第一章 誰も気がつかなかったこと-001
噛めることが大事
はじめに
私は一歯科医として仕事をしております。
とあるきっかけを元に、自分の仕事の内容をリスキリング(学び直し)をした方が良いと、方針転換を始めていました。
それはお口の問題を中心として、もう少し範囲を広げ
「あご(歯)・脳・腸」そして心の関係性から、
治療にあたるという内容です。
このことによって、患者さんの抱えていた不健康問題が、
かなりの確率で解消されていくことを臨床現場で垣間見ているのです。
そのような中、社会保障費の増大に頭を悩ませた政府は、寝たきりと認知症対策として、訪問介護の世界で働く歯科医にこのように述べているのです。
「噛める入れ歯を作ってほしい」と。
私はこの情報を聞いて激震が走りました。
それはなぜか?
歯科医が「運動障害である寝たきり、脳障害である認知症」に深く関わることを求められているということです。
これらの疾患が一過性で生じるものではなく、長期間にわたる不健康問題を抱えつつ徐々に現れるフレイル現象を伴っていることも分かる化していることはご承知の通りです。
まずは最も大事な人間の健康を作る構造について
1~10までを少しづつ私の視点のプラットホームについて述べてみたいと思います。
噛めることが大事
現代社会を蔓延する不健康問題とは
あごとはなにか?
あごと食べると言うこと
食べるという仕組み
私たちの体は自動操縦されている
あごと腸とこころの関係
あごと脳の関係
あご、脳と腸とこころ
人間の創意工夫は食べることから
1. 噛めることが大事
まずは、
『健康であるためには、何が大事だと思いますか?』と聞くと、
大抵の人は、体に良い食べ物を食べることだと答えます。
次に、
『他に何かありますか?』と聞くと、
運動をすることかな?と付け加えます。
確かに私たちの祖先である哺乳類は、
食べ物さえあれば移動して食べる動物です。
小中学校の頃、哺乳類は【恒温動物】という種類の
動物であることを習いました。
【恒温動物】は、魚・両生類そして爬虫類といった
変温動物から進化した動物です。
変温動物は暖かい限られた環境でしか生息することができません。
これに対し恒温動物は食べるものさえあれば、
どこへでも移動できる動物になりました。
なぜか?
変温動物のあごには、捕食し飲み込むためのツールとしての
歯はあっても、【恒温動物】のような噛み合わせはありません。
変温動物は食べ物を丸呑みするのに対し、
【恒温動物】はあごを使って咀嚼することを始めたのです。*1
直接獲物を捕食して呑み込むための道具として使っていたあごに、
咀嚼の機能を加えたというわけです。
食べ物をあごで咀嚼することにより、腸での消化吸収の能力を
格段に上げることに成功した動物です。
(↑これ重要です)
この機能を作ったことによって、
体が必要とするエネルギーを腸からすぐに産生できるようになりました。
この効果によって、寒いところでも暑いところでも、食べ物さえあれば移動ができる動物として進化してきたのです。
今や食べるものさえあればどこにでも移動する哺乳類が、世界中に生息している理由は、あごで咀嚼する動物になったからです。
最後に、
『私たち人間にとって健康であるためには、何が大事なのか?』の
答えです。
それは。
「食べ物を、あごでしっかりと噛むことができる」ということです。
それはなぜか?
いくら健康に良い食べ物を手に入れたとしても、
あごで噛めなければ、腸での消化吸収はできず、
そのことによって不健康を生じてしまうからです。
*1 T. S. Kemp. The origin and evolution of mammals. (Oxford Biology) Oxford University Press (2005)
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?