FF16にちりばめられたオマージュとメタファー①FF5|FF16メタ考察
※FFXVIとFF過去作のネタバレと邪推を多分に含みますのでご注意ください。
前回の記事では、制作陣(主に前廣さんと松野さん)の歴史を振り返りながら、ヴァリスゼアという世界の成り立ちに関しての考察をしましたが、今回からはFFXVIのストーリーやヴァリスゼアという世界にちりばめられたオマージュとメタファーについて、考察をしてみようと思います。
前回の記事はこちら↓
まずは本作ディレクターの高井さんの経歴にも触れながら、FFVとの関連性について。
スクウェア黄金期とサガの系譜
高井さんはスクウェアの叩き上げといったキャリアを歩まれており、FF以外にも様々な作品制作に携わられています。
高井さんが過去携わった作品は下記のとおり。
FFのほかサガシリーズや聖剣伝説なども含め、スクウェアの黄金期といわれる時代の作品の多くに携わられていますね。歴代引き継がれてきたコマンドバトルを脱却し、本作がアビリティを駆使したアクションに振り切ることになったのは、高井さんが、毎作尖ったバトルシステムにチャレンジしてきたサガシリーズ総合ディレクター河津さんの系譜を継いでいることもあるのかもしれません。
また、前廣さんがFFXIの基盤となるPlayOnlineの開発に携わっていたのに対して、高井さんはFFXI本編の制作にヴィジュアルエフェクトデザインで参加されており、前廣さんとともに高井さんもヴァナ・ディールの「創生」に関わられていることが分かります。
前廣さんの記事でもご紹介したとおり、その後ラストレムナントで河津さんプロデュースのもとディレクターを務められています。
ラストレムナントにはトルガルというソバニ族(4本腕の亜人族)の仲間キャラクターが登場しており、本作のトルガルの名前の由来となっているようです。
その後は吉田さん、前廣さんらとともに件の幻の新作企画ののち、新生前FFXIVの立て直しにあたることとなります。吉田さんのメインディレクションとともに高井さんのこれらスクウェア時代の歴代作品、そしてFFXIの開発経験がFFXIVの新生、そして本作の制作につながっているのだなと思いました。
高井さんが開発した初のFF作品、FFVとの繋がり
続いて、本題であるFFVと高井さんの繋がりについて。
前回の記事でご紹介した↑の動画でご本人も語られていますが、開発者として初めて参加した作品がFFVとのことで、前廣さんと同様に1番好きなFFとコメントされています。
こちらでも、FFVと本作のアビリティシステムの関連性について言及されていました。
ご自身が入社以来一番感動した体験もFFVにまつわるものとのことでしたので、やはり思い入れの強いナンバリングなのだろうと思います。
ストーリープロットの関連性
これを踏まえてFFXVIの物語を振り返ってみると、本作のストーリープロットはFF5との関連性を強く感じます。ここでFFVのあらすじを振り返ります。
物語の始まり、風が止み異常を感じたタイクーン王は飛竜に乗り、クリスタル神殿の風のクリスタルの元へと急行するが、目の前で砕け散ってしまう。(砕くのではなく、クリスタル自体が限界を迎え砕ける)
主人公であるバッツとその仲間達は風のクリスタルの力を受け継ぎ、残りの水・火・土のクリスタルを守るために旅に出る。
しかし、最終的にクリスタルは全て砕け散ってしまい、封印されていた暗黒魔道士エクスデスが復活してしまう。。。
このように、背景は違えど世界の繁栄をもたらしていたクリスタルが失われ、それによりラスボスが復活するというプロットはFFXVIと一致しています。
また、FFVでは第一世界と第二世界でクリスタルは合計8つ存在していますが、本作でもマザークリスタルは8つ登場(過去には他にも存在していた模様ですが)しており、この点も一致しています。
ガラフとの死別と、シドとの死別
FFVではエクスデスとの闘いにより、バッツ達は物語のはじまりから旅を共にしていた仲間のガラフと死別します。FFVで屈指の名シーンです。
本作ではアルテマとの闘いにより、クライヴはジョシュアを失ったあと自暴自棄になっていた自分を救ってくれたシド(シドルファス・テラモーン)と死別します。このシドとガラフの二人と主人公に纏わる展開にも共通性を感じます。
また、FFVには発明家シドの孫ミドが登場しますが、ガラフの孫クルルと併せて本作シドの娘であり機工学を学ぶミドアドル・テラモーンの存在ともつながりを感じます。
ロンカ文明と空の文明、そしてオメガの存在
FFVでは、かつて存在した超古代文明「ロンカ文明」が登場します。500年前に滅びるまでは栄華を誇り、クリスタルの力を使って飛空艇を創り出すなど高度な技術を駆使し、町を空に浮かび上がらせるほど優れた文明として描かれています。末裔となる人々は存在するものの、この高度な文明が滅んでしまった理由は作品のなかで描かれていません。
本作においても、太古の昔に栄えたとされる高度な文明「空の文明」が登場します。高度な魔法によって飛空艇や空中都市を生み出しましたが、力を求めた人々と神(おそらくアルテマ)による争いによって滅亡しており、空の文明のものと思われる遺跡群がヴァリスゼア各地に残っています。
本作DLC第1弾「空の残響」で空の文明が発明した魔導兵器として登場するオメガも、FFVでロンカ文明が生み出した最終兵器として初登場しており、「空の残響」もFFVリスペクトのDLCであることが分かります。
飛竜草と毒
FFVでは、弱った飛竜のためヒロインのレナが癒しの力のある飛竜草を採るために毒草地帯に飛び込んだり、嫌がる飛竜に食べさせるため人間には猛毒の飛竜草を自分で食べて手本を見せたりと、レナの献身性を表す印象的なエピソードがあります。
また、この飛竜草のある山は物語の終盤でバハムートと戦う舞台にもなります。バハムートを倒すことで主人公たちは召喚獣バハムートの力を手に入れます。
本作では飛竜草はその根に毒をもちながら、厳しい環境で育つことで稀有な紫色の美しい花を咲かせる、ザンブレクの国花として登場します。ディオンにとって父親との絆や国を背負う重責など清濁両方の意味を併せ持つシンボルとして描かれており、こちらも印象的なエピソードになっています。
さらに、クリスタル自治領でディオン(バハムート)が暴走した際の戦いの舞台となったのも、ディオンの意識に呼応してクリスタル(ドレイクテイル)が姿を変えた飛竜草のうえでした。クライヴは暴走したバハムートとの激しい戦いののちその力を得ることとなり、ディオンはアルテマと戦う同志となります。
また、飛竜草の毒はベアラーの刻印にも用いられており、刻印を取り除くためには命がけの手術が必要となるという設定があります。ベアラーが何者なのか、なぜ刻印が頬に刻まれることとなったのかに関する考察はまた後程。
飛竜とフェニックス
FFVには、物語の冒頭から登場し主人公たちの助けとなってきた飛竜が、敵との闘いにより自分の死が近いことを悟り、自分の残りの命をレナの役に立てるためフェニックスの塔から飛び降り不死鳥フェニックスとして転生する、という名シーンがあります。レナをはじめ、主人公たちは悲しみを抱えながらも召喚獣フェニックスの力を手に入れます。
本作でクライヴは、物語の序盤でワイバーンというイギリスの伝説の飛竜の名前で呼ばれていますが、アルテマとの最後の闘いを前に死の淵のジョシュアからフェニックスの力を受け継ぎます。ここにも、FFVのフェニックスにまつわる物語へのオマージュを感じました。
このほかにも細かいFFVのオマージュは多数ちりばめられていますが、前回の記事でお伝えした前廣さんによるヴァリスゼアの世界観の設定に加え、高井さんと前廣さん共通で最も影響を受けたFFVの物語をプロットとして引用された、ということなのかと思いました。
正直、初見で本作をプレイした時はFF5との関連性をほとんど感じなかった(シドとミドの関係くらい)のですが、僕も人生で一番最初にやりこんだFFがFFVだったので、考察を進めるなかで気づいたこの一連のオマージュは個人的にはとても嬉しいものでした。
FFVが引用された背景には、もう一つ、FFVとFFXVIの両作の結末、そしてスクウェアエニックスという組織に関するメタファーであると感じられる点もあるのですが、それはエンディングに関する考察で語らせて頂こうと思います。
次の記事では、FFタクティクスとの関連性についてまとめようと思います。
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