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【理想のチーム?】顧客や株主よりも、大切なのは社員!~サウスウエスト航空について考える
前回、チーム論・リーダー論ということでお話をした際に、思い出したのが「サウスウエスト航空」です。すでにご存じの方も多いと思いますが、米国大手LCCで非常にユニークなポリシーで運営されていることでも有名です。かつて「ビジョナリーカンパニー」か何かで特集されていて、興味を持ち、あれこれ数冊読み込んだことを覚えています(あまりにハマってしまい、アメリカを旅行した際には無理矢理予定に組み込んで、搭乗しました。案の定、爆笑トークが聴けました笑)。ということで、今回は久方ぶりにマイブーム到来の「サウスウエスト航空」についてお話ししたいと思います。
航空ビジネスの門外漢が立ち上げたベンチャー企業
サウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハー氏は弁護士が本業。利用する航空会社の使い勝手の悪さに頭に来た彼は自ら航空会社を立ち上げることを決意。そして案の定、立ちはだかる当局とライバル企業の嫌がらせに真っ向から対立。果敢に勝負を挑み、完膚なきまでに薙ぎ倒して勝者になるという伝説の持ち主。そんな彼の2大目標が「顧客を楽しませること」と「コストを削減すること」だったそうです。
徹底したコスト削減!すべてが合理的!
まずはコスト削減から。例えば使用するのはすべて同一機種。こうすればメンテナンスも楽ですし、パイロットの操縦も簡単。さらに機内食はなし(ピーナッツのみ)、そして座席は何と「早い者順」に座るという徹底ぶり。こうしてチケットカウンターの煩雑さを省いていたそうです(ただし今後は予約席を導入するそうです。)こうして徹底したコスト削減を顧客に還元するため、運賃も低価格。アメリカのような広大な面積を持つ国ですから、鉄道やバス移動の感覚で飛行機を利用するお国柄。イメージは「空飛ぶ路線バス」といった感じでしょうか?おそらく乗客も「この値段ならこのサービスでもいいよね」という感覚だったのかもしれません。
単なるLCCとの違いはコレ!徹底的に顧客を楽しませる!
上記のコンセプトなら、他企業でも簡単に真似できる内容ですよね、徹底的にコストを削減(ということは主にサービス)し、機内サービスを受けたいなら有料で、というのは現在のLCCでは当たり前の光景ですよね。しかしサウスウエストが他企業と異なるのが、次の「顧客を楽しませる」なのです。有名なのが「機内アナウンス」。時に陽気に歌い出したり、ラップを披露したり、フライト中にぐずる子どもには手品を披露するなど、ちょっとしたサプライズでおもてなし。実際、私が搭乗した際のアナウンスも結構笑える楽しい内容でした。
顧客を楽しませる根底は「スタッフに楽しんでもらう!」
これを理解するまでに私は相当時間が掛かってしまったのですが、実は「顧客を楽しませよう」というスローガンの下、実際にスタッフさんたちにこれを推奨するには、実は「スタッフさんたちに楽しんでもらう」ということを徹底しなければならないんですよね。企業として実証されているのが、離職率の低さ(2010年代の話なので、現在はどうなっているかは不明ですが・・・)。このことが企業風土や風通しの良さを物語っていますよね。
ケレハーが無駄をそぎ落としたサービスを続けられるのは、顧客に対するすばらしい心配りがその基礎にあり、しかも従業員に対するそれ以上の配慮が支えとなっているからだ。このサービスのカギはケレハーが育て上げた企業文化だ。彼の考えでは、サウスウエストで働くことは、何よりも楽しいことでなくてはならない。サウスウエストの本社ではカジュアルな服装が当たり前で、いたずらが飛び交い、誕生日を迎えた従業員を祝福している。パーティを開くのに、どんな口実をつけても問題ない。こうした雰囲気は飛行機の中でもまったく変わらない。たとえば乗客は、3月17日の聖パトリックの日には、小妖精の衣装を着た客室乗務員に迎えられたりする。安全装備の説明はサウスウエスト版の漫談で、頭上の荷物棚からいきなり乗務員が飛び出してきて驚かされたりする。
スタッフが自分で考えて、お客様を楽しませよう、としているのに、上司がしかめっ面で「なんでそういうことをしたんだ!」という具合に叱責したら、そのスタッフはもう二度と自分で考えて行動しなくなってしまいますよね。それに会社の掲げているスローガンが「建前」であることになってしまいます。ですので、企業トップが率先してスタッフを楽しませる、もてなす、といった空気が醸成されているのでしょう。
こんな企業で働きたい!!!って本気で思いました。
サウスウエスト航空の社風は『ユーモア』と『グループ意識』。アメリカ企業でよく聞く「私の仕事じゃない(That's not my job)」という言葉とは違って、仕事は『掛け持ち』、『助け合い』が当たり前、時間が空いているときには、幹部職員や、ケレハー会長自らも現場に出て手伝うのだという。ケレハー会長は、仕事の合間に社員1人ひとりに「Thank you.最近変わったことはないか?」と声をかけ、握手をして回る。社員も現場の情報や家族の動向を手短に伝える。年に何回か、社員たちは、幹部を交えて社内パーティーやピクニックを催し、バカ騒ぎを楽しむ。会長はユーモアと茶目っ気を発揮して雰囲気を盛り上げ、社員との一体感を醸成する。会長は経営者であるとともに、「社員の偉大なるパパ」と慕われているのだ。
この考え方には大賛成です、アンチセクショナリズムとでも言うのでしょうか。手が空いているんだったら、他の人の手伝いをしたらいいじゃん、ってことってよくありませんか?もちろん最初から手伝ってもらうことありきで期待されると、なんだかな・・・という感じですが。ボス自ら「何か手伝おうか?」という気さくさ、私は好きですね。というか、自慢話のように聞こえてしまいますが、自分も教室長時代はそういうスタンスのつもりでした(ただ、逆に周りに気を遣われていたかもしれませんが・・・涙)。
協働しあう関係作りは「愛によって結束するときに強くなる」
「協働し合う関係」とは、どのような関係を言うのでしょうか。ヒントは、サウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハーの「恐れではなく、愛によって結束するとき、会社は強くなると私たちは思っています。」という言葉です。(出典:ジョイ・オブ・ワーク/吉田耕作/日経BP)
サウスウエスト航空のハートのマークに象徴されるような、「どうしたら会社は人を愛せるか、どうしたら人は会社を愛せるか、どうしたら毎日喜んで職場に通えるか」をいつも考えている会社なんて、世界七不思議の一つかも知れません。社員は、一緒に働いているのは、他人ではなく、親しい友達という意識なんですね。「いつも、お互いが仲間意識で結ばれているんだ」「ただ、自分がやってもらいたい事をしてあげているだけです」とサラリと語る彼らに、心が通い合う関係を感じます。
サウスウエスト航空のニューヨーク証券取引所での略称が「LUV」であることから、これをもじって自らを「LOVE AIRLINES」と称しているそうです。そのため同社のロゴ等にはハートのマークがあしらわれています。「愛」という言葉も日本語のニュアンスとは異なり、もっとカジュアルに多用されていますよね、合理的でドライな印象の強い米国企業において「愛(しかもスタッフ愛!)」を前面に打ち出し、そして激しい荒波の航空ビジネスで生き残っていることを考えると、働くスタッフを第一に考え、徹底しきったサウスウエスト航空のスタイルはいつの時代にも参考になるのではないかと思います。
サウスウエスト航空に憧れて・・・笑
何でも真似したがりの私は、学習塾の室長当時、なんとか教室を盛り立てようと奮闘していたわけですが、試行錯誤を繰り返しながらではありましたが、サウスウエスト航空の徹底したスタッフファーストを参考にしたマネジメントを行っていました。もちろん全てが上手くいったわけではないのですが、離職率も低減しましたし、何よりスタッフが楽しく働いてくれることで、通ってくれる生徒さんたちも楽しそうでしたし、そこから「卒業後に一緒に働きたい!」と言ってくれる生徒さんも出てくるようになりました。当時はいろいろスタッフ向けのイベントなども考えて、年がら年中、いい意味でお祭り騒ぎを「演出」していました(←ここ重要。笑)。やっぱりつまらないアルバイトだったら即辞めちゃいますからね。ということで、ある程度効果はあったのではないか?というところで今回は一旦締めたいと思います。