見出し画像

「考える脳」と「感じる脳」ー 集中力に関する誤解

今回は、マイアミ大学のアミシ・ジャー(Amishi Jha)教授(心理学)の動画を参考に、集中力に関するよくある誤解を紐解いてみたいと思います。

集中に関連する「感じる脳」の働きを理解するためには、懐中電灯のように狭い範囲を照らす光や競技場の照明のように広い範囲を照らす光をイメージすると良いと思います。この「感じる脳」の働きは基本的に止まることはなく、時には懐中電灯のように、時には競技場の照明のように、その対象を変化させながら処理し続けます。集中が止まったり、続かなくなったりするというよりは、ある意味、集中は止まることなく続いていて、それを制御する方法を学ぶことが必要なのです。

動画を見る際には、日本語の字幕を参考にしてください。


集中に関する誤解

「集中」は「感じる脳」が備えている重要な機能の一つです。チータのような肉食動物が獲物を捕らえるときの集中力には気迫を感じますが、人間にも集中力が備わっており、大事をなすときに力を発揮します。一方、仕事や勉強をしているときに、集中できない、集中が続かない、集中の邪魔をされたという体験をする人も多いのではないでしょうか?

「考える脳」と「感じる脳」

例えば、あなたがある小説を読んでいるとします。その中に桜に関する表現が出てきたとします。そうすると「考える脳」は、小説を読んでいることを忘れて、去年の楽しかったお花見を思い出し、その時に、集中が途切れたと考えてしまうかもしれません。しかし、このような体験は、実は脳が作り出している錯覚なのです。これらの表現は集中の本質をとらえていないし、集中の働きを説明するものでもありません。

脳はそもそも常に注意を払い続けている

「感じる脳」の仕事は、大雑把に言えば、五感を通して得られる外界からの信号を処理し、その信号をもとに体内の代謝のバランスを整えることです。しかし、五感から得られる信号がすべて処理されるわけではありません。過去の記憶から優先順位が高いと判断された情報だけを選別して処理します。これは一般にバイアスとも呼ばれます。例えば、あなたがこの文章を読んでいるとき、あなたの目はおそらく文字に注意を払い続けることで、一方で、実際には目に入ってくる他の光の情報を無視していることでしょう。ひょっとしたら、手のひらや足の裏からの信号は完全に無視されていて、まるで手や足が無いかのようにさえ感じているかもしれません。

「感じる脳」の仕事

細部に払う注意と広域に払う注意

集中に関連する「感じる脳」の働きを理解するためには、懐中電灯のように狭い範囲を照らす光や競技場の照明のように広い範囲を照らす光をイメージすると良いと思います。例えば、勉強に集中しているときは、物事の細部に対して脳の処理能力をフルに活用します。これは、懐中電灯で特定の物にだけ光を当てているようなイメージです。一方で、山に登って広大な景色を楽しんでいるときには、競技場を照らす照明のように、より広いエリアから情報を得るように処理をしています。この「感じる脳」の働きは基本的に止まることはなく、時には懐中電灯のように、時には競技場の照明のように、その対象を変化させながら処理し続けます。その優先順位を決めるために過去の記憶が使われ、それがバイアスと呼ばれるフィルターの役割を果たし、必要な情報を処理しつつ、脳への負荷を減らしているのです。脳は私たちの全身の中で最も「大食い」な臓器です。脳は、大きさはわずか1.5キロほどですが、私たちの代謝の約20%を占めます。本当に「大食い」なのです。必要な情報を選別し、消費をできるだけ減らすことが、「感じる脳」にとっての最重要課題の一つだと言えるのだと思います。

集中力は鍛えられる

集中力の問題の本質は、一つの事に集中していられる時間の長さです。しかし嬉しいことに、集中力や「感じる脳」は鍛えることができます。いつでも鍛えられるという点では筋肉に似ていますが、一度向上させた能力は長持ちするという特徴もあります。集中力が高まれば、「考える脳」を使った仕事や勉強の生産性も高まるでしょう。

次回は、その集中力を高める方法に関して、別の動画を参照しながら理解を深めたいと思います。


ご愛読いただきありがとうございます。その他の記事はこちらのマガジンからどうぞ。

「感じる脳」のトレーニングを始めたい方は、こちらのマガジンからどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?