見出し画像

【呟き】怪獣8号は次代の王道漫画なりうるか【漫画感想_01】

 ども、式です。

 いつの時代も人々の心を魅了して離さないコンテンツというものがあります。ドラゴンボール、ワンピース、NARUTO、BLEACH、鬼滅の刃等々。

 中でも所謂社会現象・ブームと呼ばれる大きな波を引き起こす漫画というのは、その現象の大きさや種類から色々なものがありますが、特に前述のような少年漫画はその筆頭な気がします。

 ヒカルの碁の影響で囲碁ブームが起こったり、キャプテン翼の影響でサッカーを始める人が急増したり、るろうに剣心に憧れて傘で牙突を真似する子供が出てきたり。最近では子供たちは「○○の呼吸」と言って遊ぶのが流行のようです。個人的には「全集中、ウ○コの呼吸」が好きです。小学校でウンコマンと揶揄される全ての小学生を救ったので。

 私個人は浅く広く漫画を読んだりしているのですが、その中から一作品、ジャンプ+というアプリで連載されている『怪獣8号』という作品を取り上げて感想を呟いていこうと思います。このジャンプ+、基本無料で掲載作品が読めるので結構すごいです。過去のジャンプ作品も不定期で限定無料とかやっているので、個人的にほぼ毎日チェックしてます。

目次のようなものを立てるなら以下の通り。

1.あらすじ

 世界観としては現代の日本、地震や台風のような自然災害と同様に「怪獣」が災害として頻出する世界。現代でいう自衛隊に位置する「防衛隊」と呼ばれる組織がこの討伐にあたり、人々の平和を守っている。

 主人公日比野カフカ(32歳♂)は、防衛隊……ではなく討伐された怪獣の解体・処理作業を担当する清掃業者の職員として、日夜怪獣の骨やら血やら内臓やらを処理する業務にあたっていた。

 彼の幼馴染である亜白ミナは、人々から羨望の眼差しを浴びる防衛隊最強と名高い第3部隊の隊長。片やカフカはパッとしない生活……

「なんでこっち側にいるんだろ俺……」とビールを飲みながら独りごちる彼の目はどこか虚。かつては防衛隊を志していたものの、試験で何度も落ちるという苦い過去があったのでした。

 そんなある日、防衛隊志望の市川レノ(18歳♂)が新人バイトとして加わり、彼の口から防衛隊の募集基準年齢が33歳未満に引き上げられることを知るカフカ。

「諦めた話してる時すげーさみしそうな顔してたから」とレノの優しさに感謝し、カフカは防衛隊を志すーーー


 という完全王道なストーリーで進むのかと思いきや、なんと1話でこの2人が怪獣に襲われ、命からがら助かったかと思ったのも束の間、突如現れた小型の怪獣がカフカの口から体内に入り、気づいたら人型の怪獣になってました。防衛隊入隊を果たしたい彼はこれからどうなる?というところで1話が終わります。


2.現時点の評価

 評価、などと評論家ぶっていますが、私は素人なので素人が感じたことを勝手に語ります。

a)王道展開の中にある「非王道」な側面

 「自分より遥か先をいく幼馴染を追いかけて、一度は夢を諦めた主人公がもがきながら挑む」と書くといかにもベタベタな王道漫画かと思いきや、主人公は30過ぎたおっさん(と書くと全国の30代前半の人、及び未来の自分が窒息死しますが)だったり身体に怪獣の力を宿したり、元の職業がパッとしない清掃業者という凡人設定だったりと、良い意味で王道から「ハズして」いる。この「ハズし感」が物語のスパイスとして丁度良いんですよ。おっさんだから周りの若者と同じようには動けないけど、元清掃業者というキャリアを活かして頭脳プレイをするところとか、怪獣化すれば大概の敵は簡単に沈められるけど、そこを自分の力で乗り越えようとしたり(でもどうしても勝てない敵がいたらリスク覚悟で怪獣化したり)。

 ベタな王道漫画って、確かにテンプレ化されているので良い意味では読みやすいんですが、悪く言えば展開が読めてしまうのが難点だと思うんですね。この作品はそれがない。ないというか、勿論王道展開は随所にあって少年漫画特有の「アツさ」はバッチバチにあるんだけど、それだけじゃない「読者を飽きさせない・掴みにくる独自性」が散りばめられている。

b)ストーリーのテンポの良さ、ギャグ⇄シリアスの切り替えの巧みさ

 よくある少年漫画って、1話の最後の方で見開きページ使って敵をドーンって倒して終わるじゃないですか。でもこの作品は1話の最後の方で出てくる怪獣を倒すのはカフカじゃなくて第3部隊だし、ほのぼのするのかと思いきや最後のページで怪獣になるしで、展開が「型」にハマってないんですよ。

 2話冒頭では主人公が病院から慌てて脱出するシーンから始まって、街中を怪獣姿のカフカと、一緒に脱出してきたレノが走るシーンに繋がるんですが、ここでの掛け合いのテンポが読んでて心地いい。クスリとできる台詞があったり、普通に笑ってしまうギャグ要素があったり。

 でも2話の最後では贅沢に見開きカラーを使ってカフカの格好いいシーンを描いていて、1話の中で綺麗に起承転結がまとまっている。その上全面シリアスというわけじゃないのでテンポよく読める。

c)キャラクターの魅力

 主人公カフカは言わずもがな、芯の強さを見せるレノや圧倒的カリスマ性で周囲を惹きつける幼馴染ミナ等、キャラクター一人一人がしっかりブレることなく描かれてます。

 (現在連載中の)物語中盤で出てくる「糸目の関西弁キャラ」がいるんですが、一目見ただけで「あ、こいつ普段ふざけてるけど戦闘時は目開いて戦うタイプだな」って分かっちゃうキャラ立ちをしてます。

d)台詞の格好良さ

 第1話でピンチになったカフカを助けに入ったレノの「ここで先輩置いて逃げ出すようじゃ、きっと俺は隊員になんてなれない!!」には彼なりの信念を感じるし、2話最終ページでの主人公の「アイツ(亜白ミナ)の隣に行かなきゃなんねぇ」には彼の夢への思いを感じる。

 個人的には第9話でカフカが零した「夢を追うってのは、一番譲れない大事な物で毎分毎秒誰かに負け続けることなんだ」という台詞がグッときました。今まで夢を追いかけてきて、それを一度は挫折した彼だからこそ言える言葉だな、と。

3.ブームを起こす要因はあるか

 あるんじゃないでしょうか(無責任)。

 いや、というのもこの作品、web連載だというのにジャンプ側も猛プッシュしているし、今のところ展開にケチをつけるようなところもないし(むしろクッソ面白い)、アプリでの連載という知名度の点を除けば「売れる要素」というのは十二分に揃っています。あとはクチコミやレビューで少しずつ知名度を上げていって、アニメ化等のメディアミックスで一気に大衆に拡散すれば結構なところまで戦える作品になると思っています。

 逆に、ここからは少し批判的な視点になりますが「社会現象になる作品」かと言われると「ちょっとどうなるか分からんなぁ」というのが正直な感想です。

 るろうに剣心しかりONE PIECEしかりNARUTO、BLEACH、鬼滅の刃等々の社会現象級のブームを生んだ作品の特徴って、「声に出して読みたい技名」とかが浸透のキーになった側面があると思うからです。牙突、ゴムゴムの○○、螺旋丸・千鳥、卍解、○○の呼吸。

 怪獣8号は今のところ(主人公たち防衛隊員が身につける強化外装の)「開放戦力」というワード以外特定の「技名(あるいは固有名詞の類)」は出てないんです。怪獣化した主人公のパンチも「めちゃくちゃ強いパンチ」でしかなくて、そこに技名とかがない。

 技名をつけろよォ!と言いたいわけじゃないです。むしろこの作品はそういう手法は使わずに硬派にバトルを描いた方がシリアスな臨場感が出て楽しめるので。

 ただ、前述の様々な作品たちの仲間入りをするのかというメタ視点での問いを立てた時には、ちょっと違うかもなぁと思う次第。これは完全に素人目線ですが。

 次代を担う王道漫画にはなる、というかもうなっている(と思う)。ただ社会現象を起こすかと言われれば少し懐疑的。

 でも間違いなく、2020年の少年漫画の中ではトップクラスにアツい作品です。まだまだ物語は序盤で、今後どうなるのかは分かりませんが、来年以降も読者をアツく楽しませてくれる王道漫画になると思っています。

#マンガ感想文

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集