搭乗前日の夕方にタイランドパス。コロナ禍の苦労は平等に降りかかる
プノンペンでのPCR検査。結果が出るのは翌日だった。それまでの時間、プノンペン近郊の村でのPCR結果待ち休暇。カンボジアの村に流れる空気はゆったりとしていたが、いつもスマホに届く情報が気になっていた。カンボジアからタイに向かうことになっていた。PCR検査の結果が出る日の夕方にバンコクに向かうタイスマイル便の予約をとっていた。ところがPCR検査を受ける前日、タイスマイルから1日後の朝便に変更になる通知。急遽、タイ入国に必要なタイランドパスを再申請していた。その申請が通った通知を受けとらないと、タイに入国できなかったのだ。結局、通知がきたのは、出発前日の夕方だった。薄氷を踏むようなカンボジアからタイへのフライト。タイでは1泊の隔離が待っていた。
旅の期間:3月3日~3月4日
※価格等はすべて取材時のものです。
プノンペンからバンコクまでは片道1万円前後から
(旅のデータ)
プノンペンからバンコクに向かった3月、この路線に就航していたのは、タイスマイル、バンコクエアウェイズ、曜日によってタイ・エアアジア、タイ国際航空ぐらいしかなかった。しかしいまは就航便が一気に戻ってきた。直行便はタイ・ベトジェットエア、スカイアンコール航空、タイスマイル、ランメイ航空、バンコクエアウェイズ、タイ国際航空など。乗り継ぎ便になるともっと選択肢が増える。コロナ禍前の状況に戻りつつある。運賃は片道1万円前後から。コロナ禍前より若干、高くなった価格帯だ。
フランスのバケットサンドの換骨奪胎サンド、ヌンパンを買いに市場へ
(sight 1)
PCR検査の結果を受けとる日の朝、村の市場に向かった。規模は大きくないが、野菜や魚、肉が並び、その奥に座る女性がハエを追い払っている姿を見るとなぜかほっとする。アジアにきたな⋯⋯感に包まれる。村の市場は朝が早い。僕が訪ねたのは8時頃だったが、ピークはすぎていた。
(sight 2)
市場は肉類より魚のほうが充実していた。訪ねたのはコンポンチュナン州の村だった。プノンペンとトンレサップ湖の間にある州である。市場に並んでいる魚はトンレサップ湖で獲れたもの? トンレサップ湖は不思議な湖で、淡水化した海の魚が数多く生息している。研究対象にしている魚類専門家も多いとか。市場のおばちゃんからは、「だからなんなの?」といわれそうな話ですが。
(sight 3)
市場にきた目的は朝食を買うこと。ベトナムでバインミーと呼ばれるフランスパンのサンドイッチは、カンボジアでは俗にヌンパンという。ベトナムに比べると、やや甘く仕あげた肉に野菜を挟むことが多い。パンは持ち込んだフランス人なら絶対に嘆くしっとり系。具もカンボジア風味。フランスのバケットサンドは換骨奪胎。形だけが残っている。
航空会社とタイランドパスは通じている?
(sight 4)
村を昼すぎに出発。プノンペンの国立公衆衛生研究所へ。ここは24時間、予約なしで受け付けているので、入口付近にはいつも人がいる。バイクやトゥクトゥクも停まっている。検体をとるときはかなり待たされたが、受けとりは? フライトが変更前の夕方便なら気になるところだが、便は翌朝に変更されていた。のんびり研究所の通路を進んだ。
(sight 5)
PCR検査の結果を受けとった。支払いもすんでいたので、受けとりはいたってスムーズ。これまで何回もPCR検査を受けてきた。陽性だったらどういうことになるんだろう、といつも不安が心をよぎる。書類にはnegativeの文字。つまり陰性。なんだかそれが当たり前のようになってきてしまった。
(sight 6)
夕方、申請していたタイランドパスが通った通知がメールで届いた。これでタイへ行ける。申請から24時間。本来は7日から10日かかるといわれる審査なのだが。便を変更したのはタイの航空会社。審査するのもタイ。なにか通じているような気がしなくもない。届いた通知をプリント。PCR検査の陰性証明、1泊隔離ホテルのバウチャー、タイランドパス、航空券の記録。これで飛行機に乗れるはず。
ターミナル前のフードコートは閉まっていた
(sight 7)
用意した書類を鞄に入れ、朝、空港へ。コロナ禍前に比べれば、ターミナルビル入口で待つ人は少なかった。一時は利用客がほとんどいなかったようだ。その時期に比べれば、少しずつ人が戻ってきたという感じだった。でも、空気は閑散。カンボジアは入国規制を大幅に緩和したが、その効果がでるには、もう少し先?
(sight 8)
空港ターミナル前のフードコート。ターミナル内の飲食店は高いので、よくここで食事をとった。しかしそのエリアはまだ閉まっていた。客が次々にやってくるのはまだ先と読んでいるのだろう。こういう光景を目にすると、やはり気分は落ち込む。ターミナル内の店もどうなっているのだろうか。その光景はsight10で。
(sight 9)
ターミナルに入り、チェックインカウンターへ。その前にこんなに人が列をつくっているとは。少し戸惑ってしまった。ちょうど同じ時間帯に、シンガポールやホーチミンシティに向かう便があった。この「密」は瞬間的なことだったことを免税店エリアや乗り込んだ飛行機で知ることになる。その様子は次に。
免税店エリア、そして機内で2度の膝カックン
(sight 10)
チェックインには時間がかかった。スタッフは僕が提出した書類を、なめるように綿密にチェックした。いつもは笑顔をつくっていた人たちなのだが。無事チェックイン。出国審査もすませ、免税店エリアに。そこで膝カックン。店は開いているのだが、客がいない。僕はカンボジアのコーヒーを買おうとした。ところが店員がいない。この状態じゃしかたないか。
(sight 11)
バンコクに向かうタイスマイルの機内の乗り込んで、またしても膝カックン。こんなに乗客が少なかったのか。前日の夕方便を今日の朝便に変更したのも、あまりに乗客が少なかったためなのだろう。航空会社も苦労が絶えない。フライト変更で僕も苦労した。コロナ禍の苦労は平等に降りかかる。
機内で配られるカードににじむタイ入国の混乱
(sight 12)
タイに向かう機内で、入国カード以外にこんな書類が配られた。内容は簡単で、どんな状態で入国するのかという確認の意味のようなものだった。タイへの入国ルールは月単位で変わっていく。乗客も戸惑うが、チェックする空港のスタッフも混乱。少しでも整理したい。そんな苦労がにじみ出るような書類に映った。
(sight 13)
バンコクのスワンナプーム空港に到着。入国書類をチェックするために待ち時間がある。待機用の椅子が通路にずらーと並べられている。コロナ禍のタイ入国はこれで3回目。僕にしたら見慣れた光景だが、はじめての人は、「なんなの?」と思うはず。なんだかコロナ禍の入国に慣れてしまった感はちょっと複雑。
指紋読みとり機の性能があがってくれればいいのだが
(sight 14)
タイに入国する人は、規制緩和で増えてきたとはいえ、まだコロナ禍前にはほど遠い。イミグレーションのブースも、以前より少なくても対応できてしまう。その期間を使って、イミグレーション施設の改修が進められていた。僕の指は、イミグレーションの指紋読みとり機になかなか反応せず、これまでも苦労した。後ろに並ぶ人から文句をいわれたこともある。それが改善されればいいが。
(sight 15)
荷物を受けとり、到着ロビーに。ここで隔離ホテルに向かう車を待つ。まだ多くないとはいえ、入国規制の緩和で、車の手配も一気に増えた。ボードを見てください。隔離ホテルの案内がぎっしり。ここから自分の行き先を探す? 心配しないでください。係員にホテルのバウチャーを見せ、ぼんやり待っていると呼んでくれます。ちょっと時間はかかるかもしれませんが、もうタイに入国したという気分で待機を⋯⋯。
【次号予告】次回は5月20日。毎週金曜日の公開です。隔離ホテル、そしてオミクロン株に揺れるバンコクを。
新しい構造をめざしています。