【短編】サリエルの囁き【#06】
ーー美しい髪の毛と言われた時に思い浮かべるのは、風に舞う艶やかな姿であって、切り落とされた残骸のことではないだろう。
それはきっと、誰しもが無意識に、美しさとは生あるもののことで、死したものに抱くのは寂寞感や嫌悪感だということを知っているのだと思う。
だから僕は、君の艶やかな黒髪を見る度に、風にそよぐ春の青葉を思い浮かべるのだ。青々と茂った葉を風が撫ぜ、心地よい葉擦れの音色が来たる芽吹きの季節を告げるあの青々しさは、生の尊さと生命力を感じさせ、果てない高揚感を僕に齎