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FF16のタイトルロゴはなぜフェニックスとイフリートだったのか?|FF16メタ考察

※ネタバレを含みますのでご注意ください

発売から約2ヶ月と時間が掛かってしまいましたが、FF16クリアしました。(すべてのサブクエストもクリア済)

開発陣の生の声については9月に発売されるFF16アルティマニアを楽しみにしつつ、クリアした直後の今のタイミングで、作品の中にちりばめられた開発陣のメッセージを自分なりに解釈した考察をいくつか書き残しておこうと思います。

まずは、掲題のフェニックスとイフリートの話から。

召喚獣が用いられた初のタイトルロゴ

発売前から気になっていたのは、タイトルロゴに用いられたフェニックスとイフリートの意味でした。

天野喜孝氏によるフェニックスとイフリートが闘う姿がロゴとして描かれている。

召喚獣がはじめて登場したのはFF3からと歴史は長く、ナンバリングを重ねるごとにストーリー上も重要な役割を担うようになっています(FF9・FF10あたりは特に)が、振り返ってみると意外なことに、これまでのFFナンバリング作品のタイトルで召喚獣が用いられた作品はないんですよね。

e-storeロゴステッカー商品ページから引用。召喚獣が用いられたロゴは今作が初。

現行のローマ数字でのナンバリング+天野喜孝さんイラストのスタイルになったのがFF4からで、モチーフは下記のとおり。

  • FF4 カイン

  • FF5 飛竜

  • FF6 魔導アーマーに乗るティナ

  • FF7 メテオ

  • FF8 抱き合うスコールとリノア

  • FF9 クリスタル

  • FF10  異界送りをするユウナ

  • FF11 ヴァナ・ディールに集う冒険者たち

  • FF12 ジャッジ・ガブラス

  • FF13 クリスタルに支えられたコクーン

  • FF14 多種多様な武器を掲げる冒険者達

  • FF15 眠るルナフレーナ

  • FF16 フェニックスとイフリート < NEW!

”炎”で彩られたファイナルファンタジー

本作で召喚獣がフィーチャーされることとなるきっかけは、東京ゲームショウに参加した際の妄想が発端だったと吉田さんは発売前のインタビューで語っています。

これはまだ『FF16』の開発を始める前の話なのですが、いつだったかの東京ゲームショウでとにかく「配信に出る」仕事が多かったんです。『FF14』の仕事ですね。TGSのすごい人の数の中、短い時間で色々なブースを移動しなきゃいけなかった。とにかく移動が大変でした。

で、「ここで召喚獣になったら会場も一跨ぎできるかなあ」と妄想が……。

「今、TGSの会場内でイフリートに変身したらみんな『ワーッ!』って驚くだろうし、ブースからブースを一跨ぎで移動できるな……」と思ったことがあったんです(笑)。

そして、ここから「人の身でありながら召喚獣になる」、「バトルのスケールがリアルタイムで人間から召喚獣のスケールに変わる」という2つのアイデアを思いついたんです。

そして、ディレクターの高井浩さんはシナリオ設計上の観点でイフリートをメインに据えた背景を下記のように語っています。

 イフリートがメインになっているのはクライヴとジョシュアのふたりを「炎で結ばれた兄弟」というイメージとして描いてみたかった面もありますね。

そのような背景から今作のタイトルロゴはイフリートとフェニックス、2体の炎の召喚獣が選ばれたそうです。

FF16のイフリートとフェニックスが向かい合っているタイトルロゴも天野喜孝先生に「今回のFFは“炎に彩られたFF”にしたい」と、2体の炎の召喚獣のイメージをお伝えする形で制作していただきました。

ですが、このインタビューを含め調べる限りだと、イフリートと同じ”炎”の召喚獣ということ以外にフェニックスが選ばれた背景は明らかになっていません。

ではなぜフェニックスとイフリートだったのか?

これはあくまで自分の推測になるのですが、この二体の召喚獣には、FINAL FANTASYの復活スクウェア・エニックスの結束といった願いが込められているのではないかと思っています。

シリーズ生みの親の退社、会社合併後も揺れていたFFブランド

ここから少し長くなりますが、FFとスクウェア・エニックスの過去を遡ります。

今から22年前、リリースから20年以上経った今なおシリーズ屈指の名作と呼ばれるFF10(2001年発売)と、FFシリーズ初のMMOとして成功を収めるFF11(2002年発売)の発売を前に、シリーズ生みの親である坂口博信さんが開発元のスクウェアを退社するという出来事が起こります(11のプロデューサーは田中弘道さんが後任として担当)。

当時ニュースを目にしたときは驚きと共に「今後のFFはどうなるんだろう」というファンとしての戸惑いを感じたことを覚えています。

そして、2003年にスクウェアとドラクエシリーズで有名だったエニックスが合併し株式会社スクウェア・エニックスが誕生。客観的に見てライバルと言ってよい関係にあったFFとドラクエのパブリッシャーが一つになり、大きな話題となりました。

※↑今年2023年はスクウェア・エニックス合併20周年。エニックス出身の齊藤陽介さんとスクウェア出身の時田貴司さんが当時の両社内部の状況を語られていて、興味深い内容でした。

その後、これも名作と呼ばれるFFタクティクスを生み出した松野泰己さんがFF12の制作に着手しますが、体調不良により降板。現第二開発事業部長である河津秋敏さんが開発を引き継ぎ2006年に発売(松野氏は2005年に退社)。

初の女性主人公が生まれたFF13はFF13-2、ライトニングリターンズと三部作展開となりましたが、発売当初は独特な世界観から賛否両論を呼ぶ作品となりました。

このように、坂口さんの退職直後から過渡期を迎えていたFFシリーズですが、その後もFF11の後継MMOとしての立ち上げで炎上した旧FF14初のオープンワールドに挑戦したFF15に関する不満点を挙げる声などもあり、ナンバリングを重ねるごとにネット上でのFFシリーズに対する厳しい声(シナリオや世界観について坂口博信さん時代の作品との違いを批判するものや開発体制に対する懸念)が大きく取り沙汰されるようになってきていたと思います。

風評を“ゲームの中身で覆す”。フェニックスに込めた復活への願い

炎上した旧FF14を前任の田中弘道さんから引き継ぎ、再建の立役者となった吉田さん自身も、インタビューでこのことについて触れています。

最近の『FF』シリーズを振り返ると、旧『FF14』は作り直しが必要なほどの大きな問題がありましたし、続く『FF15』もたくさんの人に遊んでもらえましたが、同時にストーリーに対する不満点を挙げる声もありました。こういった『FF』に対する厳しい評価が尾を引いているのは、グローバルで共通した事実ですし、シリーズである以上当然のことだと思っています。僕自身も、世界中を巡ってきてそれを肌で感じてきました。
『FF16』は、そんな風評を“ゲームの中身で覆す”と決意して作り上げ、それに対する自信もあります。

吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

上記コメントのとおり、吉田さんをはじめとしたFF16開発陣はこれまでの風評を覆し、FFブランドを復活させ、生まれ変わらせるという覚悟を持って本作の制作に臨み、そして輪廻転生を司るフェニックスという召喚獣にその願いを込めたのではないでしょうか。

イフリートとフェニックス、スクウェアとエニックス

話は変わりますが、スクウェアとエニックス両社の社名の由来についてここで触れてみます。まずはスクウェアの社名の由来から。

スクウェアsquare)には「正方形」「広場」「頑固な」「きちんとした」などの意味があり、ゴルフでは飛球線に対して90度に正対している状態を指す。
問題に対して逃げ腰ではなく、直視していく企業体を目指す意味で名付けられた。また、ゲームソフトのクリエーター達が集まる広場「スクウェア」を意味している。
会社生誕の地である四国(四角形から)への謝意、先端機器が整備された製作環境の中で、クリエーター達が豊かな感性と創造力を発揮し、世界に通用するエンタテインメントを提供する国際的企業となる思いが込められている。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』-スクウェア (ゲーム会社)

これまでFFシリーズをはじめとしてさまざまな挑戦を続けてきた姿勢が表れている由来ですね。まさに”名は体を表す”という感じ。続いてエニックス。

社名の「エニックス」は、世界初の汎用デジタルコンピュータと言われる「ENIAC(エニアック)」と不死鳥「PHOENIX(フェニックス)」をあわせた造語である。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』-エニックス

なんとフェニックスがここでも出てきました。これを踏まえて、

FFシリーズを代表作とするスクウェアを象徴するイフリート不死鳥に由来のあるエニックスを象徴するフェニックス、この2体の召喚獣が両社の合併20周年を迎える2023年の今年に発売する最新作でフィーチャーされ、タイトルロゴに起用された、という風に捉えるのは考えすぎでしょうか?

そして、かつては闘っていた者同士が、苦難を前にして共闘し、そして合体して一つとなる、というイフリートとフェニックスの物語に、スクウェアとエニックスの物語を重ねてしまうのは僕だけでしょうか?

かつては闘っていた者同士が、
苦難を前に共闘し、
合体して一つとなる
イフリートとフェニックスが合体した姿であるイフリート・リズン。リズン(risen)は「復活した」という意味であり、直訳すると「復活したイフリート」。ここにもFFの復活への願いが込められているのではないかと思いました。

そしてさらに、今作でディレクターを務めたスクウェア出身の叩き上げである高井浩さんと、ドラクエXの制作から入社しエニックスの流れを汲む今作プロデューサー吉田直樹さんのふたりで制作されていることにも意味があると思っています(吉田さんが急遽立て直しに入ったFF14を除くとスクウェア出身者以外の人間がナンバリングタイトルのプロデューサーを務めたのはおそらく本作が初めて)。

合併から20周年を迎える今作で、社内で結束した新しい制作体制で、生まれ変わった新たなFINAL FANTASYを作り復活を遂げる。そんな覚悟と願いが今作のイフリートとフェニックスには込められているのではないかと僕には感じられて、より一層この作品が好きになりました。

元出版社社員でいまはITサービス企業で働いている者です。自身の読んだ書籍についてや旅行先のこと、仕事についてなどまったり綴っていこうかと思っています。