高速道路から富士山が見えた。家族旅行の帰り道、全員が顔を上げた。透き通った秋晴れの中、富士山は凛と佇んでいた。 父親が「富士山が見えるよ」と言った瞬間、僕は持参した一眼レフカメラを慌てて構えた。家に帰れば、丁寧にレタッチを施し、思い出を形にするつもりだ。富士山は、頂上から裾野までが美しい円錐形状をしており、どんな時でもその景色は目を引く。ピントを確認し、絶好の瞬間を待った。 その瞬間、2年前に訪れたオルゴールの美術館を思い出したが、じっくりと回想する時間はなかった。僕はた
3階と迷路みたいな美術館 2023年の1月、一人暮らしのための賃貸物件を探していた中で、目を引く物件に出会った。それは50年前のボロアパートをリノベーションしたユニークな空間だった。内装の白とモダンクラシックな室内に魅了され、内見も順調だったため、即決で契約した。貯金を考えていたけれど、この魅力には抗えなかったのだ。 部屋は2階の角部屋。引越し荷物を中に入れ来る新生活に心を躍らせていた。 まだまだ準備しないといけないことは多そうだ。 次の日、たまたま引越しの話が職場で上
邦楽と六本木の美術館 ラジオから流れてきた曲に目が覚めた。 遅くまで飲んでいて、また終電を逃してタクシーに乗った。もうこんな生活やめた方がいいと毎日言い聞かせている。しかし、なかなかやめられない。タクシーは環七通りに入った。 曲は、ヒグチアイの「東京にて」。タイトル通り、東京について歌った邦楽らしさ全開の曲だった。情緒的な歌詞としっとりしたテンポが刺さった。 その時、ふと3年前に訪れた森美術館を思い出した。 自販機で買ったポカリスエット軽く飲み、目を閉じて当時の記憶をたど
深夜3時と美術島 深夜3時に目が覚めた。部屋は一面にわたって真っ暗で、外も深い静寂に包まれていた。 最近、引越したばかりの23平米の小さな部屋。まだ、ここで生活している実感が薄い。 部屋には延々と響き渡るエアコンの微かなブーンという音。換気扇のボタンには赤い光が微弱に点滅している。wi-fiのルーターは、エメラルドグリーンの光でゆっくりと点滅し続けている。窓からはわずかに光が漏れている。 深夜だからこそ、暗闇と静寂が生活の中で見過ごしていた微細な出来事を浮き彫りにする。
突風と湖の美術館 突風で帽子が飛ばされた。 去年、UNIQLOで購入したキースヘリングの紺の帽子は大のお気に入り。 ドブにでも落ちてしまったらひとたまりもない。 出勤中、小さな商店街通りでのハプニング、ついてない日だ。 早急に相棒を救い出し、また飛ばされないようにといつもより深く被る。 その時、ふと2年前に訪れた美術館を思い出した。 帽子が飛ばされて、美術館を思い出すなんて変かもしれないが、実は似たようなハプニングを体験していた。何事もなかったかのようにスタスタ歩きながら
はじめまして、ハヤタ(@x_smhy)と申します。 普段は、都内でデザインなどをしています。 今回、趣味で書き溜めていた文章をせっかくなら公開しようと思い、noteに登録をしました。 何卒、よろしくお願い致します。