短文「進退」

 初めがあるから終わりがある。
 勝手に定義した側の都合かもしれないが、きっと「ずっと」なんてものは無い。
 限られたものをどう使うか。駆使の度量が色の濃さを決める。
 僕は決められた行動範囲で生活している。よく我が物顔の出来る場を庭と表現するが、僕が庭に居る間はいくらでもその手入れを渋らないだろう。
 しかし庭に居る間だけだ。
 足取りの軽さをひけらかすのも、多くの人間と親睦を深めるのも、この檻の中だけなのだ。檻の中で胸を張って笑えるのも幸せ者か。
 それゆえ、たった一枚の四角い集積回路を忘れるだけで身動きが取れなくなる。後悔や焦燥に駆られる現代人は何より想像しやすいかと思う。
 大切なもの。それが手元に無い時にこそ、外へ足が向く。新たな世界へ踏み出す言い訳になる。

 家に置いたままにしておいたのは、数分前の自分が故意にしたことだったろうか。
 もう、思い出せない。

ありがとうございます。 作家になるための糧にさせていただきます。必ず大成してみせます。後悔はさせません。