600回超、祈り続けたこと~3年間の地方衛生研究所勤務を終えて~
書いていたら日付が変わってしまいました。
昨日3月29日(金)は、今の職場への最後の出勤日でした。
来週からは浦和の本庁舎勤務となります。
この3月まで私が勤めていた職場は「地方衛生研究所」といって、感染症や食中毒の原因となるウイルスや細菌などの検査をしたり、検査技術の研究や専門職の人材育成などに取り組む機関です。
全国には同じ役割の機関が都道府県や政令市、中核市などに80数か所あり、私が勤めていたのはその中のさいたま市の機関です。ちなみにさいたま市の機関は、保健衛生局に属し、3つの課を擁する部相当の組織です。
そこの総務企画係長として3年間務めました。
研究所の職員といっても、総務企画係長は施設管理や予算・決算、計画の策定・管理、所内の取りまとめなど、検査とも研究とも無縁な事務的な役割。
事務とはいえ、まったく経験のない保健衛生分野の組織で、初めて係長になる内示を見たときは非常に不安になりました。
不安のあまり引継ぎの日を1日間違えてしまったほど。
(不安は現実のものとなり、業務の内容も分からないことばかりだったことに加え、これまで接してきたことのない仕事観を持つ専門職の皆さんとの人間関係にも大いに悩み、しくじりを重ねることになります)
そんな不安いっぱいの私が、2021年4月1日の初登庁の朝に偶然通りかかって立ち寄ったのが、写真の神社でした。
3月末の引継ぎの段階で「これは全く見当もつかないし、何をやったらいいか分からないな」と、職場の最寄り駅から歩いていたときに目についただけの鳥居。
どうして立ち寄ろうと思ったのか、今ではもう忘れてしまいましたが、どうせ何もできないならと手を合わせて祈ったのが
「今日も、安心安全で滞りなくセンターの業務が行われますように」
というひと言でした。
その日以来、休みの日や出張などで事務所に出勤しない日を除き、雨でも風でも関係なくこの神社に立ち寄り、
「今日も、安心安全で滞りなくセンターの業務が行われますように」
と毎朝祈り続けていました。
地方衛生研究所というのは、依頼を受けた検査を積み重ねていくのが日常です。あってはならないことですが、検査の中で事故の可能性はゼロではありません。
また、突発で重大な感染症(日本初上陸の案件等)や大規模な食中毒などがあれば、職員が夜間や休日でも検査をすることがあります。もちろん、前段としてそこには患者さんの存在もあります。
いわゆる健康危機管理の前線である地方衛生研究所という性質もあり、そういう意味で、事故もなく重大な感染症・食中毒も起こらないことを祈っていたのです。毎日、出勤する朝に。
組織の番頭であり検査の現場を支える裏方(=総務企画係)として、大したことができないのならせめて祈るくらいはさせてもらおうと思って始めた習慣でした。
祈り始めて、最初のうちはどちらかというと「何ごともない=総務企画係長として落ち着いて仕事に取り組める」という意図が強かった気がします。
それが少しずつ変わっていったのは、新型コロナウイルス感染症の対応に組織を挙げて部署や担当を越えて取り組む職員の皆さんの姿を見ていたからかもしれません。
いつしか「何ごともない=職場の皆さんが安全に検査に取り組めること、危機事案の突発で忙殺されないこと」を意図して祈るようになっていました。職員の皆さんのお顔を思い浮かべながら。
着任した当時はまだ新型コロナウイルス感染症の感染状況にも大きな影響を受けていましたが、おかげさまで結果的に、ここ2年間は非常に穏やかで、大騒ぎするような重大な感染症も大規模な食中毒なども起こっておりません。
(足元を見れば、インフルエンザの長期流行やはしかの感染者増、飲食店等の食中毒の頻出など、気になる状況もありますが)
また、検査中の事故や職員の大きなけがなどもありませんでした。
「今日も、安心安全で滞りなくセンターの業務が行われますように」
そう祈り続けた600数十日。出勤のたびに1日も欠かさず、神社で祈りをささげた毎日も昨日で終わりました。
実際のところ、実務面で私が成し遂げられたことはあまり多く(大きく)ない気がしています。組織としての業務が落ち着いていたとしても、ただ祈っていただけでそこに貢献できたとも思ってはいません。
ただ、3年間、私にとっては重い職責だった部筆頭課筆頭係の係長の役目を終えた今の気持ちとしては、自分が何を成し遂げたかということ以上に、職員の皆さんが(日々色々なことはあるにせよ)大きな事故もけがもなく検査に取り組めていること、地域において重大な健康危機が発生することなく終えられたことにホッとしています。
ここでの日々で何を得て、自分の中で何が変わったのか(変わらなかったのか)は、いつかまた振り返りたいと思います。
普段、帰り道で立ち寄ることはなかったのですが、昨夜は最後でしたので退庁してから帰り道でも神社に立ち寄り、御礼をしてきました。
「おかげさまで3年間、無事に務めることができました。ありがとうございました。これからもあの組織が安心安全で滞りなく業務を行えますように」
来週からは、本庁舎で環境局のゼロカーボンを推進する部署の係長に着任する予定です。これもまた転職のような業界アルアルな人事異動ですが、どんな仕事になるのか、今は楽しみと不安が半々な状態です。
この週末に心も身体も休めて、切り替えたいと思います。
この春、環境が変わるすべての皆さん、来週から一緒に頑張りましょうね。
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