【フィリピンの闇へ】映画『野獣のゴスペル』感想【東京国際映画祭】
今年の東京国際映画祭で1本目に観たのはこの作品『野獣のゴスペル』。
舞台は現代のフィリピン。
ささいな事からクラスメイトを殺してしまった少年マテオ。
罪悪感にさいなまれたマテオは懇意にしてくれるベルトという男の家へ匿われることになるが、そこはフィリピン社会の闇と繋がっていた…
主人公のマテオがただの少年という訳ではなく、抑えきれない暴力性を内に秘めており、その片鱗が垣間見えるところが面白い。
避難先で仲良くなった友人のグードに銃を向ける場面はオモチャの銃と分かっていても背筋がゾッとした。
しかもマテオの父親もカッとなる人物だとなると、血筋なのかもしれない…と思い悩むのも当然だろう。
上映後のQ&Aによると、監督のシェロン・ダヨックが生まれ育ったフィリピン南部は治安が悪かったらしい。
そうした犯罪や警察の腐敗など今も続くフィリピン社会の現実を描きたかったとのこと。
さらに公式のインタビューを読むとこの物語自体が実話が元になっているとのことで、そのことにも驚かされた(何でも監督の家族の知り合いがその話をしてくれたために公では語っていなかった)。
そういう訳で、題材自体は興味深いのだが、話自体は単調で悪い意味で予想を裏切らない。マテオがシンジケートにからめとられていく様子も創作物で散々見てきた描写だし、父親の疾走も察しがつくしその通りだったりする。
冒頭の屠殺場や劇中の暴力描写などが強烈で眠気が残ってた頭が完全に醒めた。
ラスト、あの後、マテオはどうなったのだろう。
劇中に今後を予想されるカットはあったが(恐らく船員になったのではないだろうか)、マテオの性格を考えると明るい未来というよりは暗い未来の方が浮かんでしまうのだが…
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