黄色いあいつ
黄色いあいつ
ぼくはいつものけものにさせる。
誰かにぼくの良さを理解してもらいたい。
ぼくはみんなに知ってもらいたいんだ。
きっとぼくのことを理解できないやつなんて、子供だ。何もわかっていないただ上部だけの偽善者だ。
いっつもぼくと一緒にいるやつは必ずと言っていいほど活躍している。
なんでキミは良くてぼくはダメなんだ。
この白い世界の中でいつも一緒にいて、キミとぼくの何がそんなに違うの。
キミは確かに透明感があるけどちょっと茶色いじゃん。
「色の問題じゃないと思うよ」
茶色い奴が言った。
「じゃあ何が違うっていうんだよ!」
茶色いあいつは確かに需要が多い。
毎日毎日働いていて、忙しそうにしている。
ぼくにだって彼の良さは十分にわかっている。
わかっているから悔しいんだ。
ぼくだって色んな人達の役に立ちたい。
でもそうはいかない。
彼よりも圧倒的に需要が少ないからだ。
それは理解している。
「でも一緒にいるってことは、キミにもちゃんとした存在意義があるって事だよ」
茶色いやつが言った。
「そうかなあ・・」
「自分の存在意義なんて自分で分かっているやつの方が少ないよ」
自信なさげに返事をすると茶色い奴は続けてぼくの良さを語ってくれた。
「君はこの白い世界の外でも大活躍するよ、きっと。きみと相性がいいやつらを俺は知っている。君は、君自身はひとりで活躍するのは難しいだろう。でも大丈夫。君がいることで沢山の奴らが変われるんだぜ。きみは他者を変えたり、他者を引き立たせるスペシャリストなんだぜ!」
「なんかいまいち褒められているきがしないな・・」
不安が拭えぬまま、時が過ぎていく。
ああ、なんでぼくは黄色いんだ。
もっと綺麗な色に生まれたかった。
そうだな、金や銀。そんなピカピカな色になりたい。
そうすればみんながぼくのことを見て、ぼくを使ってくれる。
聞くところによれば、僕がいる白い世界とは別の白い世界では僕が存在していない世界があるらしい。
想像しただけで恐怖だ。
”カカクヤスク”
という世界に存在しているらしい。
とりあえず、今ぼくが存在しているのはこの世界でよかった。
さあ、この世界の空が開かれたら運命の分かれ道。
活きるか死ぬか。
判決が決まる。
明日は明日こそは人の役に立ちたい。
ぱかっ。
白い世界の空が割れた。
ぺりぺり。
大地を覆う透明な絨毯がはがされていく。
いよいよだ。
先に飛び込んだのはやはり茶色いあいつ。
勢いよく飛び込んだせいか白い世界の外にはみ出たやつもいた。
そして、
そして・・・
その手は、僕に触れた。
その人はなんの躊躇もなくぼくを広大な大地に解き放ってくれた。
ようやく茶色いあいつと一緒に仕事ができる。
「こんにちは」
茶色で透明なしょうゆくん。
「こんにちは」
黄色いからしくん。
しょうゆとからしはその粒々の醗酵した大豆の中に混ざっていく。
ネバネバ、ネバネバネバ。
白くて長ーい尾をひきながら、彼らはホカホカのご飯の上に舞い降りる。
いっただっきまーす!