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清水慎一自叙伝【6】お菓子が面白くなってきた

幸い、一年目にスイッチが入りなんとかこの業界で生きていこうと踏み止まれたのですが、そのスイッチの入り方がまた極端で…まだ何も出来ない内から「3年後にフランスに行く!」と決めて仕事に打ち込んでいました。

病的に不器用だったので、とにかく技術練習も量をこなして、お菓子の本を読み漁り、勤務先の材料を勝手に使って色んなものを試作しました…(当時の社長、すみません…!)

時間はかかりましたが、少しずつ色んなことが理解できるようになり、段々お菓子作りが楽しくなってきました。

中でも、一番苦労したのが『マカロン』。何回やってもうまくいかずに、とにかく余った卵白を使いまくって、毎日のようにマカロンを焼きました。

お菓子屋さんは、カスタードクリームを炊けば炊くほど卵白があまります。これはあるあるるだと思うのですが、余った卵白がもったいないので有効活用のために作るお菓子が、
・ダックワーズ
・マカロン
・メレンゲクッキー
・フィナンシェ
だったりします…

このときの毎日の卵白との格闘が、今の自分の『絶対に失敗しないメレンゲの立て方』につながっているので、間違いなく力のついた経験でした。

当時、自分が仕事をしながらいつも思っていたことは、【来年入ってくる後輩に聞かれたことにわかりやすく答えてあげられること】でした。

一年目の僕は、わからないことがわからなさすぎて、聞きたいことがあるのに質問もできずにとにかく自分で勉強するしかなかったので、自分が先輩になったときには理路整然と答えられるように、後輩が僕と同じように苦しまないようにと、そればかり考えていました。

結局、それは何かを覚えるときにはとても大切なプロセスで、『インプットとアウトプットを同時にできるようにする』ということです。

覚えるときに、教えることを想定しながら覚えるんです。
人に説明するとなると、自分できちんとわかってないとできません。感覚も大事ですが、その感覚を言葉にしたり数字にしたりすることで、自分もわかりやすいし、教わる人にもわさりやすくなるのです。

基礎的なことがわかるようになると、お菓子作りが本当に楽しくなってきました。

コンクールに出品したり、他のお店巡りをしたりすることでどんどんハマっていきました。

メレンゲも苦手だったのですが、その次に苦手だったのがチョコレートのテンパリングです。

でも、フランスに行くことを決めていたので、テンパリングも出来ないヤツがフランスに行くのはさすがにダサいと思って、テンパリングも、先輩たちを早く帰らせた後に、何回も何回もやりました。

今では、メレンゲとテンパリングは、絶対に失敗しないし、むしろ得意なテクニックになりました。

苦手なことから逃げずにとにかくやること。量をこなすこと。

何か新しいことをやるときには、今でもそれが自分の信条になっています。

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