
写真集を浴びる
写真を学ぶためにはいろいろな方法があります。方法が多くありすぎて何からはじめたらいいか迷ってしまいます。
基本的に下から積み上げて学んでいく方法が一般的だと思います。
カメラの操作を学ぶ
写真の構図を学ぶ
光の使い方を学ぶ
編集の方法を学ぶ
などなど
逆に、上から学んでいく方法もあります。それはすでに完成された写真集、展示作品を見て学ぶ方法です。風景、街並み、人物、自然など様々なジャンルの作品があります。
さらに横から学ぶ方法もあります。それは写真以外から学ぶことです。映画、詩、庭園、絵画、スポーツ、落語、普段の仕事、育児、学ぼうと思えば何からでも学べます。
下から、上から、横から、三方向を意識すると、広く深くそして早く学べるような気がします。
今回は、上から学ぶことの代表である写真集を見ることについてお話しします。
写真集を見る見ないも自由ですし、見方というのも自由です。これからお話しすることは一つの方法としてご紹介しますが、普通とは違っていると思います。でももしかしたら試してみようと思う人が一人でもいらっしゃるかもしれませんので、書き留めておきます。写真に対してしっかりした考え方をお持ちの方は、自分なりの方法で写真と向き合うことが一番です。
写真集といっても風景や自然動物、人物や街並みなど種類は豊富です。
写真集を見たことがない人のために、どんな写真集から見ればいいかというと、
お勧めは、
まずは写真のジャンルを選ばずに、片っ端から見ていくことです。図書館または写真集がたくさん置いてあるところに行って、一気に100冊見ることです。
ポイントは一日一冊を100日続けるのではなく、また気になった写真集だけを見るのではなく、ジャンルを問わず一日100冊です。ゆっくり見たくても、次々と写真集を浴びるように見るのです。
内容を考える間もなく、次から次へと見ていくと、頭の中が一杯一杯になって、やがて頭の中から写真が溢れ出します。この溢れ出す感覚が大切です。
誰でも自分のキャパ以上の仕事を任されて、頭の中が溢れかえる状態で大きな仕事を乗り切った経験があるはずです。その時、人は驚くほど成長します。
同じように、写真が頭から溢れ出すと、それを取り戻そうとする責任感が働きます。すると責任を果たすために溢れた写真を探し求めることになります。
気になった方は、一日で100冊の写真集を浴びてください。100冊が無理ならとりあえず50冊でも構いません。
きっとこれからの写真生活に大きな影響を与えます。
更に、ここからは自分でも写真集を作ってみたい方とか、今までと違った考え方で写真に向き合ってみたい方に向けたお話しです。
写真集を作ることは、簡単と思えば簡単になり、自分には無理と思えば無理になります。
写真集を浴びたあとは、気になった写真集は購入します。
いつでも見れる本棚に置いておくことによって、自分の指針になります。
目安は、カメラ機材購入費用と同じぐらいです。
10万円のレンズを購入するなら、10万円分の写真集を購入し、
50万円のカメラを購入するなら、50万円分の写真集を購入するのです。
写真集ではなくても、同じだけ作品を見ることに費やすという意味です。
なぜかというと、バランスを保つためです。
身体も栄養バランスが崩れると、体調を崩します。お菓子が好きだからといってお菓子ばかり食べているわけにはいきません。
そして、写真集を見て、全く意味がわからないこともあります。その経験も重要です。「こんな写真なら自分でも撮れる」そう感じることもあるでしょう。でも、その写真集がなぜ日本中でまた世界で愛されているか、それは10年後、20年後にわかるかもしれません。今わからなくても、一回見ておくことによって、ずっと頭の中で疑問を持ち続けることになります。正直、気持ちのいいものではありません。ずっと何かが引っ掛かっている感じになります。その重要性に関して、説明してくれる本があります。
日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ 森下 典子(著)
「日日是好日」を読むことによって、意味がわからなくてもとりあえず見ることの大切さがわかります。そして写真を続けていれば、ある日突然ストンと腑に落ちる瞬間が現れると思います。それははじめから解説を読んで頭で理解するのとは違い、身体全体で納得する感じです。
それと写真集を手元に置いておくことのもう一つの理由は、
「悔しい思い」「嫉妬する思い」を胸に刻んでおくためです。写真集を見て感動するのは、自分の世界と全く違う分野に見られる傾向のような気がします。でも自分が撮る写真に近い分野なら、「感動」ではなく「嫉妬」を感じるはずです。その作品を乗り越えようという気持ちが働きます。
更に写真集用の本棚を作ることをお勧めします。その本棚に自分の写真集が並ぶ日を想像するのです。難しく考えずに、まずは一冊フォトブックを作って並べてみてはいかがでしょうか。たぶん、写真の景色が変わります。