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マネキンの生活
本棚に隙間があると本を買い、隙間がないと本棚を買い、隙間があると本をと繰り返す内に寝床が無くなっていた。
思い切って仕事に関係しない本は全て売っぱらうことにした。少し寂しいのでオノナツメさんの漫画『not simple』だけ残して。
トランクをギュウギュウに、古書店街へ歩き出した。トランクの重さは思い出の重さ……そう言い聞かせながらも坂道の反復に辟易した。
目的地の道中に北欧調のライフスタイルショップがある。陳列窓にはマネキンが二人、ファッションと恋模様を謳歌している。入店したことは一度もないが、月毎に移ろうマネキンの生活を道すがら眺めるのが好きだった。店先に来た。閉店していた。
結論、踵を返した。
寝床は諦めて、もう読まないであろう思い出と同居することにした。帰りしな、気になっていたアイスクリーム工房に立ち寄る。閉店セール中、はじめてブランデーがけのアイスを食べた。大人の味だった。