医療業界の営業マンは提案が苦手
韓国ドラマの評価が世界的に高まっている。
韓国は人口が少ないためマーケットサイズも小さい。必然的に世界への輸出を前提にビジネスが組まれる。当然、世界レベルのコンテンツが求められる。そのニーズに応えるための努力を行ってきた結果、韓国は世界で通用するコンテンツ大国へと発展した。一方、日本は海外にドラマを売る発想がなく、国内需要のみに目が向けられるというのは、多くの評論家が解説している。
韓国ドラマの世界的成功は見事だと思う。成功の要因は、視野の広さや目標設定の高さや人材育成に注力したことにある。さらに、海外視聴者の心を掴むために的確な現状分析を行い、問題を明らかにしてその解決策を検討・実行し、そして改善を繰り返すといったPDCAを徹底して行ったに違いない。PDCAは謙虚な挑戦者でなければできない。
挑戦と言えば、日本国内では医療ベンチャーの台頭が目立つようになってきた。日本のビジネスの中で、特に医療分野は国内向けビジネスの典型例だ。医療技術や薬品などが悪用されないよう法律によって守られ“規制ビジネス”の一つになっている。そうした環境はベンチャーからすれば高くて厚い壁であり、老舗企業にとっては城壁に守られた居心地の良い場所かもしれない。しかし、いつまでも安住の地ではないだろう。
私たちが病院の医師にヒアリングしていると「老舗企業の営業担当者は製品説明をするが、提案はしてくれない」と言った苦言が多い。製品の機能や価格は教えてくれるが、医師の課題をどのように解決できるのか、どのように活用すれば患者にメリットがあるのかといった「提案」はしてくれないという。
医療機器メーカーや製薬会社、医療ディーラーの営業マンは、医師のニーズをヒアリングしない人が多い。ヒアリングしてこそ現状分析ができ、解決すべき課題が見つかる。製品説明しかしないのは、製品に自信があるからだろうか。それとも、買うか買わないかは相手が判断するものだと割り切った考えがあるからだろうか。いずれにしてもコミュニケーションが足りていないと思う。
提案とは、営業マンに相手を思う心があってこそできるものだ。日本の病院営業マンには「変えてはいけないもの」と「変えていくべきもの」がある。変えてはいけないものとは日本人が大切にしてきた相手を思う「心」であり、変えていくべきものとは「提案内容」だ。新しい製品や営業方法はこれからもどんどん出てくる。しかし、医師の内なる声に耳を傾け、困っていることを理解し、その解決に寄与したいという、営業マンとしての「心」だけは、これからも絶対に忘れてはならない。