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池之上小学校の桜のいのちをつなぐ 〜挿し木授業編〜

園藝部員のゆみこすです。今回は桜の木をきっかけに池之上小学校の桜のいのちをつなぐプロジェクトのレポートをお届けいたします。

「池之上小学校の桜のいのちをつなぐプロジェクト」とは?
現在、校舎の建替が進んでいる世田谷区立池之上小学校(世田谷区代沢2-42-9)
シンボルツリーの赤松は移植予定ですが、児童だけでなく近隣住民にも親しみのあった正門周辺の桜(ソメイヨシノ)は諸般の事情により多くの木が伐採を予定されています。幹に「伐採」と書かれた札を下げた桜の木たち。
仕方のないこととはいえ、児童の保護者達も切ない気持ちになっていました。
そんな中「なんとか桜を守るために挿し木でいのちを繋ぐことができないか?」と、保護者の一人がシモキタ園藝部に相談をくださったことから始まったプロジェクトです。

1月28日(日)に行った池之上小学校の桜の穂木の剪定の枝を使って、2月1日(火)に挿し木の授業を行いました。
剪定の様子はこちらをご覧ください


挿し穂をつくって準備

2月1日(火)いよいよ授業当日です。園藝部員は当日8時から開催の「朝活園藝教室」を終えてから小学校に駆けつける予定でしたが、一足先に園藝部員よしじさんが来てくれました。
ご自宅で様々な植物の挿し木にチャレンジし成功しているよしじさんに、挿し木用に剪定していた枝を程よい長さに切って挿し穂をつくる方法を教わりました。
根元は斜めか垂直に切り、芽が2〜5個くらいついている長さに切ります。枝は細過ぎず太過ぎず、花芽がたくさんついたものは挿し穂には向かないので除きます。

朝9時前から集合してお手伝いしてくださった保護者のみなさんのお力も借りて、たくさんの挿し穂を準備しました。

メネデール100倍希釈水に1〜2時間漬けて、授業での出番を待ちます。

児童のみなさんに牛乳パックやヨーグルトの空き容器などをもって来ていただき、底に穴を開けて育苗ポットとしてリユース。保護者の方々が手際良く加工してくださり、あっという間に準備が出来ました。

挿し木の説明

挿し木の授業は3年生に参加してもらいました。池之上小学校の児童は現在北沢4丁目の仮校舎に登校していますが、3年生は建て替え前の校舎を学び舎として使った最後の学年です。「入学式の時に桜のところで写真を撮った!」という児童もいました。園藝部からはマメシバさん、よしじさん、のりかさん、ともみさん、なぁさん、ゆみこすが参加しました。

園藝部プロ部員でもある庭師のマメシバさんから”挿し木”、”接ぎ木”の説明を資料や写真を見せてもらいながらお話を聞きました。

  • 枝を土に挿して増やす挿し木という方法がある

  • ソメイヨシノは挿し木で増やすことはかなり難しい

  • 挿し木の他に接ぎ木という方法もある
    難しく豊富な経験が必要な技術のため、池之上小学校の桜は専門家(矢澤ナーセリーさん)に接ぎ木をお願いした

さて、挿し木という技術はどうやって生まれたのでしょう?発祥となった年代や地域ははっきりとはわかっていないそうですが、古代ギリシアではすでに行われていて、古くから経験的に知られていたようです。マメシバさんがその実例となるような写真を見せてくれました。

バイオネストの支柱が結果「挿し木」になった例
挿し木で育ち花を咲かせたバラ

そして、挿し木で育ったものがその後どうなるかの例としてバラの花が咲いた写真を見せると、子どもたちは目を輝かせて、やる気充分!いよいよ実践です。ここからは先生役をよしじさんにバトンタッチ。

挿し木をやってみよう!

牛乳パックやヨーグルトの容器の底に穴をあけた育苗ポットに土(挿し木用)を入れます。指で穴をあけて挿し穂を挿します。

入念に枝を選ぶ子、ポットいっぱいにたくさん挿す子、優しくそっと土を抑えて大事そうに枝を挿す子、それぞれ思い思いに自分のポットに挿し木をしました。

その後、のりかさんがソメイヨシノで染色された布や糸を見せてくれました。
桜の枝を煮出すことで、綿や絹や羊毛がこんなに鮮やかな「桜色」に染まることに、子どもたちだけでなく授業を見守ってくださった先生や保護者の方々からも感嘆の声が上がっていました。挿し木が成功しなくても、桜のいのちを別の形で残せるということを学びました。「植物の恵みを余すことなく活かす」というのはシモキタ園藝部のポリシーでもあります。

あっという間の45分でしたが、最後に児童のみなさんが「ありがとうございました!」と感謝の気持ちを元気に伝えてくれました。
中には、もっとやってみたいと昼休みに来てくれた子たちもいました。マメシバさんが用意していた挿し木が成功しやすいモッコウバラ、トキワマンサク、ロウバイ、ギンバイカ(マートル)などの枝も挿して嬉しそうでした。

挿し木が成功しやすい植物も追加で挿しました

成功率が低い挿し木を授業で行った背景

今回の挿し木はもしかしたら、根がつかないかもしれません。何度も言いますがソメイヨシノは挿し木の成功率が低く、伐採のスケジュールもあって挿し木に適した時期でもありませんでした。
そのことは、挿し木授業ができないかと相談してくださった池之上小の保護者であり卒業生でもある福田さんや、個人的に伐採される桜の挿し木を試されていた北村校長先生も承知の上でした。それでも、無駄ではない、何かしら心に残る経験になるのではないかと、この授業を行う決断をしてくださったと思います。園藝部もその思いに対し、挿し木が全部ダメだったとしても、専門家に接ぎ木を依頼すること、桜の枝で染色ができることなどを示すことで、残念な気持ちだけを残さないように授業を行いました。
そもそも自然は人間の思うようにはならないものです。挿し木に失敗したり、他の植物で試してみたり、子どもたちがこの授業をきっかけに何かを感じ取ってくれたら嬉しいです。

最後に、北村校長先生はじめ教職員のみなさん、取りまとめをしてくださったPTAの福田さん、栽培用の容器のご準備や朝早くからお手伝いいただいた保護者のみなさん、そして笑顔で挿し木を楽しんでくれた児童のみなさんにお礼申し上げます。シモキタ園藝部としても貴重な経験となりました。ありがとうございました。

今回、伐採される桜のいのちをつなぎたいと、挿し木や接ぎ木を行いました。しかし、それが成功しても大きく育つまでには長い年月がかかります。私たちが住んでいる街中は山や森などと違い、放っておいて大きな木が育つ場所ではないのです。今この街で大きく育っている木は多くの人が見守ってきた木です。その木々を守りながら、新たに緑を増やし、次の時代につなぎたいとシモキタ園藝部は思っています。


シモキタ園藝部

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