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自分のトリセツ「過去の錯覚と脚本の書き換え」
人生脚本
前回の記事「過去の錯覚について」では、自己肯定感を決定づけている要素として、「過去の錯覚」というものがあるということについて触れさせて頂きました。
「過去の錯覚」とは、主に幼少期に経験した事柄に対し、何らかのネガティブな意味づけがされ、その記憶が、大人になってからの行動や決断に影響を与えてしまうことを意味します。
この「過去の錯覚」があることによって、人は無意識のうちに、同じような人生のパターンを繰り返してしまうことがあります。
例えば、恋愛で同じような別れを繰り返してしまったり、仕事で同じような失敗を繰り返してしまうケースがそれにあたり、これは本人も無意識のうちに繰り返していて、全く自覚を持つことがありません。
このように、幼少期の記憶が原因で、人生のパターンが形成されていることを、交流分析という学問では、「人生脚本」と呼んでいます。
人生脚本の具体例
その女性は、私生児として生まれ、母親の仕事や病気(精神病)の関係で、16才の初婚までに10カ所以上の里親の家を転々としました。
「愛しているよ」と育ててくれた里親たちも、次から次へと自分をたらいまわしにします。
そういう経験を通じて、この女性には「お前は愛される価値のない者」「愛は必ず途中で失われる」といった気持ちが知らず知らずのうちに植え付けられていきました。
やっと手に入れた心安らかな結婚生活も、しばらく続くと、「ひょっとしたら夫は私を捨てるかも知れない」と不安になり、夫が困るようなことをして、「本当に私を愛しているか」試そうとします。
しかし、それも度が過ぎて、結果的にはいつも捨てられてしまいます。
そして、この女性は、このような歪んだ人間関係を一生繰り返し、ついには36才で自殺してしまいます。
この女性の名前は、マリリン・モンロー。
メジャーリーガーの妻であったり、アメリカ大統領の愛人であったり、その美しさから多くの男性を魅了するも、最後は「捨てられるかも知れない」という呪縛から逃れることができずに、別れを決断する人生を送ってしまいました。
人生脚本の書き換え
マリリン・モンローは、小さなころに里親の家を転々としていくという経験を通じ、「自分には愛される価値がない」「愛は失われてしまうもの」という誤った意味づけをしてしまいました。
マリリン・モンローの具体例は非常に分かりやすいものではありますが、同じように、わたしたちは過去の出来事に対し、何らかの意味づけをして生きてきています。
それがポジティブな意味づけであれば何の問題もないのですが、ネガティブな意味づけになってしまっていると、同じようなパターンでの失敗を繰り返してしまいます。
でも、このネガティブな意味づけは、幼い頃の、まだまだ未熟な自分が勝手に解釈をしてしまったことが原因になっているだけで、ただの錯覚でしかありません。
ですから、この錯覚に気づき、書き換えることが出来れば、人生のパターンを自分の望む方向へと変容させることができます。
交流分析では、「人生脚本」の書き換えを進めるにあたり、次のような注意点を示しています。
人生脚本の存在を肯定し、たとえ、幼少期の自分が選択した人生脚本が、今現在の自分に望ましくない結果を生み出しているとしても、幼少期の自分の決断を否定しない。
引用:エリック・バーン『人生脚本のすべて』
「人生脚本」の書き換えには、ネガティブな意味づけによって生み出された「人生脚本」の存在を否定するのではなく、肯定(=受容)することが非常に重要になります。
幼かった頃の自分が、主に両親からの愛情を受け取るためや、未熟な状態にも拘らず環境に適応するため、自然な感情を犠牲にしてまで行った決断を、肯定し尊重することが大切なのです。
具体的に「人生脚本」の書き換えには、まずは自分の失敗パターンを自覚することがスタートになります。
自分の失敗パターンに、自ら気づける場合もあれば、誰か他の人からのアドバイスによって気づく場合もあります。
この「自覚」から「受容」というステップは、「人生脚本」の書き換えの前半部分になりますので、一度、自分自身の人生を振り返ってみて、同じような失敗パターンがないかどうか?について探ってみてください。
これから一週間ぐらいをかけて、「自覚」と「受容」のステップまでを進めてみてください。
次回の記事で、「人生脚本」の書き換えの後半部分について触れていこうと思います。