『ジーンブライド』、社会の生きづらさと遺伝子SFが両立する漫画
サイエンスライターらしく、サイエンスに関する本を紹介する連載というかマガジンです。今回ご紹介するのは、高野ひと深さんの『ジーンブライド』(祥伝社)です。
タイトルはおそらくジューンブライドをもじったもので、ジーン(gene)とは遺伝子です。なんだこのタイトルは?ということで読み始めました。厳密にいうと、当時日向坂46で活動していた宮田愛萌さんがブログで紹介していたのがきっかけです。
ジャンルとしては女性向け漫画で、社会の中での生きづらさが中心に描かれています。主人公はエンタメ系メディアの30歳の女性ライターで、男性の映画監督にインタビューして次に会ったときにはスカートの柄しか覚えていなかったとか、性的な視線を浴びるとか、彼女曰く「毎日新鮮にゼツボー」しています。
そんな中、彼女を訪ねてきたのが中学のときの同級生と名乗る男性。2人の共通点が、中学校のイベントである「ジーンブライド」でペアになったというわけ。
この男性、明確に言葉は出てこないけどADHDに近い気質をもっているようで、やや落ち着きのない性格です。一方的に話を続ける、何かが手元にないだけで慌ててしまう、など……。その彼が、彼なりに主人公の女性の生きづらさを理解しようとしているところが男性にもぜひ読んでほしいところ。僕もこの男性に近い気質があるので、この男性の生きづらさに理解できるところがあります。
女性の生きづらさ、そしてADHDを含む発達障害者の生きづらさを描いた作品が『ジーンブライド』です、という書評になります……1巻のラスト2ページまでは。
1巻の最後のページで意外な人物と出会い、なんとそこからSFになります。次巻予告に「本当の、幕が上がる」とあるように、1巻のラストからこの作品の本当の物語が始まります。
実は1巻の中にも、「霧」や「内部生」といった不自然なキーワードが度々出てきます。では、2人が出会った「ジーンブライド」とは何なのか。生きづらさを描きつつも、SFとしてのミステリもあり、いろんな角度から心がざわつく作品です。ジーン(遺伝子)という単語があるように、サイエンスの要素も含んでいるので、その点もおすすめできます。むしろ個人的には、こうやってアレを物語として組み込むアイデアがあったのかと感心しました。
第1話は無料で公開されています。
作品は、先日発売された4巻で完結したので、すぐに全部読めるかと思います。なお、目次にも書いてあるけど、本作品には性暴力被害に関する描写があるので、精神的なストレスを感じられる可能性がある場合には閲覧をお控えください。
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