「魂」
◇「愛」
自分は音楽を愛している。
しかしながら愛しているという言葉はどこか日本に馴染まない気もするし、頻繁に使われる言葉でもないが、それでも誰しも知る言葉であり強い関心を惹く言葉であるから、使わないにしてもどこか日本人にとって本質的な何かを包括しているんだと思う。
◇「あれから」
美空ひばりの曲に“あれから”という曲がある。
いや、正しくはAI美空ひばりだ。AIに学習させボーカロイドしたものが本作品。“川の流れの様に”を手がけた秋元康を中心に2019年に作成された。
聴けば正に美空ひばりが歌唱している様にしか思えない感動的な作品だ。無論、死者への冒涜と心良く思わない人もいるが少なくとも自分はそう感じたし、そう言う人たちも果たしてAIと知らずに過去音源の復元として聴いたら意見は違っていただろうと、そんな確信に近いものもある。
過去作品と趣は違う楽曲だが仮に“美空ひばりが現代にまた存在したら”そう考えるとスッと染み入る曲だと思っている。
◇「Now and Then」
ビートルズの最後の新曲として2023年にリリースされた楽曲。
元々は1978年に自宅でピアノを弾きながらテープに録音したデモとも言えない雑音が混じる作曲の最中のものであった。これを元にAIで作成されたのがNow and Thenである。
音源化の構想は1994年からあったものの当時の技術が追いつかず現代にAIが登場した事で完成に至った作品だ。
この作品がリリースされて100回近くは聴き込んだと思う。
“当時”にビートルズが演奏していると本当に思える、そんな過去作品であり新作でもあり、常に先進性を持ったビートルズらしさがAIという現代技術を“現代でビートルズ自身がAIを使いこなし完成した”と思える作品である。
◇「魂」
「あれから」にしても「Now and Then」にしてもAIが中心となっている事は間違いない。しかしながらそこに美空ひばりという人間、ビートルズというバンド、それが確かに存在している気がするのである。
言い換えれば、今にこそいないが彼ら彼女らが現代で作った作品だと思えてならない。
確かにもうこの世には存在しないのだが、しかしそれでもどこか魂みたいなものが存在しているような、人と人と繋ぐ意思の様なものが過去と現在と未来に渡り繋がっているような、またはそんなものは存在せず今を生きる人達が一瞬一瞬を作り今に繋いでいるような、そんな気がするのである。
仮にそれらを「魂」呼ぶとしたら、一体それは何に宿るのか?
いや、もしかすると生も死も含め実は世界は一つという事なのかもしれない。
無論、そんな事は確かめようがないけどね。