【長編連載】初めての性交渉は実姉と①
数ある情欲のエピソードを語るには
とまれ生い立ちから綴らねばならないでしょう。
筆者は生まれながらに父親の存在を知りません
母子家庭に生まれ落ち
幼い姉と生まれたてのわたしを連れた母は
かつて豚小屋と称された古びた平屋へと出戻ります
その実家には祖父母、そして行き遅れの叔父と叔母(のちに自殺)が暮らしており
そこでわたしは運よくちいさなハコに詰め込まれた複雑な家庭に根を下ろしたのです
祖父母、そして叔父叔母は半ば勘当同然に出て行った母をまた受け入れ
それなりの愛を注いでわたしの家族になってくれました
しかしそこに大切な父の愛はありません
ヒトにとって代えのきかない大切な因子が
影も形も存在しないのです
筆者は生まれながらに父親の存在を知りません
しかしデオキシリボ核酸ひとつひとつに精巧に刻み込まれた無意識という意識が、
わたし心の奥底に一抹の寂しさの種を植え付けたのでしょう
この世の幸福の形は輪郭を持っていても
不幸の形はおぼろげで実に多様で面妖です
そしてその感性は決して相対的なものではあり得ないのです
わたしの心根は人知れず、
己が身すら欺き歪みを孕んで大きく脈を打ちました。
その幼心に、ナニモノカガ芽ぐむ音が聞こえたのです
わたしの耳にハッキリとその音が届いたのです
それは後々黒染めに気高く開く、
悪の華の芽ぐむ音でした。