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欧文書体を知るために「小林 章さん」を知ろう

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


小林 章さんという方

小林 章氏
source: businesswire

なぜ、ある書体デザイナーを知ることが、ビジネスに使える知識になるのか。今回の場合は、小林章(こばやし あきら)さんという方は、多くの企業の欧文書体関係のプロジェクトに関わっているということが、ビジネスに使える知識だと謳う理由です。ソニーのオリジナル書体「SSL」の開発に関わり、JTのタバコ「マイルドセブン」が「メビウス」に代わるとき、そのロゴの制作を担当したのも小林章氏です。虎屋のリブランディング時に欧文ロゴの制作にも関わっています。つまり、多くの日本の企業が、海外に向けて書体を使用するときに、

「小林章さんに相談しよう」

となっているわけです。こんな方のこと、知らない手はないでしょう。欧文書体に関して、詳しい方は他にもいるはずなのですが、とびぬけて「欧文書体に詳しい日本人は?」となると「小林章さん」のなまえが出てくるわけです。今回は、そんな小林章氏にフォーカスし、彼がどんな書体をつくり、どんなプロジェクトに関わってきたのかをみていきましょう。

人物

アドリアン・フルティガー氏 (左)と小林章氏(右)
source: smashingmagazine.com

小林 章(こばやし あきら)は、 新潟県新潟市生まれ(1960年)の書体デザイナーです。ライノタイプ(現モノタイプ)のタイプディレクターとして、書体設計の指揮や、Optimaなど名作書体の改刻を手掛けています。複数の国際的なタイプフェイス・コンテストの審査員も務めています。写研(創業1926年、東京豊島区に本社がある書体の制作会社)出身。

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科を卒業後、写研で原字の設計を行う。1989年(29歳)、欧文書体を学ぶため退職して渡英。1年半にわたってカリグラファーや石工、工芸家などと交わってそのエッセンスを学ぶ。1990年(30歳)日本に帰国後、字游工房(書体デザイン会社)でヒラギノ明朝・ヒラギノ角ゴシックの制作に携わり、1993年(33歳)からタイプバンクで同社書体の欧文を手掛ける。1997年(37歳)にフリーランスの書体デザイナーとして独立。1998年(38歳)、Cliffordという書体で、U&lc Type Design Competitionで最優秀賞・本文部門1位を同時受賞し、2000年にはConradという書体がライノタイプ・ライブラリーによる第3回International Digital Type Design Contestで本文部門最優秀賞に選ばれるなど、欧米の大きなタイプデザインコンテストでいくつも賞を獲得し、世界的にも注目されるようになります。鈴木功と共に仕上げたAXIS(フォント)の完成後、ライノタイプ(現モノタイプ)に招かれてドイツに渡ります。ヘルマン・ツァップやアドリアン・フルティガーなど、書体デザインの巨匠と組んで数々の名作書体の改刻などを行いました。


関わったプロジェクト

虎屋のロゴ(2015)

画像引用:サン・アド


ソニーのSSTという独自書体のプロジェクト

sonyのオリジナル書体「SST」

こちらの記事で「SST」について詳しく書いています。

AlibabaグループのAlibaba Sans

中国のECサイトおよび検索サイトなども運命するアリババの持株会社。オリジナル書体が、Alibaba Sans

Alibaba Sans

たづがね角ゴシック

Neue Frutigerに合う書体として東京のデザインチームによってデザインされたモノタイプ初の日本語書体たづがね角ゴシックのディレクションを小林章氏が行っています。

たづがね角ゴシック
画像引用:monotype.com

ヒラギノ明朝の欧文設計

日本語書体「ヒラギノ明朝」の欧文設計を小林章氏が行っています。
画像引用:screen

AXIS(フォント)の欧文を設計

雑誌「AXIS」のために鈴木 功氏が制作された書体、AXISの欧文を小林章氏が設計。

Axis Font
source: type Project

サントリーのロゴ

サントリーのロゴの最終デザインのまとめについて書体デザイナーのマシュー・カーターさんと小林章氏が助言されています。

小林章氏デザインの書体

小林章氏デザインの書体をいくつかご紹介します。

Akko (2012)

Akko


Between (2016)


Clifford (2000)

Clifford


関連書籍

欧文書体の入門編。デザイナーではなくても楽しめる「フォントのふしぎ」が詰まった本です。


さらに欧文書体について知りたい方はこの二冊をおすすめします。こちらはデザイナー向きではありますが、そうではなくても読み物としても楽しめます。


まとめ

いかがでしょうか。ざっとみてみても、このかたが日本の欧文書体関係を一手に引き受けているのではないか?という印象を受けるほどではないでしょうか。まさに第一人者です。ただ、わたしは、ここで小林章さんすごいでしょ!ということを伝えたいというよりは、日本人の盲点、「欧文のルールや習慣」というものに少しずつ敏感になっていくと小林章氏が担っているような仕事が増えていくのではないかと思っています。企業側もデザイナーや制作会社側も。ちょっとずつ欧文書体とはなにか、ということをこちらの記事でも紹介していきたいと思います。

ところで、小林章さんは、TEDx Talksでもプレゼンテーションをされています。わたしは直接見に行っています。こちらで動画を観ることができます。ご本人は、プレゼンテーションが苦手だとおっしゃっていますが、いつもとてもわかり易いです。




参照







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