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<フィルムカメラ>露出計を手放して、勘で露出を決める

今から50年以上前のフィルムカメラにはだいたい露出計が付いていません。そのため、適正な明るさの写真を撮るためには、露出計を持ち歩くか、カメラに取り付けるか、スマホアプリの露出計を使うか、あとは自分の勘を頼りにするか、いずれかになります。勘で露出を決めれるようになると、撮影スピードが圧倒的に早くなり自由が手に入ります。その結果、写真が変わります。

この記事では、私が露出計を手放すまでの道のりを、順を追って解説していきます。これからフィルムカメラに挑戦してみようとしている方、露出計に縛られたくない方、露出計が壊れて困っている方、よろしければお付き合いください。


機械式フィルムカメラは、電池バッテリーがありませんが、フィルムを巻き上げてシャッターボタンを押せば、とりあえずは写ります。しかし露出計が付いていないカメラの場合、自分で、絞り、シャッタースピード、フィルム感度を決めなければなりません。露出が合っていない場合は、写真が真っ黒になったり、真っ白になったりします。

デジタルカメラしか使ったことがなかった私は、はじめどうやって露出を決めたらいいのか戸惑いました。フィルム1本目、私はフィルムカメラと一緒にデジカメを持ち歩いていました。デジカメの感度をフィルムと同じ400に設定し、絞りとシャッタースピードをあれやこれやと動かしていました。

でもフィルム1本分の撮影を終わる頃には露出のことで頭がいっぱいになり疲れてしまいました。「面倒なカメラを買ってしまったなー」正直、フィルムカメラを買ったことを後悔しそうになりました。でも乗りかかった船です。「これが使いこなせるようになったら楽しいだろうなー」と気持ちに切り替えました。

デジタルカメラを持ち歩くことに疲れた私は、次に何種類か露出設定を紙に書いて持ち歩く方法に変えました。これならメモ用紙一枚をポケットに入れておけば済みます。

露出の目安


<感度400>

晴れ    F16   1/250(F8 1/1000)
曇り    F11    1/250
雨、日影  F5.6  1/250
夕暮れ順光 F4  1/125
室内窓際  F5.6  1/60
室内    F2     1/60(F3.5 1/20)
暗めの室内 F2     1/30

昼の屋外では、
シャッタースピード1/250に固定して、露出を絞り16〜4の間で調整

夕方夕暮れは、(車のライトが自動でつきはじめる時間帯)
シャッタースピード1/125に固定して、露出を絞り4〜2の間で調整

室内では、
シャッタースピード1/60に固定して、露出を絞り5.6〜2の間で調整

補足
空、雲をメインに撮りたい場合は、全体に1段絞り
路地など建物や塀に囲まれた場所では1段開け
厚い雲に覆われ空が暗い時は1段開け
夕暮れ時の日影や逆光では2段開け
夜スナップはF2固定 1/60〜1/10で調整


私なりの感覚を書いてみました。
フィルム感度100の場合や、開放F値が2.8、3.5の場合は調整が必要です。
ベテランの方なら自分なりの露出が頭に入っていると思います。風景を撮影したり、リバーサルフィルムで撮影したり、絶対に露出を外したくない場合は、しっかり露出計を確認したほうがいいでしょう。慣れるまでは、フィルム感度を固定するほうが、頭の中が整理されて、感覚が掴みやすいと思います。慣れてくれば、自分なりにアレンジして表現することができます。

室内の場合は、一度自宅のリビングや食卓できっちり露出を確認し、自宅より明るい、暗いを判断して露出を決めればいいと思います。因みに我が家はF2、SS1/30、ちょっと暗めの部屋です。

また人それぞれ感覚や基準が違いますので、自分流の露出を見つけるのが理想です。特に夕暮れ時は、光の強さが刻々と変化するので難しいところです。それに曇りといっても薄曇りや空が真っ黒な曇りがありますし、日影によっても上が開けている場合と蓋されている場合でも違います。そのあたりは臨機応変に対応しなければなりません。

それでも、この紙に書いた目安を見ながらフィルム10本ぐらい撮影すると、なんとなく露出の感覚が掴めてきました。フィルムはハイライトに強いので、迷ったら明るいほうを選べば間違いないと思います。

適当な感覚、勘で露出を決める方法

それから、いちいち紙を見るのも面倒になり、適当な感覚で露出を決めるようになりました。勘露出とも言います。はじめは不安です。「本当にこれで写っているのだろうか?」ちょっと怖くなります。

私は慣れないうちは撮影は抜きにして「ここは1/250 F5.6、こっちは1/60 2.8」と予想しながら、露出計やデジタルカメラで答え合わせをして、勘を磨いていきました。

もしこれから勘で露出を決めようとする場合は、できれば1本のフィルムを最後まで勘で撮影することをお勧めします。勘で露出を決めたり露出計に頼ったりすると、どの写真が勘露出でどの写真が露出計を使ったか分からなくなり、結局また露出計に頼ってしまいます。フィルム1本最後まで勘露出を貫くと、あとで見直したときに、自分の癖、弱点が見えてきます。「全体に室内では暗い」とか「いつも空が飛んでいる」とか、それが分かれば次のフィルムの時に調整できます。

露出計を見ずに撮影するのが怖いからといって、いつも露出計に頼っていれば、いつまでも露出計を手放すことができません。自転車もいつかは補助輪を外したいものです。カーブの時だけ補助輪を付けていたら、結局ずっと補助輪が手放せなくなります。「露出計が格好いい」「露出計を見るのが楽しい」というのなら、それを続けることがいいと思いますが、私はできるだけ考えることを減らし、カメラを軽くし、被写体と向き合いたいと思っています。

露出計を手放すメリット

露出計を見ずに撮影することができるようになると、撮影時間が圧倒的に短縮され、心も体も自由になれます。自信がなくても案外写っているものです。「なーんだ、やればできるじゃないか」気持ちが楽になり、自由が手に入ります。自転車から補助輪を外した気分になれます。そして何より撮影が楽しくなります。そしてフィルムカメラを使いこなしている感覚になり自信がもてます。これが大切です。それに伴い、被写体に集中することができます。

特にスナップ写真の場合、シャッターチャンスは急に現れます。露出を合わせ、いつでもシャッターを切れる状態にしておくことで、瞬間を掴みやすいです。また人物を撮影する場合も、あらかじめ露出設定を終わらせておいて、コミュニケーションを取りながら、テンポよく撮影したいものです。

晴れた日の基本設定
F16 SS1/250 ISO400


室内から窓枠を入れて外の風景を撮りたい場面もあります。そんな時、スマホやデジカメでは自動で室内の明るさに合わせてしまい、外の風景が飛んでしまいがちです。自分で露出を決めるなら、はじめから外の天候に合わせて露出を設定しておくと何にも問題はありません。

曇り
F11 SS1/250 ISO400

また勘で露出が決めれるようになると、フィルムカメラに内蔵されている露出計が壊れたとしても安心です。内蔵されている露出計は、部品がすでに製造中止になり修理が困難です。中途半端に動く露出計なら電池を外して、自分で露出を決めるほうが正確だと思います。もっと言えば、正常に動く露出計だとしても、「もっと明るく」「もっと暗く」と指示されるのが嫌な場合は、電池を外して自分で決めることもできるようになります。慣れてくると、一瞬でも露出計に気を取られるのが面倒に感じます。

勘露出をマスターすれば露出計が故障したフィルムカメラ
(ローライ35)でも、問題なく自信を持って撮影できる


そしてレンジファインダーカメラでは、ある程度絞り込むと、目測を使ってだいたいでピントを決めることもできるます。さらにピントノブの位置でおよその距離を決めることもできます。被写体にカメラを向けた時には、ただシャッターを押すだけの状態です。そうなれば最新のデジタルカメラにも負けない、またはそれ以上の最強スナップカメラになります。

そんな偉そうなことを言っているものの、確かに外すことはあります。それを失敗と捉えるか、新たな発見と捉えるか。私の場合、露出を大外しした写真や大ブレした写真を見ると「おーなんだこれは」と注目してしまいます。そこから何か新しいものが生まれる予感がします。勘露出はそんなところまで導いてくれます。

最短で勘露出をマスターするために

できるだけフィルム感度(400)、シャッタースピード(外1/250、室内1/60)を一定にすることです。数字にこだわる必要はありません。開放F値が3.5であれば室内はシャッタースピード1/30固定でもいいでしょう。あれやこれや変えると、露出をマスターするのに時間がかかり、ずっと露出計に頼ることになります。その結果、写真を撮るのが億劫になり、徐々にフィルムカメラから離れてしまいます。NDフィルターを付けて絞り開放にして背景をボカして撮りたい気持ちは分かります。それはカメラの操作や勘露出をマスターしてからでも遅くはありません。まずは露出計を手放すことです。

補助輪を付けた自転車と外した自転車では、見える景色が違います。
同じように、露出計を手放すことができれば、見える景色が変わり写真も変わります。

気になった方は挑戦してみてください。



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