いい曲なのに、素直に聴けない。
ユニコーンの「大迷惑」に奥深く沼っている。
この曲を知ったのは昨晩放送の歌番組。
10代から50代くらいまでの誰もが楽しめるよう、世代ごとのヒット曲を紹介していた。
サビの部分が10秒くらい放送されると、テンポとメロディが超突き刺さった。
もっともっと聴きたくなって、秒でスマホで検索した。
わたしが曲を買う時は、視聴も当然だけど歌詞にも必ず目を通す。
メロディが良くても、流れてくる言葉とうたわれている世界観に没頭できない予感がしたら、買わない。
詞を読んだら、男性が3年2ヵ月の単身赴任を会社から命じられ、マイホームと愛する妻から離れて暮らす心情を描く悲哀の歌だった。
「 夢にまで見たマイホーム 」
「 エプロン姿のおねだりワイフ 」
「 君の作った料理食べたいよ 」
「 帰りたい 帰りたい 」
この専業主婦感がちょっと古いなぁ、どうしようかなぁ、と思いつつ、結局ダウンロードした。
今の10代、20代の子たちは、この詞を聴いてどう思うのだろう?
リリースは1989年、昭和がたった7日間で終わり平成に変わった時だ。
わたしはまだ、社会人にはほど遠い学生だった。
社会に出てからも、この曲を記憶する出来事には巡り会わず。
それでも、あの頃の大人たちがこの曲に共感しかなかったのは何となくわかる。
リリース以降の送別会シーズンには、男性たちが肩を組みながらカラオケでこの曲を熱唱したんだろうなと思い描ける。
古めとはいえ、軽快なテンポとメロディに乗った歌詞は聴き心地の良さ抜群。サウンドに古臭さなんて全然ない。
「 君をこの手で抱きしめたいよ 」
「 君の寝顔を見つめてたいよ 」
「 この悲しみをどうすりゃいいの 」
「 誰が僕を救ってくれるの 」
というサビの部分に現れる言葉の切なさと狂おしさを、滑らかなのに強いストリングが勢いよく煽っている。ここんとこ、もぉ大好き。
とにかくひとつの曲だけエンドレスリピートで聞き始めたら、沼った証し。
昨日の夜から今日の昼の時点まで、朝晩のヒーリングミュージックを除けばこの曲しか聴いていない。
*
………… ただねぇ。
めちゃくちゃいい曲だからずっと聴き込んでいるけど、
複雑な気分がぐるぐるハイテンポで生まれる。
そんなこと言って、浮気とか不倫とかするんでしょ?
単身赴任や遠恋でそうなった知り合いの男性、未遂も含めて5人はいる。
君の手料理が食べたいと妻に言いながらも、淋しさに負けるのか開放的な気分に負けるのかわからないけど。
この曲でも、枕が変わってもすることは同じで誘惑に出来心、とあるんだけど、結局そういうことなんじゃ?
それに、
『 亭主元気で留守がいい 』
妻の方はそんなことを思っている。
大昔にお見合い結婚で専業主婦になったお金持ちのユウコちゃんも、結婚1年未満で既にそう言っていた。
さらに。
購入前に何度か視聴して詞を眺めていたら、ひとりの人が思い浮かんだ。
共働きでお子さんが3人いる彼は、この春に激務で残業必須の部署へ異動した。
単身赴任じゃないけれど、異動を言われた時はそれこそ大迷惑だっただろうに。
子供たちの教育費という縛りがあっては、歌詞みたいに「 お金なんかはちょっとでいいのだ 」とも言ってられない。
「 早く家に帰りたい 」と思いながら残業している彼の姿が、実は楽曲購入の決め手となった。
単身赴任に限らず、ただただ帰りたいのに帰れない強烈な共感を生み出すサラリーマンの歌として部分的に聴けたのだ。
『 誰が僕を救ってくれるの? 』
誰が彼を救うのだろう?
そんなことを思いながら、ただただ鬼リピートしているわたし。
リリースから30年以上。
多少言葉が古くても、今の時代もこうしてファンを増やせる魅力が宿り続ける楽曲。
ただ、そこから浮かぶ人たちの姿は、わたしが生きてる分だけどうしても広がってしまう。
単身赴任のサラリーマン男性の愛と哀しみの物語一択として純粋に聴くのが、今のわたしには難しい。
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