回想する美術館_04
3階と迷路みたいな美術館
2023年の1月、一人暮らしのための賃貸物件を探していた中で、目を引く物件に出会った。それは50年前のボロアパートをリノベーションしたユニークな空間だった。内装の白とモダンクラシックな室内に魅了され、内見も順調だったため、即決で契約した。貯金を考えていたけれど、この魅力には抗えなかったのだ。
部屋は2階の角部屋。引越し荷物を中に入れ来る新生活に心を躍らせていた。
まだまだ準備しないといけないことは多そうだ。
次の日、たまたま引越しの話が職場で上がった。
不動産のサイトを開き、上司がふと声を漏らす。
「3階の部屋、奈良美智さんの作品みたい」
僕は、食い入るようにモニターを見つめ直した。
その時、去年の7月に訪れた青森県立美術館を思い出した。
「本当だ!」
確かにそうだ。このマンションの3階の空間構成は衣食住をする生活の場と言うより、アート作品に近い。具体的には、部屋の中にまた小さな部屋が存在しているのだ。
奈良美智さんの空間作品を見たことがある人なら、きっとピンとくる。いやな言い方かもしれないが、分からない人は全然分からないはずだ。
帰宅後、すぐに青森の時の写真を見返した。友人のしょうもない立ち絵から、旅館の料理、自然風景、撮りとめた写真がザクザク出てくる。やっとの思いで、奈良美智さんの作品を見つけ出し、当時の記憶を辿っていった。
青森県立美術館は、豊かな自然に囲まれた美術館で、三内丸山遺跡のまるで迷路のような構造を美術の空間に落とし込んでいるのが大きな特徴だ。実際、美術館に訪れると地図を見ないと自身がどこにいるか分からなくなりそうだった。館内には、先ほども触れた通り、奈良美智さんの作品が常設されており、迷路のような空間内にある彼の世界は異空間に来たかのような、圧倒的な存在感を放っていた。
特に、あおもり犬は圧巻だったのを覚えている。
青森県立美術館は、もう一度訪れたい美術館のうちの1つだ。
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