詩茉は闇の中にいた

こんにちは。詩茉です。

シリーズ「ヲタク系OLが経験人数75人のヤリチンと出会い系サイトで知り合い、恋に落ちてセフレから彼女になった話」の第2話(?)です。


もうすっかり秋ですね。
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、セックスの秋でございます。
そんな感じで中田くんと詩茉の性の秋話も近々綴っていくとしましょう。

さて、今回は中田くんに出会う少し前の私の話を書きたいと思います。
※初めに言っておきますが、エロい要素は無いです。
あと暗いです。

中田くんに出会う少し前…

詩茉には中学時代から腐れ縁的に続けていたある趣味がありました。
中田くんと出会う少し前、その趣味を通じて知り合った人と交際していました。4年ぐらいでしょうか。


趣味というのは(詳細な内容は伏せますが)とある表現活動で、彼は共に取り組む仲間でした。
週のうち5日間は会社員として働き、残りの2日間はその活動に勤しむ。
休みという概念が存在しない日々が数年続きました。


体力的にはかなりキツかったけれど、自分のした事に対して誰かが喜んでくれることや、世界が広がっていくのが刺激的でやり甲斐がありました。
しかし、その中で責任のある役割を担っていたプレッシャーや、感染症の蔓延という不運な時代が追い打ちをかけて成果が上がりづらくなってきたこと、寝る時間を削って取り組んでいたこともあって心身のバランスを崩し、楽しかったはずの世界が次第に陰り始めていきました。


呪いの言葉「~ねばならない」


「途中で投げ出してはならない。」

そんな言葉がいつもいつも詩茉の頭の中を何度もぐるぐる駆け巡っていましたが、途中といっても一体何がゴールなのか私は分かっていませんでした。
今思えば私には適正が無かったし、加えて先述の不運な時代ということもあり周りの状況は悪くなる一方。
人も減っていく中でこのまま継続していけるかどうかもわからない状況。
良きゴールとなるような終わり方はできないだろうと分かっていたので、既に辞めて逃げ出したいと思っていたのですが、私の心の中のちっぽけでどうしようもない責任感は私を洗脳し、本心に気が付けないようにするのです。

そんな先の見えない闇の中で、葛藤を抱えてただ耐えるだけの日々を送るうちに、当時の彼と価値観の違いから争いが増えていきました。
心は蓋をしていても、人間の感情は洗脳に抗って気付かぬ間に漏れだしてくるのです。
漏れだした感情から生まれた言葉は無意識のうちに刃となり、争いの頻度はさらに増えていきました。
そしていつしか埋まらない亀裂を作り、ついにはセックスレスに…。


詩茉の中ではもうとっくに、

彼と"一緒にいる理由"が

"活動のため"だけになってしまっていたのです。



本当の気持ち

何もかも上手くいかなくなったある日、
ふと心の中のもう1人の私が詩茉に問いかけました。


『この場がなくなったとして、
彼とずっと一緒にいたいと思う?』

そんな問いを投げかけてくるもう1人の私に対して、またしても責任感という自己洗脳が蓋をしようとします。


「そうじゃなくて……。
協力や期待をしてくれている人達を裏切れない。
果たさなければならないことがあるから…。
最後までやり遂げなきゃ…。」


そうすると再び

『誰が終わらせるの?何のために続けているの?』

「…やめて…!」

『ケンカばかりで何をしても楽しくないのに、
どうして彼と一緒にいるの?』

「…………」

『本当は辞めちゃいたいんでしょ?』

「ちがう……!」

『あなたは何がしたいの?』

「わからない…ワカラナイワカラナイワカラナイ…!!!!!!!」

それからの詩茉は更に無気力になりました。
何かをしたいという欲求も湧かず、自分が何を感じ考えているのかすら分からなくなっていきました。
詩茉はやり遂げることしか頭になかったので、別れるという選択肢も全く浮かばなかったです。
とはいえ自分から何かをする訳でもなく、ただ時間が過ぎていくのを待っているだけ。
誰かにゼンマイを巻かれるのを待っているだけ。
感情を持たない人形のように生きていたあの頃…。


『嘘。』


もう1人の私の言う通りです。
本当はどうしたいかなんてわかっていたけど、認めたくなかった。
認めて本当の想いを自覚してしまったら、私が私としてそこに存在するための堤防が崩れて、何かが溢れてしまいそうで怖かった。
崩れて溢れた後どうなるのか、その世界線を一切想像出来なかったから…。
  

「このまま一生
どう生きたいのか分からないまま生きて…
死んでいくのかな…?」


中田くんと出会う少し前、詩茉は深い底無しの絶望に包まれていました。


続く。




詩茉

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