこれをストーリーテリングと呼んでいます。なかなかハイコンテクストですね。
一方で現状のJリーグクラブは②Twitterを操作している広報担当が喋ってる(という体裁をとっている)発信が多く見られます。
「〇〇ユニフォームの販売が決定しましたのでお知らせいたします✨詳細はこちら」
「m月のホームゲームは△△にちなんで××イベントを開催いたします💙」
「次回のホームゲームはm月d日d曜日、〇〇戦です。引き続き熱いご声援をよろしくお願いします。」
これらのツイートはオウンドメディアの利点を活かせていない例です。やや失礼な言い方をさせていただくと、不要な広報の自我というインターフェースを介している、と表現すればわかりやすいでしょうか?PR的な文脈によってブランドの主体性が損なわれています。
「!」とかふわふわ系の絵文字を使っちゃうのも勿体無いな〜と思うんですよね。テキストも含めての発信デザインという見方でいくと、日本は説明っぽくてイけてない、海外は看板とか標識さえもファッションやステッカーとして成立しうる所以というか。
スポーツクラブは、ファッションブランドのオウンドメディアを参考に運用する方がユーザーの満足度が上がります。なぜならブランド自体が語り部になることによって、よりダイレクトにブランドが伝わるから。この違いは、日本と国外のSNS運用の捉え方の差から来ているものと僕は推察しています。
もちろんお気持ち表明や不祥事リリースの類には広報業務として粛々と対応することが求められますが、ユニフォームの発表とか、新規パートナー企業契約の発表などは、ブランドの魂に乗り移って発信をした方が効果的です。
さらには、重要度の高い発信ではクラブのアイデンティティを感じさせる見せ方・伝え方ができているのか?というのもポイントです。
ユニフォームは選手とサポーターをつなぐ戦闘衣装だし、イベントは関係者全員がクラブ愛を感じて一緒に盛り上がればいい。オウンドメディアにおいてその魅力を伝えるべきは、運営会社によるPRの体裁ではなく、ブランド自身から発せられる生のことばです。この考え方で解釈していくと、クリエイティブの方向性や「それはインスタでやるべきなのでは?」とか、他のプラットフォームの適正とかの議論を進めることができます。ブランディングにおいて必要なのは文字情報だけではなく、それを包括した、総合的に戦略が組み込まれた発信です。別にテキストなしで画像のみを発信してもクールなわけです。
JリーグクラブのSNSにブランディングが必要な理由
フットボールクラブがやるべきこと、やれることなんて沢山あって、その街に住んでいて応援してくれる人たちの生活を豊かにすることであったりとか、別に住んでない人でもエンブレムをスマホ壁紙に設定して、起床と同時に「よし今日も頑張ろう」と思えることだったり、色々です。
それはもう本当に素晴らしくて、関わる人みんなを幸せにできる、無限の可能性を秘めているブランドビジネスなんです。そのポテンシャルは、ブランドとして主体的に発信をすることにより、ユーザーの心に深く刺さります。そのためにはクラブのアカウントに自我を芽生えさせ、語らせることが必要です。
クラブとは、ユーザーからしてみれば「俺の新潟」であり「俺の栃木」であり「We are Diamonds」かつ「俺たち松本」なのです。誰もがクラブのブランドに自己を投影させ、試合に勝ったら自分が勝ったかのように錯覚し、自分こそ世界最強の人間だと思い込むのです。つまりブランドをかっこよく表現することは、ホームタウンをかっこよくすること、ユーザーをかっこよくすることとイコールなのです。
ここにフットボールの魅力が詰まっていて、それを活かすブランディングこそが本記事に記載したSNS運用の極意なのです。
今のJリーグクラブの運営会社には、覚悟をキメて堂々と「このアカウントがブランドそのものだ」と言い切ってクールな表現を発信していくことが求められるのではないでしょうか。
近年は社員の役割細分化やプラットフォームの飽和など、ハード面の問題も大きく、SNS担当と広報担当の違いについても議論の余地がありそうです。
①ブランド発信型SNS運用・②広報媒介型SNS運用を適切に使い分けていくこともまた重要でしょう。子供向けイベント等、②広報媒介型の方が適した企画もあります。一方、例えばユニフォームはブランドのアイデンティティを表現する大きな要素なので、①ブランド発信型でアウトプットした方が効果的であり、②広報媒介型ではアイデンティティを伝え切ることは不可能でしょう。
結論、今のJリーグクラブには、セリフ記号を用いた運営会社のPR的な発信ではなく、クラブのブランドが直接語るような発信が必要であり、僕は後者を実行しているクラブを大いに評価します。
他のスポーツではどうでしょうか?
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