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儒学と僕3 知識の体得

中国の古典は本当に名言が多く、どれをとりあげようか本当に迷います

そこで、迷っていてもしょうがないので、儒学、いや、中国古典界全体でも不動の地位にある『論語』を、最初から取り上げていこうかと思います。もちろん、全部の言葉を一言一句取り上げることは難しいでしょうが、自分がとりあげていきたい箇所を取り上げていきます。

今回の言葉

学びて時に之れを習う、また説ばしからずや
(まなびてときにこれをならう、またよろこばしからずや)

『論語』学而編第1章

ここは、きっと儒学に興味がなくても知っている人は多いはずです。
意味としては

「何か学んで、そのことを機会があるごとに復習していけば、学んだ知識は自分のものとなる。それはなんと喜ばしいことではないか」

となります。ちなみに、一般的な意味は上に書いたことのようになりますが、学派によって解釈が異なっています。何かを学ぶ、という行為自体は同じなのですが、
・朱子の解釈(つまり、朱子学流の解釈)
→漢字の「習」は鳥が何回も空を飛ぶことを意味しているので、そのように何回も学び続けることで善を明らかにし、心を本来の状態に復帰させる。(朱子は性善説をとる)

・江戸時代の学者荻生徂徠の解釈
→朱子のいう学の内容は個々人の心の問題を解決しようとしているが、儒学ではあくまで「先王の道」、聖人がつくった、民を統治する方法を学ぶことが肝心である
(以上、土田健次郎訳注『論語集注』平凡社東洋文庫 より)

なお、孔子は性善説についてはっきりとは論じておらず、性善説について本格的に論じたのはあとの時代の孟子になってからなので、孔子がどういう意図でここの部分を述べたからはわかりませんが、だからこそ解釈の自由があるのです。朱子や荻生徂徠が間違っているということにはならないでしょう。

僕の解釈

今回取り上げた部分は、僕が儒学に興味をもつ前から言葉だけは知っていました。おそらく最初に知ったのは中学の国語の授業とかだったと思います。そういう方はきっと多いでしょう。

そして、この言葉を知ったとき、僕は「うん、うん、間違いない」と心のなかでうなづきました。

みなさんも、こんな経験はないでしょうか。
たとえば、学校の授業で新しい内容に入ったとき、内容についていけずに困ってしまう。もしくは、なんとなくわかったようなわからないような…
 けれど、そのあとゆっくりと復習すると、「そういうことだったのか!」とふと「理解できた喜び」を感じる瞬間。あのときは、まるでその教科を征服したかのような気持ちになって嬉しかったものです(笑)そういうのもあって、この「学びて時に…」の言葉に共感しました。

もちろん、孔子が言っている学問はそういうテスト勉強のような話ではないと思うんですが、やはり古今東西、わからなかったものを理解できたときというのはなんとも言えぬ喜びがあるのでしょう。

しかし、理解できただけではまだスタートラインだと思います。その知識をどう活用し、自分のものにするかが大事です。テスト勉強であれば点数を取れればとりあえずよいですが、自分の生き方といった問題になると自分で答えを見つける必要があります。僕は大学4年となり、テスト勉強のための勉強から解放され、特にそう思うようになりました。
最後に、今回取り上げた部分の僕なりの解釈を記しておきます。

自分はどう生きるべきか、どういう行いをするのが正しいのか」についてしっかりと自分なりの軸をもつために学問を続ける。そして、一度知っておしまいではなく、それを忘れずに心に留めておいて、自分の行動に学んだことを反映させる。そこに喜びを見出していこう

と解釈しています。思えば、僕は日本史を専攻する身ですが、ただ歴史が好きという気持ち以外に、歴史に登場してくる人の生き方を学ぶ、ということを強く意識しています。加えて、このように儒学を学んだり、また仏教を学ぶのも、やはり自分の生き方の軸を整えるため、という意味合いが強いです。

僕は、自分が生活していく上で意識したいことや、体得したい知識をメモ帳に書く習慣がありますが、やはり一日で自分が変わるということはなかなかありません。けれど、毎日そのメモ帳を見ていると、不思議とそのメモ帳が手元になくても自分が大事にしたい考えがすぐに頭の中に浮かんだり、いわゆる「マイル一ル」がすぐに思い出せるようになります。
そしてこの瞬間、僕は学びが体得された感じがしてとても嬉しいです。


この状態になるのは時間がかかりますが、だからこそ達成感があります。

僕は主に日本史や、東洋の思想の知恵でまずは自分の生き方を整えて、そして困っている人を救いたい。そのために、学んだことを忘れないように日々学び続ける。それを思い出させてくれる、

学びて時に之を習う、また説ばしからずや

みなさんも、自分が好きな学問を通じて自分なりの生き方を磨いてみてはいかがでしょう。僕は全然偉そうなことは言えませんが、精進して参ります。


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