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チラ見せの美学、色気のある写真

全部を見せずにチラッと見せる、これこそ好奇心をそそられます。
映画の予告編や着物の着付け、日本庭園の設計から絶対領域まで、まさにチラ見せの美学です。

世阿弥が風姿花伝に「秘すれば花」と書いています。これも同じで、一部分を隠して全てを表現しないことで、見る人の想像力を掻き立てるという意味です。

チラ見せは、日本文化において非常に重要な概念です。茶道の茶室や日本庭園では、訪れる人に完全な景色を一度に見せることは少なく、歩くにつれて新しい景色が次々と現れるように設計されています。これにより、自然の美しさを段階的に体験し、より深い感動を得ることができます。

俳句や短歌といった日本の詩歌も、チラ見せの美学が色濃く反映されています。限られた文字数で多くを語らず、余白の中に含まれる意味や情景を読者が想像する余地を残します。

他には、日本建築と間、能や歌舞伎などの伝統芸能も、すべてを明示せず、観客の想像力を刺激する演出を多く取り入れています。

好奇心を刺激し、ミステリアスな魅力を作り出し、想像力を喚起することで、人々の興味を引きつける強力な手段です。視覚的なバランスや物語性を強化することで、作品全体がより魅力的で深みのあるものとなります。

要するに、全部見せたらそれで終わり、それ以上想像する余地がないのです。チラッと見せることによって、「もっと見たい」という気持ちを刺激します。

写真で言うと、土門拳が撮影する仏像は全てを写さずに、その仏像の最も魅力的な部分を切り取っています。まさにチラ見せの美学です。


この強力なチラ見せの手法を、普段の撮影にも使いたいところです。


桜の写真をドーン
紫陽花の写真をドーン
紅葉の写真をドーン

目立つことが最優先のSNSや広告に多い撮り方です。
これはチラ見せではありません。

裸の写真をドーンと見せられているのと同じで、色気も何もありません。逆に引いてしまいます。隠すことによって、色気が出てくるのです。

そう考えると、上に書いたような、桜をドーンの写真は全てを見せてしまっているので、それ以上想像力が掻き立てられません。
写真が上手い人ならあえてそこで勝負するのもアリですが、相当難易度が上がります。普通の人は埋もれてしまい「キレイな写真ですね」で終わってしまいます。

ドーンの写真は、俳句でいうと一物仕立てになってしまいます。詳しくはこちらのサイトをどうぞ。



もうちょっと落ち着いて被写体を見て、周囲を見回して、どこが一番魅力的か、それにはどこを隠すと想像力が膨らむか、隠す部分に目を向けると写真が変わってきます。

それは一枚の写真に隠されている場合もありますし、一冊の写真集全体の中に隠されている場合もあります。

もし気になった方は、自分なりに工夫して、チラ見せを使いながら色気ある写真を目指してください。

ジュエリー店の前で永遠を誓うカップル(想像)



下の記事には、どうチラ見せをすればいいか、具体的に撮り方、考え方について書いています。直接撮影するのではなく、間接的に撮影する方法です。
気になったかたはどうぞご覧ください。





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