全国の病院一覧を公表する厚生労働省の出先機関「地方厚生局」はどんな機関?
全国の病院一覧は、厚生労働省の公式ホームページに公開されているものと、厚労省の出先機関である各都道府県の地方厚生局のホームページで公開されているものがあります。
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ところで、この「地方厚生局」とはどんな組織かご存知でしょうか?
地方厚生局がどのような立場で、どのような業務に従事しているのかを知ることは医療行政の全体像を理解するのに役立ちます。医療行政に詳しくなることで、病院やクリニック、歯科クリニック、調剤薬局がどのようなルールの中で運営されているか想像できるようになりますので、企業の営業担当者のレベルアップにもつながるでしょう。
そこで、本記事では、一般の人には馴染みのない地方厚生局の役割を紹介します。
地方厚生局にはビジネスに役立つ病院データが沢山集まっています。
私たち企業人も医療人の一人として、医療機関のことをさらに理解して活動していけると良いですね。
病院一覧データは2か所で公表されている
地方厚生局の詳しい話をする前に、整理しておくべきことがあります。
知っているよという方は、読み飛ばして、次の章から読んで頂ければOKです。
企業の皆さんが病院や介護施設をリストアップする際、ウェブサイトでデータを検索して入手することができますが、そのデータには都道府県などの自治体が公表しているものと地方厚生局が公表しているもの、の2つがありますのでこれは明確に押さえておきたい知識です。
介護施設一覧データも公表されている厚生労働省のホームページ
ちなみに、介護施設リストを作成する場合は、厚生労働省が運営している検索サイトがおすすめです。この検索サイトは介護保険法の規定に基づき、介護サービス情報公表制度のもとで運営されているもので、全国の介護サービス事業所の詳細情報を、インターネットで自由に検索・閲覧できるシステムです。
このシステムは、利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討して適切に選ぶための情報を都道府県及び指定都市が提供しているため、非常に細かいデータが収載されています。
▼厚労省の介護施設検索サイトはこちら
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
病院一覧データが公表されている厚生労働省のホームページ
そして、病院や医科クリニック、歯科クリニック、調剤薬局の検索サイトも厚労省のホームページに紹介されています。
これも介護施設と似たような制度で、医療機能情報提供制度に基づき、住民・患者による医療機関の適切な選択を支援することを目的として、平成18年の第五次医療法改正により導入されたものです。
それぞれの病院は、自院の医療機能を都道府県知事へ報告が義務づけられています。それとともに、報告を受けた都道府県知事はその情報を住民・患者に対して提供することになっています。
介護施設は介護法のもとで、医療機関は医療法のもとで行っているサービスのため、似ていますが同じ制度ではありません。細かな違いがあるのでわかりづらいところですね。
▼厚労省の病院検索サイトはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html
保険診療を行う病院一覧データが公表されている地方厚生局のホームページ
前述したように、これらの検索サイトは情報提供制度に基づいて病院やクリニック等が都道府県にデータを提出するものです。
一方、地方厚生局が国民に公表している病院、クリニック等のデータは、病院等が国民皆保険制度を利用して医療サービスを行うときに提出するデータです。この2つも、似ているようで全く目的が異なるものです。
病院を例にとると、病院で患者が医療保険を利用できるようにするためには、あらかじめ病院が地方厚生局に申請しなければなりません。病院を新しく設立した時は地方厚生局に申請し、受理され、審査を経て、保険医療機関として認められると、その病院が保険医療サービスを国民に提供できるようになります。
このように、地方厚生局から公表されている病院データ一覧は、保険医療機関として認められた病院や医科クリニック、歯科クリニック、調剤薬局の一覧であり、都道府県自治体が公表している病院データと地方厚生局が公表しているデータでは、提出する書類や記入する項目が異なるため、公表される項目も異なります。
やや細かい話になりましたが、結論としては、世の中に公表されている信頼できそうな病院リストは少なくとも2種類あり、あなたが必要と思う項目がこの2種類のリストにまたがっている可能性があるため、厚労省の病院検索サイトだけでなく、厚生局のデータも合わせてみていく必要がある、ということになります。
地方厚生局は全国に存在する厚生労働省の出先機関
次に、本記事の本題である地方厚生局を解説します。
地方厚生局は厚生労働省の出先機関として、ブロック地域単位で全国に7局1支局が設置されている厚生行政の「政策実施」を担当している部署です。
地方厚生局の沿革
地方厚生局は平成13年(2001年)1月に、厚生省と労働省が統合し厚生労働省が設置されたと同時に、従来からあった地方医務局と地区麻薬取締官事務所を統合して、全国に設置されました。
平成20年(2008年)10月からは、それまで地方社会保険事務局が担っていた保険医療機関等に関する指導や監督の事務が地方厚生局に移管され、指導部門が設置されました。
また、平成22年(2010年)1月には、社会保険庁の廃止によって、年金関係業務の一部と審査請求業務も担うようになるなど、様々な変遷をたどり、現在に至ります。
地方厚生局の役割
地方厚生局の職員数は拠点ごとに異なります。例えば、関東信越厚生局の場合、1都9県(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、新潟県、長野県)で業務を行っていて、主な業務は「医療」「健康福祉」「年金」「麻薬取締」の4つの業務を実施していて、国民の健康で安心・安全な暮らしを実現するために日夜、働いてくれています。
新型コロナ流行の初期に大きなニュースになってた横浜港のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の検疫業務支援のため、現地対策本部や神奈川県庁等に職員を派遣したりもしています。
地方厚生局の医療分野での役割
ここでは、特に「医療」分野について紹介します。
地方厚生局では、保険医療機関や保険薬局に対する指導・監督を行っています。
医療機関が提供する診療サービスのうち、医療保険制度の対象となる診療を「保険診療」と言い、健康保険証を提示することにより、医療保険を使った診療や調剤を行うことができる厚生労働大臣の指定を受けた医療機関や薬局のことを「保険医療機関」「保険薬局」と言います。
日本では国民皆保険制度が採用されており、患者が保険医療機関を自由に選択し、いつでも、だれでも、全国どこでも、保険医療機関を受診できるようになっています。
この制度によって、患者は一部負担金のみで診療を受けることが可能になっています。
保険診療の3つの要件
医療機関が保険診療を行うには次の3つの要件をクリアしている必要があります。
①保険診療を行う医師(保険医)として登録されている
②保険診療を行う医療機関(保険医療機関として指定されている
③健康保険法などの関係法令や規則など保険診療のルールを順守し、適切な診療を行い、適正な診療報酬の請求を行う
地方厚生局では、この登録や指定の手続きや指導、監督を実施しています。
医師の臨床研修や看護師の特定行為研修をサポート
また医師や歯科医師が適切な医療を習得するための臨床研修に関する事務も行っています。
地方厚生局では、臨床研修を修了した医師や歯科医師への登録証の交付や、医師の臨床研修を実施する病院への補助金交付などのほか、在宅医療の需要拡大に伴い看護師の研修にも力をいれています。特定行為研修実施機関への指導、研修を修了した看護師に関する報告書の受理を実施しています。
再生医療の認可も
さらに、最近増えてきた、これまで有効な治療法のなかった病気の治療に高い期待がされている再生医療の認可も行っていて、「認定再生医療等委員会」の認定や「再生医療等提供計画」の受理、あたらに細胞の培養や加工を行う施設からの新規届け出の審査を行っています。
医薬品や医療機器の違法輸入を監視
国内で販売許可を受けていない医薬品や医療機器の違法輸入を監視し、流入を未然に防止しています。こうしてみると、実に様々な業務を担っているというのが分かります。
まとめ
本記事では、一般の人には馴染みのない地方厚生局の役割を紹介しました。
地方厚生局にはビジネスに役立つ病院データが沢山集まっています。私たち企業人も医療人の一人として、医療機関が置かれている環境をさらに理解することで、企業の営業担当者のレベルアップにもつながるでしょう。
エグゼメディカルは医療業界に特化した営業代行会社として、医療系企業の営業担当者を対象に研修サービスを行っているほか、その経験と知識を活かして全国病院データベースを提供しています。
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