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【書評】 『再石灰化と重症化予防を目指す 歯冠う蝕のマネジメント―検査に基づく診断と治療のフローチャート』

月刊『日本歯科評論』では,当社発刊本の書評を随時掲載しております.2024年4月号に掲載する「HYORON Book Review」を発刊に先がけて全文公開いたします.(編集部)

杉山精一/千葉県八千代市・杉山歯科医院

う蝕治療はカリエスマネジメントへ

う窩に対する治療をう蝕治療としていた時代は,すでに過去のものとなりつつあります.
う窩になる前のう蝕病変を早期に発見(Detection)して,病変の進行段階と活動性を見極めてカリエスリスク診査を行って治療していく,いわゆる「う蝕病変の早期発見・早期管理」により,健全歯質を保存していくことが可能な時代となりました.

しかしながら,このような新しいう蝕治療による臨床を実践するための書籍はほとんどありません.
そのような現状で,今回出版された『歯冠う蝕のマネジメント』は,「う蝕病変の早期発見・早期管理」を実践するために最適なガイドブックです.

新しいう蝕治療についての基礎知識

第Ⅰ章では,う窩になる前のう蝕病変,いわゆる初期う蝕のカリエスリスクのコントロールについてわかりやすく解説しています.世界中で使われているう蝕の教科書『Dental Caries』の編者であるNyvad先生考案のNyvadシステムは,病変の活動性を重視した考え方であり,臨床に即しています.
本書では,このNyvadシステムについて,論文紹介だけでなく,う蝕病変の活動性と重症度評価について,症例写真を提示して解説しており,大変わかりやすくなっています.
さらに,Nyvadシステムの意義,記録法,問題点についても書かれています.

筆者(杉山精一)は,う蝕病変の重症度についてICDASを使っていますが,活動性を重視したNyvad先生考案のシステムも理解して臨床を行っています.

フローチャートに基づく19の臨床例

この本のもっとも大きな特徴は,この第Ⅱ章です.
Nyvadシステムのフローチャートを基にして,実際に治療を行った19症例を解説しています.
「う蝕治療の早期発見・早期管理」の目標は,健全歯質の保存であり,そのための考えに基づいて,著者の診療室における歯科医師と歯科衛生士の協力関係で構築された臨床が提示されています.

従来のう窩についての治療に慣れてしまっている歯科医師,歯科衛生士には,ぜひこの章を1症例ごとにじっくりと考えて読んでいただきたいです.そうすることにより,新しいう蝕治療への理解が深まると思います.

Nyvad先生

2023年7月に筆者は5年ぶりにORCA(世界中のう蝕研究者が集まる学会)に参加して,Nyvad先生とお話しする機会がありました.
懇親会で,私が「新しいう蝕治療のキーパーソンは歯科衛生士ですよね」と話したら,「違うわ,歯科医師よ! 歯科医師が切削を決断するから」と言われました.
非切削う蝕治療は歯科衛生士の仕事,予防という考えではなく,歯科医師と歯科衛生士が共に患者に向きあい,同じ考えで治療を共同で行うことだと再認識しました.

このような臨床を診療室で実現していくためのガイドブックとして,この本が多くの歯科医師,歯科衛生士に読まれて理解を深めていただくことを期待しています.

関連リンク
『再石灰化と重症化予防を目指す 歯冠う蝕のマネジメント―検査に基づく診断と治療のフローチャート』(景山正登 著)

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