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スポーツ撮影の楽しさ、奥深さ

屋外スポーツ、屋内スポーツ、様々な競技があります。スポーツの写真を撮影することは楽しく、そして奥が深いです。憧れの選手だけでなく、家族や知り合い、チームメイトが出場していたら尚更です。今回は、スポーツの撮影について、自転車競技を中心に、撮り方や楽しみ方をお話ししていきます。望遠レンズを使わなくても、スマホで撮影することも可能です。なお、スポーツの種類が変わっても、また運動会撮影でも基本は同じです。


レンズと撮影場所が決まれば、撮れる写真は決まってくる


カメラの使い方を知っている前提で、レンズを決めたら、あとは撮影場所を選ぶだけです。レンズと撮影場所が決まれば、初めてカメラを持った人でもプロカメラマンでも、撮れる写真は大きくは変わりません。それだけ撮影場所は重要です。写真の仕上がりの8割が決まります。

どのような場所を選べばいいかは、自分でどのような写真が撮りたいかによります。もしネットなどで掲載されている写真で、「こんな写真が撮ってみたい」と思ったなら、同じような場所を見つけて同じような写真を目指すのが近道です。どんな世界もまずは真似をしてみることから始まります。可能であれば、お気に入りの写真を数枚スクショしてスマホに入れ、常にイメージしておくことです。

望遠レンズ使用


標準レンズ使用


広角レンズ使用



主役、脇役、背景を意識する


主役を引き立てるためには、脇役の存在または背景が重要です。これはスポーツに限らず写真全体に言えることです。一つの例として、主役を大きく、脇役を小さく、背景にはその場所特有の建物や道、樹木などを入れる感じです。試合中のため、運任せのところもありますが、ある程度理想の形を頭に入れておくと、仕上がりが違ってきます。そのためには上に書いた「撮影場所」が大きく影響します。

下の写真は、狙った主役が大きく写っており、S字になっているため遠くの選手が徐々に小さくなり、いい脇役になってくれています。太陽の光は順光に近いほど発色もよくなります。


下の写真は、先に背景を決め、選手がそこにきたときにシャッターを切っています。選手に気を取られ、カメラを動かしてしまうと、せっかくの背景が台無しになります。
その土地にあるものを最大限利用する撮り方で、私は「待ち伏せ撮影」と呼んでいます。この撮り方をするときは、選手を追いかけるのではなく、あらかじめ構図を決め、選手が来るのを待ってから撮影する感覚です。



前から、横から、後ろから

一般的に、選手を前から撮影することが多いと思います。利点として、選手の顔が写ることや、選手が徐々に近寄ってくるため撮影時間を確保できます。さらにコーナーやS字を利用すると、後ろに続く選手が見え、主役と脇役をはっきり分けることができます。
望遠ズームレンズを使うときのコツとして、望遠側で構え、選手が近づいてくると徐々に広角に一定方向に回すことです。途中で望遠側にするとピントが合いにくくなります。


横から撮影すると、選手のフォームや機材を写すことができます。また、シャッタースピードを遅くして、流し撮りも可能です。

シャッタースピード 1/100


選手が前を通過したら終わりではありません。しっかり後ろからも撮影しておくのがポイントです。その場合も、背景を意識し、さらに低い位置から撮影することによって、前ボケも使えます。



カメラ設定

カメラ設定は人それぞれですが、参考までに私の設定をご紹介します。
シャタースピード優先 1/1000(望遠レンズ使用、屋外晴れ)
絞り、ISO オート
AF  中央一点(親指AF)
露出 +2/3
1000枚以上撮影予定の場合 JPEG 
1000枚以下撮影予定の場合 RAW
こちらを中心にして、スポーツやレンズの種類、ブレを入れる入れない、などを考慮しながら、シャッタースピードだけを変更します。


ピント合わせの場所

ピントは、中央一点にしています。それは咄嗟の対応がしやすいためです。しかし、中央で選手の顔にピントを合わせると、顔の上が広く、脚が切れてしまいがちです。そのため、ピントは顔ではなく、ハンドルのステム(ハンドルの根本)に合わせると、前後の距離のズレがほとんどなく、全体がバランスよく写真に収まります。陸上では、胸のゼッケンなどにピントを合わせるとちょうどいいと思います。近頃は勝手に顔にピントが合うので、そのようなことは必要ないかもしれません。



カメラ、レンズ選び

カメラとレンズの組み合わせはたくさんあり、常に新製品が発売されているため、話しだすと終わりません。価格は10万円〜100万円と幅は広いです。カメラやレンズは基本的に、最新で高級で重いほど、誰でも簡単に撮影できるようになっています。ただし、屋外で普通にスポーツを撮影するなら、10〜20万円で購入できるカメラとレンズで十分です。実際、私も高価な機材は使っていません。

もし撮りたい写真があれば、カメラ屋さんに行って、「こんな写真が撮りたいですけど、どんなカメラやレンズを使えばいいですか?」と質問すると、詳しく答えてくれるはずです。


スマホで撮影する

「スマホしかないからいい写真が撮れない」とは思わないでください。考え方としては、「望遠は遠くの選手を見栄え良く、広角は近寄って迫力を出す」という感じです。スマホやGoProは広角のため、いかに選手に近づくかが勝負になります。近づくといってもコースに入って撮影するのはNGです。選手に近づける場所はどこか、常に気にしておくといいでしょう。



スマホ、GoProを使った裏技紹介

裏技的な撮影方法として、私の場合、コースの外(土または草の上)にスマホまたはGoProをセットして動画撮影しています。コースから1〜2メートルぐらい離れた地面にスマホまたはGoProを置き、斜め上を向けて、動画撮影をします。そして動画を撮影して後からスクリーンショットで欲しい場面だけを切り出す方法です。
チームメイトが10人いたとしても、カメラの前を3回も通れば、全員のアップ写真が簡単に出来上がります。スクリーンショットといっても、SNSにアップするぐらいなら十分に耐えられる大きさです。ただし、選手がコースアウトしたり、救急搬送される場合、カメラを踏まれる可能性があるので注意が必要です。

上の写真はGoPro動画からの切り出しです。広角レンズの特徴ですが、近くの選手は大きく、少し離れた選手は小さく写ることを利用しています。さらに、主役の選手だけ太陽の光を当てて際立つようにカメラを設置する場所、角度を決めています。

動画撮影する利点は、自分でシャッターボタンを押さなくていいことです。手がフリーになったぶん、応援に集中できたり、もう一台のカメラで撮影することも可能になります。


チームメイト全員を撮影するために

10人とか20人撮りたい選手がいた場合、試合の状況によっては、全員撮影できない可能性があります。そんなことを予想して、入退場のときに、確実に全員撮影しておくことをお勧めします。家に帰って撮影した写真を見返したとき、「〇〇さんの写真だけない」となってからではどうしようもありません。撮影できるときに確実に全員撮影しておきましょう。それには、試合場に向かうシーンや、試合が終わって戻ってくるシーンが狙い目です。


調子のいい選手は、写真写りがいい

これは仕方がないことですが、先頭を走ると写真が撮りやすく、集団に埋もれると撮りにくくなります。逆に考えると、写真写りがいい選手は、調子のいい選手と言えます。また写真写りはいいけど、成績に表れてない選手もいます。そんな選手は華がある選手で、経験上これから伸びてくる予感がします。


ゴールの瞬間

ゴールの瞬間をアップで撮るか、引いて撮るか、好みがあると思います。
アップで撮ると表情が大きく写りますが、試合の雰囲気が消えてしまう可能性があります。引いて撮ると選手は小さくなりますが、周りの状況が主役を引き立ててくれます。どちらにせよ、いつそのような状況になってもいいように、どう撮影するかイメージしておくことが大切です。

あえて引いた位置から、観客やサポートカー、旗などを入れ、臨場感を出しています。


ゴール後
試合が終わって戻ってくるときは、選手の感情が溢れています。撮影する側からしたら一番美味しいところです。そこを逃さないようにしましょう。



補足写真として


選手ばかりでなく、応援してくれている人や、移動の様子、その日の天候を表す写真を撮影しておくと、一日の流れがわかり幅が広がります。これはスポーツに限らず、結婚式や旅行、イベントなど、あらゆる写真に通じます。


窓鏡影の法則を使う

窓越し
鏡越し

窓鏡影の法則に関しては、以前紹介した記事に詳しく掲載しています。


ここまでは、試合の写真についてお話ししてきました。


アルバムを作る


ここからはさらに一歩踏み込んだ写真の撮り方です。複数の写真で構成したアルバムを作るためのお話です。


スポーツ写真全体でいうと、試合中の写真というのは、割合でいうと1〜2割程度だと思います。試合は氷山の一角に過ぎません。アルバムに試合の写真だけ並べてもあまり面白くありません。実はそこまでの道のりが面白いところです。例えば、オリンピックの決勝戦は、見ているだけで感動します。さらに、決勝の舞台に立つまでの道のり、どれだけのものを犠牲にし、どれだけ挫折を味わってきたか、それが伝わると、金メダル獲得シーンの感動が何倍にも膨れ上がります。

冒頭では一枚の写真の中で、主役を引き立てるために、背景の大切さをお話ししました。それと同じように、主役を試合やゴールシーンと考えると、背景はそこまでの道のりになります。背景(道のり)をしっかり撮影していると、主役(試合やゴールシーン)が引き立ちます。

そのためには、スポーツに関わる何気ない日常を撮影しておくことが重要です。

はじめてロードバイクを購入した日


はじめて大会に出場して、惨敗した日
表彰台を見上げる表情に希望を感じる


試合中に落車して、自転車を大破させ、落ち込む様子



もし身近な人、家族や友人、チームメイトなら、ぜひ撮影していただきたいです。成績のいいときはたくさんの人が見てくれますが、悪いときは見てくれる人が極端に少なくなります。悪いときを撮影しているということは、選手と撮影者が苦しみを共にして、一緒に歩んできた証になります。



歯を食いしばって黙々と練習している様子や、怪我をして手術室に向かう様子、試合に負けて落ち込んでいる様子、さらに初めて競技に触れた日など、ゴールまでの長い道のりを撮影しておくと、素晴らしいアルバムに仕上がると思います。それは一日で撮影できるようなものではなく、10年20年といった撮影期間が必要になります。

補助輪をはずした日


中学を卒業し、すぐに高校の寮へ引越した様子


そう考えれば、写真が上手い下手という問題ではなく、撮るか撮らないか、悪いときも見守る覚悟があるかどうか、というところにたどり着きます。


作品として

一枚の写真の中で表現する主役と背景、そしてアルバム全体で表現する主役と背景のお話をしてきました。
さらに、アルバムを主役と考えると、背景は撮影者のことになります。撮影者が自分自身の背景まで意識して撮影すると、広く作品として見てもらえる可能性が高まります。ここまでくれば、個人のアルバムを超え、写真集や写真展の考え方になります。

背景とは、
一体撮影者は何者か
どんな人生を歩み、どんな考えを持って撮影したのか
現代の社会問題とどのような関係があるのか
なぜ、このアルバムを作る必要があるのか
今までどんな作品に影響を受けてきたか
などなど、
撮影者の信念や生き方に関わってきます。


私がスポーツ関連で好きな写真集は、熱田護さんのF1写真集「500GP」です。レース中の写真はもちろん格好いいですが、私が注目するのはレース以外の写真です。選手の心の中まで写し出されているようで、はっきり言って、しびれます。

写真の上達法は、各分野のプロフェッショナルな写真集を見ることが、一番の近道のような気がします。


今回は、スポーツの写真について深く掘り下げてみました。

写真は選手と撮影者共同で作り上げていくものです。試合中の格好いい写真を目指すだけなら、そんなに難しいことではありません。SNSを見れば上手な人はたくさんいます。それプラス、どこまで選手の内面や試合までの道のりに迫れるかが重要で、それは楽しいことばかりではなく苦しいこともあり、撮影する側も覚悟が必要です。

私なりのスポーツ撮影について書いてみました。少しでも参考になれば幸いです。



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