隈研吾とスコッチ“ダルモア”の金継ぎ彫刻
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
隈研吾とスコッチ“ダルモア”の金継ぎ彫刻
日本の建築家、隈研吾氏は、スコッチ・ウイスキーのダルモアの限定版「グローリーファイヤ(The glorifier)」の彫刻とボトルを制作しました。このボトルは、スコットランドのV&A Dundee美術館とのダルモアのコラボレーション。つまりV&A Dundee美術館を設計した隈研吾氏が、限定版ダルモア用のボトルと彫刻を制作し、2つの架け橋となっています。
この彫刻は、48枚のオーク材と鏡のように磨き上げられたスチールで構成されています。この限定版のダルモアは48年もののウィスキーが使われているので、1枚1枚がウィスキーが経た1年を象徴してます。
また木材とスチールを組み合わせていることから、蒸留に使うスチールが蒸留所をオーク材が樽と自然を象徴し、自然への配慮とサスティナビリティを重んじたダルモアの姿勢も表現しています。
金継ぎとは?
金継ぎ(きんつぎ)とは、割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分を漆(うるし)によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法です。
隈研吾氏は、良きものを長く使おうとする姿勢と技術、金属が有機を結びつける、などの意味を抽象し、彫刻のモチーフとしています。また木材を多用する隈研吾氏のスタイルとも合致。そもそも隈氏は、2つの日本での震災に対して、自然に勝とうする建築ではなく、自然とともにある建築を目指すようになりました。それが彼の木材の多用というスタイルの根底にあります。そんな隈氏が、自然と人の営みを寄り添うものとしようとするダルモアの姿勢をアートとして昇華したような作品がこちらの彫刻とボトルです。
V&A Dundee
V&A Dundeeは、2018年9月15日にオープンしたスコットランドのダンディーにあるデザインミュージアムです。V&A Dundeeはスコットランドで最初のデザインミュージアムで、ロンドン以外で最初のV&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート)美術館でもあります。隈研吾氏がスコットランド東部の断崖絶壁をモチーフに設計しました。隈氏初のイギリスの建物。
ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館
ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(V&A)は、応用美術、装飾美術、デザインに関する世界最大の博物館で、227万点を超える常設展示品を収蔵しています。1852年に設立され、ヴィクトリア女王とアルバート公から命名されました。
ダルモア蒸留所
ダルモア蒸留所は、スコットランドのアルネスにある蒸留所です。クロマーティ湾のほとりに位置し、名前の由来となった「大きな牧草地」であるブラックアイルが見渡せます。創業は1839年。
まとめ
建築家の仕事は、依頼されて制作するものやコンペに参加して制作するものであることが多く、それは自発性を強く含むアート(依頼されて制作しているものも多数ありますけど)に比べて、課題を解決しようとする「デザイン」に近いものがあります。そのうえで、建築および家具やこのような彫刻は、思想性も多く含んでいます。スコットランドの歴史、ダルモアの歴史、土地、何に向けての制作なのか……それらを見えるものにしていくのが彼らの真骨頂なわけですが、受け手もまた、そのプロセスを逆流していく(トレースしていく)ことを楽しむことができます。
デザインというのは、知れば知るほど、わたしたちに思いがけない解決方法を提供してくれるように私は思います。