欧文書体の種類を知ろう:セリフ編
火曜日なのでデザインの話。欧文書体、つまりアルファベットの文字ですが、いくつかのカテゴリーがあります。書体の数は無数にありますが、カテゴリーは、ざっくり言うと4つあります。これを知って何か良いことあるのかというとデザインをしたり、発注したりするための知識以上に世界が広がるのが楽しいというメリットがあります。
たとえば、最近、ネットフリックスで公開されたシャーリーズ・セロン主演の映画『オールド・ガード』。劇中、現れるタイトルはこんな感じです。
書体の知識があるとこのタイトルだけでも少し楽しくなるのですが、どうしてかというとこの書体は、Trajan という書体で、トラヤヌスの記念柱に刻まれている文字をベースにして作られた書体なんです。1989年にCarol Twomblyがアドビの仕事としてデザインしました。
映画のタイトルによく使われるので、ああ、またかと思うくらいなんですが、どれくらい映画のタイトルに使われているかという次の動画をちらっとみると体感できます。
このThe Old Guardという映画は、主人公たちがなぜか何世紀も生き続けて正義を叶えようとするというストーリーで、主人公はいったいいつからこの世に存在しているかわからないくらい生き続けているんです。数世紀以上に及ぶ時間を生き続けてきたガード(守護者)のタイトルに、紀元前の書体をベースにしたTrajanを使っているのを観ると「ああ、なるほどね!」とにやりとしてしまうというわけです。
こんなふうに何にどんな書体が使われているのかを理解できるとその意図が汲み取れて楽しくなるんです。
ということで今までいくつかの書体を紹介してきましたが、今回は書体の種類をご紹介したいと思います。それも超ざっくりと。超ざっくりとはいえ、知っておくと「なるほどね!」と思えることが急激に増えるのではないかと思います。
欧文の書体の種類は冒頭で触れたとおり4種類。その中にもいつくか分類があります。4つとは、セリフ、サンセリフ、スクリプト、ディスプレイ。
今回はセリフを紹介します。あとで他の種類と統合して1つの記事にしようかと思っています。
1.セリフ
Serif。日本語だと「セリフ体」と呼ぶことが多いです。日本語の「明朝体」のように文字の端にちょろっとした飾りがついている書体です。ローマン体とも言います。上の書体はAdobe Garamondという書体です。古代ローマでこの様式が完成したのでローマン体と呼ばれています。
「セリフ」はこのはじっこのちょろっとした部分の名前なんです。このセリフ/ローマン体は、ざっくり言って5種類さらにあります。
1-1.オールドスタイル
これはCentaurという書体です。古くからある書体でCentaurは、ルネッサンス時代のニコラス・ジェンソンの書体をベースにした書体です。特徴は、
1. Oの中の空間が対角線上になっている
2. ブラケット(セリフのあたりが三角形になっている)
3. 文字の線のコントラストが弱い。
4. dの上部などのくさびの形
5. dの上部などの斜めになったセリフ
1-2.トランジッショナル
トランジッショナル(transitional)とは過渡期という意味で、オールドからモダンになる途中という意味。これはPerpetuaという書体です。特徴は、
1. 垂直的なストローク(なんか縦にまっすぐよねーといこと)
2.垂直的なストレス(Oのうちがわの円が垂直的な形)
3.オールルドスタイルより文字の線のコントラストが強い。
4. セリフはブラケット(三角)
1-3.モダン
印刷技術が高くなってきて細い線も表現できるようになってきて生まれたのがモダン。この書体はLinotype Didot™。ファッション誌のロゴによく使われています。モダンの特徴は、
1. ブラケットがほとんどない(セリフのあたり直角やないかい)
2. oの中は垂直
3. すごいコントラスト
4.端っこにボールみたいなストロークがある
新しくなったZARAのロゴもこのモダンを使っています。
ファストファッションからラグジュアリーファッションよりへ、とは言え既存のラグジュアリーファッションではなくファストに時代に即していく機敏さもあるぞ、というのがこのロゴが発信しているメッセージ(だと思う)。
前のロゴもモダン的なセリフの細さがあったんですが、もうちょっととっつきやすさがありました。
Quoted from POP BUZZ “Zara just revealed its new logo and everyone is roasting it”
1-4.スラブセリフ
この書体はRockwell。セリフをちょーふとくしてみっか!という試みで生まれた書体の種類です。特徴は
1.ぶっといセリフ
2.ブラケットがほぼない
3.コントラストがほぼない
マリメッコのロゴもこのスラブセリフという種類です。
By Source (WP:NFCC#4), Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=59826641
1-5. グリフィック
Glyphic。彫像とか縦溝という意味のGlyphから来ていて、彫った感じの書体です。この書体はAlbertus。特徴は
1. ペンを使って描いたっていうよりは碑文に似ている
2.コトンラスト弱め
3.セリフが短めの三角
以上がセリフの種類でした。書体っておもしろいなー、もっと知りたいなーというかたにおすすめなのは小林章さんの欧文書体。
これも良いです。